第26話 ニート、我慢する 2
いつもは戸棚をゴソゴソするはずのニート、
意を決したようにして、テレビの前にドカリと腰を下ろして、
テレビのチャンネルを入れるのである。
昼過ぎくらいのテレビは、どこも同じニュースを流しているらしく、
こたつに肘を乗せ、頬杖をしながら何度かチャンネルを変える。
変えども、変えども、チャンネルは決まらず。
結局は、通販チャンネルになってしまったようだ。
我輩は、この通販チャンネルが嫌いではない。
ニンゲンの服など興味はにゃいが、
時々ある料理の回は、興味をひくのである。
あのテキパキとした手際は、目をみはるものがあるのだ。
最近、妹が台所に立つ様子をよく見るのであるが、
過去2回ほどボヤ騒ぎになったことは、書かない方がよいだろう。
無論、ニートは料理の「り」の字も知らない。
ちなみに、もっと好きなのは、
夕方近くにやる地方の漁の取材ニュースだ。
季節ごとに旬の魚を食す…ことは難しくとも、
想像することくらいは無聊の慰めになるのである。
(そろそろ猫缶は飽きてきた。)
さて、通販チャンネルに変えたのはいいが、
ニートはテレビなどに気を向けず、
その場にゴロンと横になりおった。
そして、一つ。
ぐ〜。
という音が、たゆんたゆんの腹から飛んできたのだ。
どうやらニートは腹が減っているらしい。
しかし、不思議である。
いつもならば、戸棚からお菓子を引っ張ってきて
ムシャムシャと食べているではないか。
なぜなのかしらん、と我輩が小首を傾げると。
ニートは、首だけを器用に回して、我輩と目線を合わせてきた。
「君、不思議に思っているな。この僕が、思うままにお菓子を食べないことを」
付き合いが長くなってきたせいか、
時々、以心伝心というのであろうか、言葉を介さずとも
コミュニケーションが出来てしまうことがある今日この頃。
もしかしたら、読者ネコ諸君の中にも、
ニンゲンたちと会話のようなことをしている者がいるのではなかろうか?
とは言っても、ニンゲンの愚痴はネコくらいしか食べないことを
ここに明記しておこう。
そろそろ干支に猫を入れてもよい頃合いではなかろうか?
「ふふ。お腹が空いたら食べるというのは、もう古いのだ」
何をいうかと思ったら、おそらく、深夜のラジオか何かで得た知識を
話す相手もいないから、我輩に押し売りしようという魂胆か。
ちなみに、先日の家族法廷を終え、
ニートは残りひと月を待たずして、一人暮らしの刑に処されることが決まった。
そろそろ独り立ちをしなければならぬのに、
胡散臭い話を我輩相手にしていて良いのだろうか、と
この賢明な筆者たる猫は、嘆息するのであるが。
ニートは嬉々として、話を続けてくる。
寝ながら。
甚だ、不敬だ。
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