第28話 ニート、我慢する 4
1時間が経った。
ニートは、空腹に耐える最終手段として昼寝をすることにしたようだ。
畳の上に仰向けになり、お腹の上に両手をちょこんと乗せ、気持ちよくいびきをかいている。
まるで、トトロとか云う森の精霊のようだ。
見てくれは月とすっぽんであるが。
我輩は、無論、ネコバスに非常に興味がある。
人間たちと共存し、仕事をしている彼には頭が下がる思いだ。
まさか、人を乗せるだけでなく、空まで飛んでしまうなんて。
我輩も、一度は空を飛んでみたいと思わにゃいでもにゃい。
話が脱線してしまった。
と言っても、脱線を戻したところで、
悲しいことに、書くことが本当にないのだ。
どうせなら、このまま脱線して海の見える美しい駅にまで行ってしまおうかと
思ったけれども、思い直して、再度、ニートとの対話に注力することにした。
(もちろん、ニートは寝ているのだから、対話と云うよりも観察である)
食べなければ痩せられると云う安直な思考回路の元、
ニートは何も食べないと決心したわけだが、
体はそんな急な決定を受け付けるわけもなく、
グォ〜、グォ〜
と云う、地響きにも似た腹の鼓動を轟かせ、
「何かを食わせろ」運動を胃袋中心に決行してきた。
しかし、一度決定したことをすぐに覆すようではニートの名が廃ると、
テレビを見ながら、空腹に耐えていたわけだが。
頑強な胃袋の抗議に何度も心が揺るいだニートは、
(実際、冷蔵庫の前に3回。戸棚の前に2回ほど向かった。しかし、行くたびに優しい我輩が”ニャア”と止めてやったのである)
冒頭にも書いたように、最終手段として
寝ることにしたのだ。
時刻は、そろそろお日様が傾き出す頃だろう。
つまり、傾くと云うことは、家人たちが帰ってくる頃と云うことだ。
目の前には、ぷくぷくの腹の、そのおへそまでを出して、
気持ちよくいびきをかいているニート。
そして、
「ただいま〜」
玄関の扉が開き、妹が学校から帰ってきた。
なるほど、次の展開が楽しみににゃってきた。
続く
我輩はネコであり、こいつはニートである。 鎌田玄 @kenken-smile
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