概要
彼らの、生き、示し、戦い、求め、流す血の物語を、共に綴ろう。
それは、さながら、暴れる風。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!興国の歴史に埋もれた英雄たちの物語
長い物語の中に、魅力的な人物がたくさん出てきます。
私は本文露出の多い、ニルとネーヴァと言う2人の少年とフィンと言う少女に注目して読み進めました。
読み終わって、これはニルとネーヴァの、それぞれのフィンへの(歪んだ?)愛の物語であり、最初から最後までフィンの野望の物語であったと思います。
少年二人の愛も、少女の野望も、最後にはすべて達成されます。これをアンハッピーと感じるかハッピーエンドと感じるかは好みが分かれると思いますが。
3人とも、それぞれが目指した通りの、幸せな最期だったんじゃないかと。
きっと現実にも、スポットライトを浴びずに埋もれていった英雄たちがいるんだろうなと思いを馳…続きを読む - ★★★ Excellent!!!増黒節炸裂★★★★★民を想い、国を見据えた戦士たちの生き様がここにある
大河ドラマも見たことのない私は無論、歴史モノ小説も初めてで、しかも長編。
果たして完読できるのか、軽い気持ちで読み進めてみた。
結果、2018年の年明けに自身がニルと一緒に巨大なクマから逃げ、吊橋に追い込まれるという謎の初夢にうなされるほど、本書の影響を受けまくり完読した。
なんと言っても惹かれるのが臨場感あふれる戦闘シーンだ。
ギタリスト兼ラッパーという経歴を持つ著者が放つ描写は非常にテンポとリズムに弾んでいて、譜うように綴られる文末に時に酔い痴れてしまう。
その男らしいタッチとは裏腹に、雨つぶに瞬く瞼の動きまでもが繊細に描かれており、登場人物の魅力を上手に読者へ想像させてくれる。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!これは、寒々しい雨の中、希望を切望する、人々の物語。
私はこのような歴史小説をあまり読んだことがありませんので、適切な言葉を知りませんが、その上で言いましょう。
とても重厚で、人の息遣いや大地の轟きが聞こえてくる、素晴らしい群像劇でありました。
読み終えたあとの、程よい疲労感と、それを上回る充足感。そして、この物語を初めから思い返し、終わりのその後に思いを馳せるこの時間も、とても心地よいものだと感じます。
さて、具体的なレビューですが。
まず目に付くのは、独特なリズムをもつ、簡潔かつ流麗な文章。
それで織り成される語り出しが、素晴らしい。ページを捲ると同時に、より惹きつける語り出しによって、物…続きを読む - ★★★ Excellent!!!作者の哲学の結晶
まずはじめにお断りしておこうと思う。私はどうやら、他の読者の方々とは違った見方をしているらしい。であるから、このレビューはあまり参考にならない。それを踏まえた上でお読みいただきたい。
これは、哲学書だ。
作者である増黒氏の思想が、全編に亘って示されている。
それはひどく高潔で、淀みがない。
おそらく作者は、長いようで短い人の世を深く憂いているのだろう。そして、憤っており、なおかつ愛しているのだろう。この作品は、血を吐くほどの叫びである。
架空の国や人々、そして歴史を描く物語として、作者は心の在り方を説いている。
読者と登場人物の間には常に一定の距離が保たれるように書かれており、読者は全体…続きを読む - ★★★ Excellent!!!黒き風、数多の希求を薙ぎ、新たな世界を築かん
読み終えた後、まるで数年もの時間が経過しているように感じました。
争う二つの国の狭間に翻弄され、しかし自らの生きる糧を見出そうと懸命に疾走り抜く少年と少女。
この二人を主軸に、様々に渦巻く思惑と混迷する……いや、混迷させられた世界情勢が、史記を紐解く形で語られていきます。
綿密に描写された背景と精緻に凝らされた世界観は、圧巻の一言。
架空の物語ではなく、『真の物語』をこの身で体感しているような錯覚すら覚えました。
それを伝え書く作者様ならではの大胆な筆致は、まさに『暴れる風』。
動乱に荒れ狂う旋風を、胸に、五感に巻き起こします。
私の稚拙な言葉では伝えきれませんが、この物語に出会えて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!刃として生きる青年と、鋼の意思を持つ少女。二人が作り出すは、どんな世か
これは、ある国の戦いの記録。しかしそれはまた、一人の青年と一人の少女を軸に描かれた理想の国を、社会を作るための戦いの記憶でもある。
孤児として生まれ、何か大きな自分以外の意思に従って命を受けるままに人を殺めてきた青年「ニル」。
彼が、仕事の中で出会ったのは、数奇な運命をもつ少女「フィン」。
争う二つの国を繋ぐ子として生を受け、精霊を祭るために生きるはずだった少女。
しかし、彼女は自らの意思で「龍の旗」を立て、自らの理想を具現することに人生を賭していく。その傍らには「ニル」の姿があった。
この作品の魅力は、なんといっても国同志の争いや内戦という壮大なものを扱っていながら、その目線は主…続きを読む - ★★★ Excellent!!!この物語を読む理由を知るには、読む以外に方法はない。
つまり、とりあえず読めということです。
まだ最新話にすら追いついてませんが、とりあえず読んでほしいということを伝えたくなりました。
剣と魔法、勇者のファンタジーではなく、架空の歴史を読み解く物語です。
正直に言えば、わたしは歴史小説は苦手です。
なのに、すっかり惹き込まれてしまいました。
その理由は、読んでいただけるだけでわかってもらえるはずです。
ですが、それではあまりにもレビューとしてどうかと思いますので、少しだけ。
ここに書かれていることは、すべて過去のことです。
この筆者がなぜこの過酷な歴史を紐解こうとしたのか、惹きつけられる人物たちが多くいるからでしょう…続きを読む - ★★★ Excellent!!!骨太架空歴史ファンタジー
歴史小説好きは勿論、そうでない方にも読み応え抜群です。
ファンタジーは、やはり骨組みがしっかりしていないと、空疎なものになり、つまらないと感じてしまいますが、この作品においてその心配はありません。
中世の中東をモデルにしたかと思われる精緻な作り込みの世界観、魅力的な人物像、大胆かつ機知に富んだストーリー展開。どれを取っても素晴らしいの一言。同じ作者様の、弥生時代を題材にした「女王の名」を以前拝読しましたが、個人的にはそれを遥かに上回る完成度であると感じます。
はじめ、フィンに対して読者に心から魅力的だと感じさせ、引き込んでおきながら、ぼんやりとしたそのキャラクター像に、徐々に彫り込みを入…続きを読む