07.混乱と暴動Ⅲ
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【日本国/栃木県宇都宮市街地/列島転移後8日目_10:00】
市街地の真ん中を、
高機動車は
この二つの車両には相馬率いる小隊のメンバーが分乗しており、相馬は先頭を疾走する高機動車に乗り込んでいた。高機動車を運転するのは城ケ崎三曹である。
「まさか、治安出動とは……」
「あぁ、政府も思い切ったことをしたもんだ」
「ま、まぁ、異世界の怪物が攻めてきたとか、霊的な何かと
「自分が死ぬ可能性が高い任務か、それとも人を殺してしまう可能性がある任務か……どっちがましなんだろうな……」
相馬はそう言って車窓から街を眺める。この辺りは昨日まで暴徒に占領されていたらしく、一般人の姿はない。破壊された車と、ところどころで火が
「それなんすよね……人を殺めかねない任務ではあるわけですし」
「実際、それだけの覚悟のあるやつはどんくらいいんのかね、俺も含めて。命令であれば、愛する人や国を守るためであれば覚悟はできてる……と自分では思っているがいざとなったら分からんよ」
相馬と城ケ崎は自身らの言葉に、複雑な気持ちを抱く。そして次の言葉が出てこなかった。
シンとなった車内。城ケ崎は気分を変えようとあえて場違いな話題を振る。
「……て、てか、この世界って魔法とかあるんですかね?」
相馬も城ケ崎の意図に気づき、城ケ崎の話題に食いつく。
「魔法?あー、どうだかな」
「俺、異世界転移とかあこがれてたんですよ!魔法使いとかエルフとか会えたら最高っすよね!」
「案外、ホラー的な異世界だとか、タコ型宇宙人が支配する惑星だったりしてな」
相馬はそう言って意地の悪い笑みを浮かべ、城ケ崎を振り返る。そう言う相馬も異世界転移だとか転生ものの小説は好んで読んでいたし、城ケ崎とは趣味があっていた。
「それは勘弁してほしいです……」
しばらく走らせると、自衛隊車両と警察車両、それに消防車や救急車が集まる場所に出た。すぐ近くで雄たけびのような声が響いているのが分かる。
「城ケ崎!」
「はい」
真剣な顔つきに変わった相馬に、城ケ崎も気の緩んだ口調を改める。相馬は既に一指揮官の顔付きになっていた。素早く後部座席に指示を飛ばすと、隊員の一人が通信機のマイクに手を伸ばし、後続のトラックにも指示を伝達する。
「全員降車!」
相馬は号令をかけると、89式5.56mm小銃を手に高機動車から飛び降りた。腰の9mm拳銃を触り、その存在を確認する。
89式5.56mm小銃は64式7.62mm小銃の後継として開発された陸自の現主力小銃であり、9mm拳銃は新中央工業がドイツ製拳銃をライセンス生産した自動式拳銃である。
相馬が飛び降りるとほぼ同時に、相馬に続くように前後の車両から小隊の隊員総勢32名が飛び降りる。
「相馬小隊長!全員、準備が整いました!」
相馬は茂木に頷いて見せると、視線を小隊全員に回した。
「分かっているとは思うが、武器の使用は最小限に限られる。特に無駄に人を殺すようなことはするなよ」
隊員は相馬の声に「「「はっ!」」」と返答する。かくして、相馬小隊は戦後史上初の〝治安出動〟の任に就いたのである。
♢
【日本国/列島転移後11日目】
自衛隊の投入から僅か3日。全国に広がった暴動は、早くも沈静化へと向かっていた。
暴徒からは103名の死亡者が出たものの、大概の者は拘束された。
全国規模の暴動、実に数十万人が参加したと言われるこの大暴動で、たったこれだけの死者しか出さなかったのは、海外では例がないことだろう。
それは日本の警察や自衛隊が人命を大切にする組織であるからだ。そしてそれは警察や自衛隊の力量を示す事例でもあった。在日外国人の多くは彼らの姿勢に感銘を受けたとインタビューで答えている。
現に、相馬率いる小隊は、暴徒にも小隊にも一人の死者も出さなかった。相馬を含め、多くの自衛官が自衛隊の役回りは主に威圧と警戒であると理解していた。彼らは治安回復のための警察活動のサポートに徹したのである。
しかし残念ながら、一部市民団体や野党、マスメディアからは政府や自衛隊、警察の行動への非難の声が上がったのも事実である。
〝自衛隊が初めて人を殺した!〟というマスメディア。〝政府も警察も自衛隊もけしからん!〟と声高らかに責める者。一方、それとは対照的に、“よくやった〟〝一般市民を暴徒から守ってくれた!〟と褒め称える者。
平和ボケした日本人にとってこの
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