第4話 ニート、せんべいを奪われる 4

ヘソの真下に、真っ赤な一閃。


「〜〜〜ッ!!!」


本当に痛い時、人は言葉を発することすらできないということも

我輩は学ぶことができたのである。重畳、重畳。


アザラシのように伸びきっていたニートは、

今では、カブトムシの幼虫のように、

だらしないお餅を中心にして丸まってしまった。


我輩は、そのプニプニの上に腰をおろし、

悠々とあたりを見回す。


読者猫諸君よ、常に、爪は研いでくにゃ。

自然界は甘くないのにゃ。


と、そこにお目当のせんべいを見つける。


よもや、我輩が袋ごと持って行くような、

さもしい猫だと考えてはいるまいか。


絶賛唸り声をあげているニートを他所に、

我輩は、一つだけ拝借するのである。(もちろん、返さないが)


全部持っていこうなど、優雅さに欠けるではないか。


”ニャー! ニャー! ニャー!”


鬨の声を上げ、

一枚、失敬、失敬。


そして、我輩は、誰もいない台所の、

日光が差し込む暖かい窓際へ行き、


思い切りよくせんべいを味わうのである。


ガギッ。


”にゃがッ!?”


これ以上、記述するのはよそうか考えたが、

弘法にも筆の誤り、と言うから、書いておこうと思う。


ようは、硬せんべいであった。

そして、普段、柔らかいものを食す我輩の牙は、

厳しい自然界に適応してなかったのだ。


「〜〜〜〜ッ!?」

”〜〜〜〜ッ!!!”


凄惨なある昼過ぎであった。


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