#37 戦いの準備をする
魔石を手に入れるためにアトゥムス、ライナと一緒に魔物と戦うことになったが、ハヤトがそのまま一緒に付いていくと危険だということで、準備をすることになった。
ハヤトは『二人で取りに行ってくれたら良いのでは?』と思うが、自分で作ると言った手前、断ることが出来なかった。
魔物の解体作業以外では役に立てるどころか、足を引っ張る気しかしない。
■■■
アトゥムスは商会でハヤトの運動能力が酷いということは聞いていたみたいだが、まずはどれぐらいハヤトが動けるのか実際にライナと模擬戦をすることになったのだが……。
「はぁはぁもう無理」
「何を言ってるんですか、まだ始めて30分も経っていないですよ!」
「そんな体育会系の考え方を押し付けないでよ」
「たいいく? 良くわかりませんがほら次いきますよ」
「ちょっ、まっ!」
まだ休んでいたいのに、模擬刀で斬りかかられるので慌てて逃げる。
「アトゥムスさん、止めてください!」
「うーん、まぁ確かにこれだと厳しいね。実力云々とか以前の問題だし。ライナはどう思う?」
アトゥムスに話しかけられてようやくライナが攻撃を止めてくれる。
「そうですね、この人が一人でダンジョンに入ったらと5分と持たないでしょうね……」
「だよな……分かった、ちょっと防具を取ってくるからもう少し続けていてくれ」
「はい」
「はい……じゃない! ちょまっ、ぎゃー!」
ということで暫く聖騎士団の訓練場にハヤトの悲鳴が響き続けた。
■■■
「お待たせ……って大丈夫ですかい?」
ハヤトは仰向けになって倒れている。
「彼はもう……」
「そうか」
「っておい! 勝手に殺すなよ」
「まぁまぁ、冗談が通じるなら大丈夫だね。それで実際はどうなんだい?」
「うーん、少しだけ受身は上手くなってきたかな。でもまだ心許ないよ」
ライナが絞り出すように評してくれる。
「それはどうも、ってあれだけボコボコにされたら嫌でも回避しようとするわ!」
「まぁ足りない部分は防具で防ぐってことで、ハヤトはこれを着てくれるかな?」
アトゥムスがどこからか持ってきた革製の防具と盾を手渡される。
「これって結構高いのではないですか? 無事に返せる自信はないんですけど……」
少なくとも傷だらけにする自信はある。
「ああ、いいよいいよ。そんなに高いものではないし、アル君が快く寄付してくれたからね」
「またアルトリウスさんから貰ってきたんですか!? 可哀想に……」
「いいのいいの、彼には必要ないものなのだから。ほら遠慮せずに着て着て」
「はあ」
アルトリウスが誰だか分からないが、感謝しつつ身に纏う。非常に軽くて良いものだと分かるが、中古品だというのに傷が一つもついていない。
「これキレイ過ぎないですか? まだ使ってないのでは……」
「いやいや、ちゃんとアル君がいつも使ってた奴だよ。その辺の魔物の攻撃をくらうような実力じゃないのに妙に防具を集める慎重な奴だからね。だから一つぐらいどうってこと無いから気にせず使ってくれていいんだよ」
「そうなんですか……でも無事に帰ってこれた暁にはその人を紹介してください。きちんとお礼を言いたいので」
「分かった、ちゃんと剣を作れたら紹介してあげるよ。あとはそれを着た状態できちんと動けるようにならないとね」
「えっ! まだやるんですか!?」
「もちろんだとも。出来れば自分の身は自分で守れるようになって欲しいからねって逃げるなよ……ライナよろしく頼むよ」
また特訓という名の地獄を味わいたくないので逃げだすハヤト。しかし当然逃げ切れる訳もなく攻撃を受ける。とっさに盾を出してキレイに攻撃を受け止める。
だがそれでライナの火をつけてしまったのか、先程までよりも容赦ない攻撃が放たれるようになってしまった。
こうしてひたすらに受身の練習をして、ライナからの攻撃を完全に防ぎきれるようになるまでひたすらに特訓は続いたのであった。
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