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学校に行き、授業を受け、昼休みに花純とご飯を食べ、また、授業を受ける。
時々、一生このままなんじゃないかと思ってしまう。
社会人になり、会社へ行き、仕事をして、帰る。
それを今から、脳に洗脳されているのでは。と。
今日は、保健室でサボろ。
保健室は、好きだ。
海が見えるから。
「先生?ちょっと寝ててもいい?」
少し茶色い短い髪をキレイにセットして、白衣を来た保険医はにこりと笑って、どうぞ?
と言った。
保険医の先生。小野寺 優馬(ゆうま)は、31歳には見えないくらい、若く見える。
優しくて甘いその声は、生徒からも大人気だ。
「いつもの場所、空いてるよ?」
そう言われて向かうと、開けられた窓から優しい風がカーテンを揺らし、春の暖かい日差しがいっぱいだった。
そのベッドに腰掛け、外を見ると碧い海が見える。
「はい。ココア」
すっと差し出されたカップから、甘い香りが漂う。
「ありがと」
熱いから、気をつけて。
そう言って渡される瞬間に微かに触れる先生の指。
そのまま、首筋をなぞられて身体が震える。
「また、誰につけられたの?」
その指が鎖骨まで降り、もう一つ。
と、呟く。
シャツのボタンに指がかかり、
「セクハラ」
言葉と共に、手を払い除けた。
「今回の彼氏は随分、独占欲が強いみたいだね」
楽しそうに笑う先生は、私の隣に腰掛ける。
「彼氏じゃない」
「あれ?あの年上くんとは別れたの?」
「付き合ってもない」
「そうなんだ。でも、今回の子はまた別なんだろ?」
気を付けろよ。と、両手を後ろにつき脚を組む。
「ちゃんと避妊してるから大丈夫」
手の中にあるカップを口元に運び、ココアをひと口飲んだ。
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