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「先生、起こしてくれてありがと」
何も無かったかのように、カーテンから出ると
「おはよう」
さっきの声の主、ゆうがまだそこにいた。
真っ黒な髪を無造作に伸ばし、長い髪のあいだから見える目は、着ている服装とともにやる気を感じさせなかった。
少し伸びたヒゲが、先生より少し年上に見せた。
「どうも」
目が合い、ニコリと笑って挨拶し、その人の横を通ってドアを目指した。
「輝流…か?」
名前を呼ばれて、振り返る。
「ん?知り合い?」
首を傾げる。
年上で私の名前を知っている人はいないはず…
「覚えてない、ゆう。だ。
三神 悠(ゆう)」
長い髪をかきあげて、露わになった顔は、
どこか懐かしくて、悲しくなった。
「……覚えてない」
カタンと悠が立ち上がり私の前までゆっくりと歩いてくる。
陸人よりもさらに高い悠の身長に視線があがる。
「おっきく…綺麗になったな」
包み込まれるように抱き込まれた悠から、
だばこの香りと石鹸の香りがした。
「…ちょっと!」
押し退けるも力を込められて逃げ出せない。
「もう、怖い思いはしてないか?」
ぐっと込められた力は緩まることもなく、
悠の心音が聞こえそうだ。
「……あの…」
「輝流。これ、俺の連絡先。
なんかあったら必ず連絡してこい!
オレは何があってもお前の元に行く」
デニムのポケットに入っていたなにかのレシートの裏に殴り書きされた字は、読みずらかった。
「1627?」
「1051」
…読めない。
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