二つの国家の狭間で、若者たちは血の雨を浴びながら生きる

たとえるならセピア色。
けれどけして美しい過去の青春を物語る色ではなく、古い歴史書の一葉の色であり、夜を迎える空の色であり、薄く乾いた血の色なのでしょう。

ウラガーンとはパトリアエなる国家を翻弄するため敵国バシュトーの手のものによって結成された暗殺者集団です。
ウラガーンに所属する少年少女たちは――物語が進むにつれて青年へと成長していきますが――あまりにも純粋。自らの生い立ちや置かれる立場に疑問をさしはさむことなく、淡々と仕事をこなしていきます。
今のところ、彼らはあくまで駒です。国という巨大な組織を前にすれば、小さな存在です。けれど確実に仕事をこなしていく。少しずつ、少しずつ、社会を食い破ろうとしている。ただし彼らがそれに気づくことはないかもしれません。少なくとも今のところ、彼らはそこには興味がない。
私には彼らが歴史の転換点を待っているように思えます。
これから先、彼らには、この大きな渦の中で何か大きな役割を果たすことになるのでしょう。予感はあります。しかし今はまだ、ただ、仕事をしている。

パトリアエとバシュトーは政治形態から産業まで何もかも細かく設定されており、その世界観の深さはまるで本物の歴史をなぞっているかのようです。
ああ、この国なら、こういう経緯をたどって、こういう事態に陥るだろうな……というのが、何となく見えてきます。
これぞハイファンタジーの醍醐味だと思います。

落日のセピア色をしたパトリアエは、今後、どんな末路を辿るのか。
そして、その舞台で、ウラガーンたちはどんな役割を果たすのか。
今後も追い掛けさせていただきます。

(最新話:ジャハディード突破まで拝読してのレビューです)

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