10
ふぅっと、ため息をついてソファにもたれる兄が、さらに疲れたように見える。
「大丈夫?」
コーヒーを新しく入れ直し、兄の前に置く。
「変なとこ見せちまったな」
「私のせいで、ごめんね」
横にちょこんと座る。
「もう、引き際だと思ってた頃だから、ちょうど良かったよ」
「これで私が独り占めできるね」
兄の肩に頭を預け、ゆっくりと目を閉じる。
「そんなんじゃ、お前も彼氏に振られるぞ」
見えてる。
と言って、鎖骨を指で叩く。
「彼氏じゃないよ」
この言葉に兄の体が動いた。
「そっちの方が、心配だよ!
危ない目にあってないか!?」
向かい合った兄の目が本気すぎて、
「危ない目って…大丈夫だよ」
笑って誤魔化した。
「どんなやつだ?今度連れて来いよ!」
「パパか!」
親父くさいセリフに、思わず突っ込んでしまった。
「俺は本気だからな!今度絶対連れて来い!」
「えー、めんどくさいよ」
「ダメだ!ちゃんと、仕事早く終わらせるから、金曜にでも連れておいで。
反対するわけじゃないよ。
ただ、話してみたいだけ」
…それが困るんだよな…
誰を連れていけばいいのやら…
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