第19話 ニート、勉強する 4
起死回生の一手、
それは
外に逃げ出すことである。
玄関の扉は重く、
ネコの力では到底かないっこないが、
二階ならばどうだろうか?
ベランダへと繋がる窓は、
時々、換気をするためだろうか
ほんの少しばかり隙間がこんにちはしている時がある。
そこに、我輩のキュートな顔を潜り込ませ、
首を回転させ、錐で板に穴を開ける要領で、ギリギリとこじ開けるのだ。
首まで通過してしまえば、あとはたやすい。
胴体をねじ込ませ、尻尾を忘れないようにして、脱出完了だ。
あとは、屋根づたいに逃げてしまえば、こちらの勝利にゃのである。
完璧な起死回生の一手を思いつき、
我輩は、軽快な足取りで階段まで向かう。
我が家の階段。
その一段、一段の高さは、自分の頭よりも少し高いのであるが、
普段の我輩はにゃんにゃく、テンポよく登ってしまうのだ。
故に今回も、問題な−。
”にゃ…!?”
そり立つ壁であった。
普段の運動不足と、極度の疲労。
足腰が笑い始めたと言っても過言ではない。
そのだらしにゃい体のせいか、何度トライしても、
登れにゃい。
しかも、
「チェック、メイト。」
後ろには、鬼がやってきてしまわれた。
どうにかして登ってやろうと、
我輩は這々の体で、
上半身をまず乗っけて、その後、バタ足するようにし、
なんとか一段登り切った。
もうココまで来ては、見た目なぞに構っていられない。
地を這い、泥水をすすってでも、捕まってたまるか!
という思いで、我輩は次の段に挑戦するのだ。
上半身を乗っけて、バタ足をし、下半身を乗っける。
これを繰り返すのだ。
…これを繰り返すのだ。
にゃんとも無様な姿であろうか。
我輩はこの時にきっちり誓ったのだ。
ダイエット、しようと。
さあ、読者ネコ諸君は、きっと、
我輩が捕まってしまったと思っているのであろう。
しかし、しかし、事実は小説よりも奇なりとはニンゲンの言葉であるが、
本当に不思議なことが起こったのである。
鬼(20代・男性・無職)は、我輩の必死の体を眺めてから、
おそらく威圧感を高める意味も込めて、
右足を大きく揚げ、床を踏みならそうとした。
さて、余談ではあるが、
我が家は、前にも書いたように、木造築30年。
階段の降りる一番下の材木は、もう何年も、
日夜、ニンゲン達の体重を支えてき、
かなりの疲労を抱えていた。疲労困ぱいである。
我輩はネコであるから、その体重を以ってしても、
そこにスタンっとジャンプ着地をして、
特に、にゃんの問題もないのだが、
我輩はネコであるから、その耳を以ってして、
ニンゲン達が二階から降りてくる度に、
ギシギシという不穏な音を聞いていたのだ。
つまり、ここまでで、何を言いたいかというと、
ズボッ!
「なッ!?」
ニートは、床を、思い切り、踏み抜いたということである。
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