長い物語の中に、魅力的な人物がたくさん出てきます。
私は本文露出の多い、ニルとネーヴァと言う2人の少年とフィンと言う少女に注目して読み進めました。
読み終わって、これはニルとネーヴァの、それぞれのフィンへの(歪んだ?)愛の物語であり、最初から最後までフィンの野望の物語であったと思います。
少年二人の愛も、少女の野望も、最後にはすべて達成されます。これをアンハッピーと感じるかハッピーエンドと感じるかは好みが分かれると思いますが。
3人とも、それぞれが目指した通りの、幸せな最期だったんじゃないかと。
きっと現実にも、スポットライトを浴びずに埋もれていった英雄たちがいるんだろうなと思いを馳せながら。
大河ドラマも見たことのない私は無論、歴史モノ小説も初めてで、しかも長編。
果たして完読できるのか、軽い気持ちで読み進めてみた。
結果、2018年の年明けに自身がニルと一緒に巨大なクマから逃げ、吊橋に追い込まれるという謎の初夢にうなされるほど、本書の影響を受けまくり完読した。
なんと言っても惹かれるのが臨場感あふれる戦闘シーンだ。
ギタリスト兼ラッパーという経歴を持つ著者が放つ描写は非常にテンポとリズムに弾んでいて、譜うように綴られる文末に時に酔い痴れてしまう。
その男らしいタッチとは裏腹に、雨つぶに瞬く瞼の動きまでもが繊細に描かれており、登場人物の魅力を上手に読者へ想像させてくれる。
面白いーー。
サクサク読めて楽しかった、ではなく、
時に息を飲み、手に汗握り、どっと疲れる、
なのに引き込まれてしまうから、面白い。
経営戦略本としてあらゆる経営者の愛読書となっている古典「孫子」、
日本で最も長く時代を収めた「徳川幕府」などの背景が垣間見え、
現代へ通ずる「永続主義」の国を目指し、
戦う人々のあり方や思考がよく描かれていて
その狭間にすくう人々の生き様がまさに力強く描かれており、
ブレのない思想がさらに人物をより魅力的に引き立たせてくれる。
読者レビューを拝見すると同意見となってしまうが私も書こう、
ぜひたくさんの人にこの作品を読んでほしい。
そして暴れる風、増黒氏の突風のような早筆に今後も期待したい。
PS:
いや〜皆さんのレビューが上手で書くのに少し戸惑いました。
増黒さん風に書いてみたのですが、いやぁ疲れます。
孫子も徳川幕府そんな知らんし(笑)!!
読者としても同じ物書きとしても大変面白く勉強させていただきました!
これからも応援しています!!
私はこのような歴史小説をあまり読んだことがありませんので、適切な言葉を知りませんが、その上で言いましょう。
とても重厚で、人の息遣いや大地の轟きが聞こえてくる、素晴らしい群像劇でありました。
読み終えたあとの、程よい疲労感と、それを上回る充足感。そして、この物語を初めから思い返し、終わりのその後に思いを馳せるこの時間も、とても心地よいものだと感じます。
さて、具体的なレビューですが。
まず目に付くのは、独特なリズムをもつ、簡潔かつ流麗な文章。
それで織り成される語り出しが、素晴らしい。ページを捲ると同時に、より惹きつける語り出しによって、物語に取り込まれていく。
街路の真ん中に立って、パトリアエを、バシュトーを眺めているような、彼等の隣にいるような、そんな気になりました。
そして描かれていく人々。
それぞれの正義を胸に、それぞれの道を歩みながら、ただ一つの希望を目指し進む者達。
そんな彼等の息遣いを、心臓の音を、血の滴りを、耳元で聞いたような気がします。
彼等の歴史を追って見ているようで、しかし実際は彼等の側で激動を生きた、そんな心地までしました。
これは「人の願いの物語」だと私は感じました。
皆が己の正義のために、怒り、暴れ、悲しみ、苦しみ、戦い、抗い、決意し、そして歩む。
そして、彼等は私達で、私達は彼等なのだと、ふと思いました。
だから私は、この物語を読み、「やはり人は愛しい」などといった考えに至ったのだと思います。
長々と赴くままに書きましたが、最後は簡潔に締めましょう。
素晴らしい、物語でした。
まずはじめにお断りしておこうと思う。私はどうやら、他の読者の方々とは違った見方をしているらしい。であるから、このレビューはあまり参考にならない。それを踏まえた上でお読みいただきたい。
これは、哲学書だ。
作者である増黒氏の思想が、全編に亘って示されている。
それはひどく高潔で、淀みがない。
おそらく作者は、長いようで短い人の世を深く憂いているのだろう。そして、憤っており、なおかつ愛しているのだろう。この作品は、血を吐くほどの叫びである。
架空の国や人々、そして歴史を描く物語として、作者は心の在り方を説いている。
読者と登場人物の間には常に一定の距離が保たれるように書かれており、読者は全体を俯瞰するようにそれを追ってゆくことになる。しかしその実、作者と登場人物、そして作中の「筆者」との距離は非常に近い。すべて同一人物と言っても良い。
描写は淡々と簡潔に、深いところまで踏み込むことはなく、ゆえに感情を強く揺さぶられるような作りにはなっていない(とはいえ、そういった場面がまったくないわけではない)が、それが却って作者の思想を真っ直ぐに伝える効果を生み出しているのだろう。であるから、ここまで支持されるのではないかと思う。
つまりは、「筆者」という存在を通して物語を記述するように見せて、作者が作者の分身である登場人物を語ることで、自分という存在を語っている、そういう熱に、皆あてられるのだろう。
だから、これは哲学書なのである。哲学書としての評価をしている。
この意見には、多くの反論が寄せられることと思う。作者本人からも、心外だと言われるかもしれない。だがあえて断言する。
これは、増黒氏の思想、人生のすべてなのだ。
それを正面から受け止める覚悟があるのなら、読むと良い。
読み終えた後、まるで数年もの時間が経過しているように感じました。
争う二つの国の狭間に翻弄され、しかし自らの生きる糧を見出そうと懸命に疾走り抜く少年と少女。
この二人を主軸に、様々に渦巻く思惑と混迷する……いや、混迷させられた世界情勢が、史記を紐解く形で語られていきます。
綿密に描写された背景と精緻に凝らされた世界観は、圧巻の一言。
架空の物語ではなく、『真の物語』をこの身で体感しているような錯覚すら覚えました。
それを伝え書く作者様ならではの大胆な筆致は、まさに『暴れる風』。
動乱に荒れ狂う旋風を、胸に、五感に巻き起こします。
私の稚拙な言葉では伝えきれませんが、この物語に出会えて本当に良かったと心から感謝した、至極の作品です!
これは、ある国の戦いの記録。しかしそれはまた、一人の青年と一人の少女を軸に描かれた理想の国を、社会を作るための戦いの記憶でもある。
孤児として生まれ、何か大きな自分以外の意思に従って命を受けるままに人を殺めてきた青年「ニル」。
彼が、仕事の中で出会ったのは、数奇な運命をもつ少女「フィン」。
争う二つの国を繋ぐ子として生を受け、精霊を祭るために生きるはずだった少女。
しかし、彼女は自らの意思で「龍の旗」を立て、自らの理想を具現することに人生を賭していく。その傍らには「ニル」の姿があった。
この作品の魅力は、なんといっても国同志の争いや内戦という壮大なものを扱っていながら、その目線は主人公であるニルを通しているため、歴史がうねりをあげて動いていく瞬間を追体験できることにあるのではないだろうか。テンポのよい語り口は、雨音、息づかい、花の香りまで、まるでその場にいるかのように読者に迫ってくる。
かと思えば、この作品は後世の学者がかつての歴史を文献をとおして検証しているという体裁をとっているため、時に時間を超えた極めて客観的な視点も与えてくれる。
その二つの視点によって上からも下からも立体的に歴史の変化を追っていく、なんとも面白い読書経験ができる本作。
貴方も体験してみてはいかがだろう。
つまり、とりあえず読めということです。
まだ最新話にすら追いついてませんが、とりあえず読んでほしいということを伝えたくなりました。
剣と魔法、勇者のファンタジーではなく、架空の歴史を読み解く物語です。
正直に言えば、わたしは歴史小説は苦手です。
なのに、すっかり惹き込まれてしまいました。
その理由は、読んでいただけるだけでわかってもらえるはずです。
ですが、それではあまりにもレビューとしてどうかと思いますので、少しだけ。
ここに書かれていることは、すべて過去のことです。
この筆者がなぜこの過酷な歴史を紐解こうとしたのか、惹きつけられる人物たちが多くいるからでしょう。このひと言に尽きるのではないでしょうか。
架空の歴史とはおもえないほどの緻密に織りなされた物語。
とりあえず、お読みください。
歴史小説好きは勿論、そうでない方にも読み応え抜群です。
ファンタジーは、やはり骨組みがしっかりしていないと、空疎なものになり、つまらないと感じてしまいますが、この作品においてその心配はありません。
中世の中東をモデルにしたかと思われる精緻な作り込みの世界観、魅力的な人物像、大胆かつ機知に富んだストーリー展開。どれを取っても素晴らしいの一言。同じ作者様の、弥生時代を題材にした「女王の名」を以前拝読しましたが、個人的にはそれを遥かに上回る完成度であると感じます。
はじめ、フィンに対して読者に心から魅力的だと感じさせ、引き込んでおきながら、ぼんやりとしたそのキャラクター像に、徐々に彫り込みを入れていく手法に舌を巻きます。
また、敵として描かれるべきアトマスやリョートなどはとても素晴らしい人間であることが示され、敵と悪の違いを明確化しています。
ウラガーンの面々である主人公ニル、ネーヴァやダンタールなどの人物像もとても安定感があり、全てのキャラクターに思い入れが持てます。
絶妙な会話のトーン、独特の力強く情感溢れる、淡々とした文体は、流石の増黒節といったところでしょうか。
史書を紐解いてゆく新たなスタイルが、目に新しいと感じました。
一話読み進めるごとに謎が深まり、一つ解決しては次の綻びが生まれる様は、まるで本当の歴史を読んでいるかのよう。
交差する人の思いや願いが生む摩擦。そしてその先にある理想の国家というもの。
彼ら一人一人が作り出す、パトリアエやバシュトーの歴史の行く末を、史記の読者としてこれからも追い続けたいと思います。
たとえるならセピア色。
けれどけして美しい過去の青春を物語る色ではなく、古い歴史書の一葉の色であり、夜を迎える空の色であり、薄く乾いた血の色なのでしょう。
ウラガーンとはパトリアエなる国家を翻弄するため敵国バシュトーの手のものによって結成された暗殺者集団です。
ウラガーンに所属する少年少女たちは――物語が進むにつれて青年へと成長していきますが――あまりにも純粋。自らの生い立ちや置かれる立場に疑問をさしはさむことなく、淡々と仕事をこなしていきます。
今のところ、彼らはあくまで駒です。国という巨大な組織を前にすれば、小さな存在です。けれど確実に仕事をこなしていく。少しずつ、少しずつ、社会を食い破ろうとしている。ただし彼らがそれに気づくことはないかもしれません。少なくとも今のところ、彼らはそこには興味がない。
私には彼らが歴史の転換点を待っているように思えます。
これから先、彼らには、この大きな渦の中で何か大きな役割を果たすことになるのでしょう。予感はあります。しかし今はまだ、ただ、仕事をしている。
パトリアエとバシュトーは政治形態から産業まで何もかも細かく設定されており、その世界観の深さはまるで本物の歴史をなぞっているかのようです。
ああ、この国なら、こういう経緯をたどって、こういう事態に陥るだろうな……というのが、何となく見えてきます。
これぞハイファンタジーの醍醐味だと思います。
落日のセピア色をしたパトリアエは、今後、どんな末路を辿るのか。
そして、その舞台で、ウラガーンたちはどんな役割を果たすのか。
今後も追い掛けさせていただきます。
(最新話:ジャハディード突破まで拝読してのレビューです)
作者である彼とは、言葉でのみ繋がっている。
Web小説の世界で知り合った、顔も知らぬ人物に一目を置くのは、陰翳礼讃の精神を忘れた、文明の利器が齎す愚行なのかもしれない。
しかしだからこそ、他の方々への感想やコメントからひしひしと放たれる彼の思考や理念の美しさを、常々感じているのだ。
私の想う彼は、端的だ。
気高く、鋭利で、群れる事を好まず、輝いている。
紆余曲折を好まず、眠れぬ夜が在れば、眠れるようになるまで言葉を積み上げるような愚直な男だ。
志操堅固を絵に描いたように、彼はただ積み上げる。自身の衝動を、数多の知識を、乱暴な言葉の数々を、河原の石のように積み上げる。
その行為の難しさも、その行為の美しさも、一度でも物を書こうした事のある人間なら誰しもが知っているはずだ。
その潔さには、魂が現れる。
本作『ウラガーン史記目録』には、増黒豊が現れている。
最後に。
これを言うと元も子も無いのだが、私は歴史小説が苦手だ。
数ある創作物のジャンルの中で、一番足踏みをしてしまうジャンルだと言っても過言では無い。
そんな私が、増黒豊の言葉を待っている。
彼の書く物語と、彼の放つ信念を照らし合わせるように、本作の更新を待っている。
彼の生き方が、どんな生き方を紡ぎ出すのかと、今もこうして待っている。
この拙い書評をお読みの方の中に、もしも「私も歴史小説が苦手だ」という方がいらっしゃるとすれば、そんな方にこそ、本作品を強く強く推薦したいと思う。
まず、この物語はヘビーなファンタジーです。内容も文章も重厚で、ライトなファンタジーによくあるコメディやお色気は限りなく薄いです。
しかし、それを補って余りある迫力ある戦闘、丁寧な描写と設定、放っておけない魅力的な登場人物達、そして時たま挟まれる飯テロは素晴らしいクオリティです。
ウラガーン達の生き様、主人公ニルとフィンの行く末、是非覗いてみてください。
この作者様の作品はいくつか拝見させていただいておりますが、いずれも重厚な設定と、迫力ある戦闘シーンが織り込まれています。特におすすめなのが、弥生時代の日本を舞台にした「女王の名」です。
もし血を熱くたぎらせる物語をお探しであれば是非こちらをオススメ致します。
何が何でも読んでほしい、作品の一つです。
登場人物の息遣い、彼らの鼓動、想い、願い、希望、絶望、悲しみ、戸惑い、怒り、愛おしい感情まで。
筆者の魂を込め、作り上げられた、この作品。
———ウラガーン史記目録
タグの『読めばあなたも虜になる』は伊達ではありません。
一度その世界に入り込むと、ブルーライトの輝く液晶から顔を見上げた時、目の前に戦場が広がります。
星屑の花の香りが辺りを覆い、聖女の瞳に飲まれていく。血飛沫に汚された龍の旗は風に靡き、馬が駆け、龍の唸る音がする。
雨、夜、血の香り……この目録は少年の日常から始まります。
孤児の少年、ニル。そして、フィンとの出会い———
歴史が、動き始める。
「これから先、どうなるかなんて、誰にも分からないわ。それでも、どうするかを決めることなら、誰にだって出来る。そうでしょう?」(「唇と髪」より引用)
きっとその風は、希望を運んでいる。そう、願うのです———
素敵な話を、ありがとうございます。