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「俺の事、好きって言ってたの嘘なんだろ?」

頬に感じた重たい痛みのあとに、寂しそうな彼の声が続く。

じんじんと痛む左頬に触れ、彼をじっと見る。

「…俺、知ってるんだよ。お前が違う男とホテルに行ったってこと」

グッと私を睨む瞳に、じわじわと涙が溜まる。




「もう、別れよ」

苦しそうに、ようやく吐き出した彼の言葉を聞き終えて、踵を返して歩き出す私。

ああ。やっと、終わった。

なんてことを考えながら、

「……ゆう…」

“私”の名前を呼ぶ声が遠くに聞こえた。



「誰の事、呼んでるの?」

フフっとこぼれた笑いと、言葉。

気分が高揚する。







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