第5話 ニート、慰められる 1

我輩はネコであり、こいつはニートである。


ニートは基本的に家人がいると、その姿を表さない。

木造築30年の一軒家、その二階の一番奥、四畳半の薄暗い部屋、

そこがニートの巣なのである。


当初は、天の岩戸もかくや、と言うほどその引き戸は閉ざされていたわけだが。

理解のある家人たちが、その戸の前に、食事を置かなかったため、

結局、兵糧攻めに屈して、外に出てきたわけだ。


日本書紀では、太陽があたりを照らし、人々が喜んだわけであるが、

ニートが出てきても、


「兄貴、くっさ」


と蔑まれただけであった。


その時の、ニートの悲しそうな、寂しそうな、空腹に耐え難いような、そんな表情は忘れられにゃい。


つまり、今までのことを要約すると、

ニートは家人がいない時、もしくは夕飯時のみ、

そのありがたくもない姿を表すことになる。


悲しいかな、我輩の生活時間と重なってしまっており、

読者猫諸君の期待する、我輩とニートの戦いの日々が

起きるわけであるが。


皆も、自身を振り返ってもらいたい、

猫ほど、この地球上で気まぐれな生き物はいにゃいのだ。


言い換えると、時には、我輩も、

ニートのことを慰めてやることあると言うわけである。


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