第20話 ニート、勉強する 5

無様にも、ニートの膝から下は、

地下に潜ってしまった。


そして、面白いことに、

床に食われた形になった右足が、

平衡感覚を奪ったのであろう。


ニートは、そのままフラフラとよろけ…


よろけたままでは、収まりが悪い。

収まりよくするには、もう一歩を踏み出さないといけない。

と言う塩梅で、


よろけるのを防ぐため、左足を前方に差し出して、


ズボッ!


と景気良く、二個目の穴を開けたのである。

端から見ると、ニートの姿はまるで

浅い落とし穴に捕まった間抜けなクマである。


例えその穴が浅くとも、大股で歩いていたツケが回り、

自力で脱出することは到底簡単ではないはずだ。


これにゃらば、運動不測で動きが鈍い我輩であっても、

逃げるのは容易であろう。


”にゃぁ”


我輩は、笑いを嚙み殺し、

一段一段ゆっくりと登り、

一歩一歩を踏みしめながら、

二階の中央の部屋でお昼寝をすることを決めたのである。


「おい! 待ちたまえ! おい! …分かった、話をしよう。話をしよう! 聞いているのか!」


後ろから、なにやら騒ぎ立てるものがいる気配がするが、

そんなことはどうでもいいのである。


ゆっくり寝たい気分なのだ。

我輩は、気ままに吹く春風のように、

二階へと向かった。




数時間後、

家人の喧騒が轟くことになるとは、

この時の我輩には分かるはずもなかったのだ。


なんせ、とても眠たかったのだから。


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