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「先生?ココアちょうだい」
あの日以来行っていなかった保健室に入る。
「輝流!」
「げっ」
こうも偶然があるのだろうか…
再び悠と会う。
「なにが、げっ。だよ?
連絡なんでくれなかったんだ?」
「連絡?……あっ!」
思い出してスカートのポケットを探すと、
くしゃくしゃになったレシートが出てきた。
「ゴミみてぇになってんじゃん」
「だって、用なかったし」
そのまま机の横にあるゴミ箱に捨てた。
「俺が用があるんだよ。
って、おい!捨てんな!」
「はい、ココア」
優しい声で、いつも通りのココア。
「ありがと」
カップを持ったまま、いつもの場所に向かう。
「暖かくなってきたね」
窓を開けベッドに座る。
「貸せ」
私の隣に来てドカッとベッドに座り手を出す悠。
「なにを?」
「携帯」
「なんで?」
「オレの番号入れるんだよ」
「やだよ」
「いいから、貸せ」
「林田、教えてあげてもいいんじゃない?
悠は、悪用するようなやつじゃないし、いざという時は役に立つおじさんだと思うよ」
先生が窓の冊子にもたれながら言った。
「……役に立ってよね、おじさん」
しぶしぶ差し出した携帯に、悠が自分の番号を入れる。
「なぁ、輝流」
目線は液晶に向けたまま、悠が声をかけた。
「…今度はなに?」
「そんなに邪険にするなよ」
ちらっと私の方を見て、再び液晶へと視線を落とす。
「オレの事、マジで思い出せねぇの?」
「覚えてない」
「ちょっとは考えてから言えよ」
ほらよ。と携帯を返された。
「悠で、入れてるからなんかあったら絶対、連絡しろ」
ブーと、携帯のバイブが鳴った。
〝メッセージを受信しました〟
メッセージを開いてみると、
タバコを吸ったやる気のないクマのスタンプが、悠から送られていた。
「なにもなくても、今日あった事とかでもいいから、送っておいで」
ポンポンっと、頭を叩いて、
「俺にココアちょうだい」
先生に言った。
頭に置かれた手は、私の髪を絡めて降りた。
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