ウラガーン史記目録

作者 増黒 豊

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★★★ Excellent!!!

たとえるならセピア色。
けれどけして美しい過去の青春を物語る色ではなく、古い歴史書の一葉の色であり、夜を迎える空の色であり、薄く乾いた血の色なのでしょう。

ウラガーンとはパトリアエなる国家を翻弄するため敵国バシュトーの手のものによって結成された暗殺者集団です。
ウラガーンに所属する少年少女たちは――物語が進むにつれて青年へと成長していきますが――あまりにも純粋。自らの生い立ちや置かれる立場に疑問をさしはさむことなく、淡々と仕事をこなしていきます。
今のところ、彼らはあくまで駒です。国という巨大な組織を前にすれば、小さな存在です。けれど確実に仕事をこなしていく。少しずつ、少しずつ、社会を食い破ろうとしている。ただし彼らがそれに気づくことはないかもしれません。少なくとも今のところ、彼らはそこには興味がない。
私には彼らが歴史の転換点を待っているように思えます。
これから先、彼らには、この大きな渦の中で何か大きな役割を果たすことになるのでしょう。予感はあります。しかし今はまだ、ただ、仕事をしている。

パトリアエとバシュトーは政治形態から産業まで何もかも細かく設定されており、その世界観の深さはまるで本物の歴史をなぞっているかのようです。
ああ、この国なら、こういう経緯をたどって、こういう事態に陥るだろうな……というのが、何となく見えてきます。
これぞハイファンタジーの醍醐味だと思います。

落日のセピア色をしたパトリアエは、今後、どんな末路を辿るのか。
そして、その舞台で、ウラガーンたちはどんな役割を果たすのか。
今後も追い掛けさせていただきます。

(最新話:ジャハディード突破まで拝読してのレビューです)

★★★ Excellent!!!

まだまだ物語は走り始めといった印象だが、この濃厚にして芳醇な香りは、早めに皆様にも嗅ぎ取って頂きたい!

ウラガーン――それは、雨と風を司る龍の名だ。その名を冠する、王家に対する叛乱軍。彼らは、雨が好きだった。
雨が降りしきる中、彼らは自らの正義を執行する。王家に媚びへつらう人間たちを、暗殺してゆくのだ。王家には、王家の正義があろう。だが、ウラガーンたちにも、確固たる信念があった。

ウラガーンがひとり、ニル。少年ではあるが、人を殺す事に慣れきった彼は、とある任務の最中、王家の血筋にして精霊の眷族である少女、フィンと出会う。
龍と精霊が出会った時、王国の運命は、大きく動き出してゆく!

ボーイ・ミーツ・ガール的エッセンスと、中東ファンタジーにも似た濃厚な世界観。ふたつが合わさった時に産まれる、筆者ならではの独創的にして濃厚な世界に、今すぐ酔いしれよ!

★★★ Excellent!!!

作者である彼とは、言葉でのみ繋がっている。
SNSで知り合った人物に一目を置くのは、陰翳礼讃の精神を忘れた、文明の利器が齎す愚行なのかもしれない。

しかしだからこそ、彼から放たれる思考や理念の美しさを、常々感じているのだ。

私の知る彼は、端的だ。
気高く、鋭利で、群れる事を好まず、輝いている。
紆余曲折を好まず、眠れぬ夜が在れば、眠れるようになるまで言葉を積み上げるような愚直な男だ。

志操堅固を絵に描いたように、彼はただ積み上げる。自身の衝動を、数多の知識を、乱暴な言葉の数々を、河原の石のように積み上げる。

その行為の難しさも、その行為の美しさも、一度でも物を書こうした事のある人間ならば誰しもが知っているはずだ。

その潔さには、魂が現れる。
本作『ウラガーン史記目録』には、増黒豊が現れている。

最後に。
これを言うと元も子も無いのだが、私は歴史小説が苦手だ。
数ある創作物のジャンルの中で、一番足踏みをしてしまうジャンルだと言っても過言では無い。

そんな私が、増黒豊の言葉を待っている。
彼の書く物語と、彼の発言を照らし合わせるように、本作の更新を待っている。
彼の生き方が、どんな生き方を紡ぎ出すのかと、今もこうして待っている。

この拙い書評をお読みの方の中に、もしも「私も歴史小説が苦手だ」という方がいらっしゃるとすれば、そんな方にこそ、本作品を強く強く推薦したいと思う。

★★★ Excellent!!!

まず、この物語はヘビーなファンタジーです。内容も文章も重厚で、ライトなファンタジーによくあるコメディやお色気は限りなく薄いです。
しかし、それを補って余りある迫力ある戦闘、丁寧な描写と設定、放っておけない魅力的な登場人物達、そして時たま挟まれる飯テロは素晴らしいクオリティです。
ウラガーン達の生き様、主人公ニルとフィンの行く末、是非覗いてみてください。

この作者様の作品はいくつか拝見させていただいておりますが、いずれも重厚な設定と、迫力ある戦闘シーンが織り込まれています。特におすすめなのが、弥生時代の日本を舞台にした「女王の名」です。
もし血を熱くたぎらせる物語をお探しであれば是非こちらをオススメ致します。