2
長く伸びた髪が、春のまだ少し冷たい風になびく。
高校2年生になったばかりの私、林田 輝流(ひかる)は、学校の海の見える塀の上にいた。
すこし離れた体育館からは、始業式での校長の話す声が聞こえている。
「輝流!」
振り返ると、塀の下に幼馴染の今西 花純(かすみ)が、少し怒ったような顔をして立っていた。
「ん?どしたの?」
不安定な塀の上に立ち、更に花純を見下ろす。
「どしたの?じゃないよ!陸人が探してたよ」
もぉ!なんで私が…
なんて小言を言いながら、携帯を耳に当てどこかに電話をかける。
「あっ、陸人。輝流いたよ…うん、わかった」
陸人との電話を切り、私へと手を差し出す。
「陸人、来るってさ」
その手を取り、ぐっと上に引き上げと、
私よりも少し小さい花純は軽く、猫のように塀に上がった。
「来るの?めんどくさ…」
再び、塀の上に座る私の横を、ほんのり甘い香りが撫でる。
トンっと左腕に軽くあたり、花純は隣に座り腕を絡める。
「輝流を探すのを手伝わされた私の方が、めんどくさいよ」
ふふっと、笑って大きなまん丸の目で、私に微笑む彼女は、とても可愛い。
「ごめんね?」
右手で花純の頭を撫でると、柔らかい猫っ毛が指に絡む。
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