第27話 ニート、我慢する 3

ポン、と一つお腹を叩き。


「人間はね、君。多少、食べずともね。このお腹のエネルギーがある限りは大丈夫らしいのだよ」


と、自慢げに話したかと思うと、も一つ、ポンとぷよぷよ(無論、腹を揶揄してこのように書いている)を叩いた。


どうやら、ニートの説明によると、

食べなくとも、今まで食べた分の脂肪を使うことで、飢えを免れる。

そういったことらしい。


しかし、我輩は見逃さないし聞き逃さない。

その言外に、あわよくば痩せたい、という気持ちがあるということを。


「確かに、今まで僕は、流れに身を任せ、川下に停滞していた。しかし、あの事件※をきっかけに少しばかり痩せよう。痩せようという決心がついたのだよ」


読者ネコ諸君ならばもうお分かりであるかと思うが、

あの事件※とは、床下突貫事件のことである。

付け足すと、あの事件をきっかけとして、ニート社会復帰プログラムの第一段階

一人暮らしの刑が執り行われることになった。


「でもね、君。ネコという生き物もそうであるように、同じ結果であるならば、楽な道でたどり着きたい。そう思うだろう?」


今日のニートはやけに饒舌である。

空腹を紛らわすために、必死に口を動かしているのだろう。

口周りにも余分な自堕落ちゃん(脂肪のことである)がこびりついているのだから、

これも彼にとっては良いことだと思おう。


しかし、ネコのことを知ったような口ぶりは聞き逃せない。

何が、楽な道でたどり着きたい、か。

もともと、選択肢などないのだ。ネコにとっては。


やりたいかやりたくないか。

格好良くいうならば、


トュービー、オア、ニャッ、トュビー。である。


そして、やりたいと思うことが、

きまってカロリー消費の少ないことなのだ。


「そうしたら、断食ダイエットというものに巡り合った。日頃の行いが良いからだろうか、素晴らしい巡り合わせだと思わないか? なあ?」


なるほど。

日頃の行い云々の話は抜きにして、一番楽そうな「食べない」ダイエットを

ちんたらにゃんたら実践してみよう。というのが今日の趣向であるらしい。


そうであるならば、

もう少しゆっくりとニートを観察した方が良いだろう。と

我輩は結論を簡潔にして明瞭につけた。


つまり、どう云うことかと云うと、


”にゃああ”


我輩は、さも興味がないと云う風に、大きくあくびをこいて

窓際、日光のよく当たる位置に行き、体を丸めると、

うすーく目を閉じるのである。


さて、これからゆっくりとニートを観察してやろうではないか。と。


つゞく


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