第2話 ニート、せんべいを奪われる 2
これほどまでにだらしない涅槃の姿は見たくなかった。
もちろん、ニートの事である。
右手を器用に枕にし、ボサボサの頭を受け止める。
畳の上を、肘から足の先までが汚いカーブで接着し、
しかもそれだけではラインが収まらず、
重力に負けたお腹周りの自堕落ちゃんが、
それこそ、チーズインハンバーグの、トロトロチーズのように
畳の上に流れ出ていた。
我輩は、こういう時でさえ、にゃんみそをフル回転し
プロファイリングをしているというのに、
このニートは何も考えていないのか、
テレビのリモコンを
ポチり
と押して、お昼のワイドショーをつける。
やはり、日テレだ。何かと文句をいう割に、
いつも見ている。
そして、空いている左手で、
せんべいの袋をまさぐり、
がさっがさっ
まんまるを掴み、そして
ばきっばきっ
食べかすをあたりに撒き散らしながら、咀嚼するのである。
ここまでは、こいつがよく行う、プログラムコンポーネンツと言えよう。
そして、たいていの良識あるネコ諸君であれば、
これは僥倖というべきものだ。
あの、鼻の奥についたら最後、脳にまで一直線で突き刺さる
香ばしくて、懐かしい、焦げた醤油の甘美なかほり。
甘じょっぱい誘惑に、あえて自分を投げ出すのも、また
ネコ生の一興である。
我輩は、つまり、要約すると、
ニートの顔近所に転がる、茶色の宝石を、
救い出そうとしたわけだ。
だだだっ。
刹那、普段はナマケモノの亜種と噂が立つほど、
動きに機敏さが見られない、
ハキハキしない、あのニートが、
電車の中で、空席を見つけたおばちゃんのごとく、
ササッ
と、茶色の宝石たちを、左手のふくふくとした駄肉に
吸収させ、畳の上から摘出し始めたのだ。
にゃ”!?
我輩は、激怒したにゃ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます