第25話 ニート、我慢する

我輩はネコであり、こいつはニートである。


ネコは、気ままに吹く風のように、好き勝手生きている。

世間の評判など気にも止めにゃい。

笑いたい時に笑い。眠たい時にあくびをする生き物である。


どうやら、ニンゲンは、ネコの生き方を羨ましがっているようだ。

時々、濡縁で気持ちよく伸びをしていたら、

スーツ姿の会社員風ニンゲンが、我輩のことを恨めしそうに見つめていた。


しかし、一つ思うところがある。

ニンゲン達にも、ネコのような生き方をしている者がいるではないか、と。


そう、賢明な読者ネコ諸君にはもうお気づきかと思うが、

ニートのことである。


ニートも、気ままに転がる丸太のように、好き勝手に生きている。

世間の評判に嚙みつき、火の粉が飛ばないところから、批判だけをしている。

笑いたい時に笑っていたら、家族に怒られる。

眠たい時に寝ていたら、ますます肥えてきた。


ニンゲンたちは日々、我慢をしているが。

ニートは、我慢などしないのではないか。

我輩の心に一つぽとりと、研究テーマが生まれたのだ。


注意深くニートを見てみようではないか。


今日も昼過ぎくらいに起きてきたかと思ったら、

台所に向かわずに、テレビの前にどかっと座ってしまった。


これは、少しばかりおかしい。


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