38.イギリスのユーロ離脱
イギリスの通貨である「ポンド」が上に下に動いているのは理由があった。
それは今月23日に実施される「国民投票」が世界中で注目されているからだった。
イギリスはユーロ圏から離脱すべきか否か———。
それを決する投票の結果が近々出るのだ。
事前の大方の見立ては「留まる」であろうと予測されている。そもそもこの問題は移民によるイギリス人の雇用が奪われたという不安——が元である。中東や旧共産圏の人々のイギリスへの流入は増える一途であり、雇用不安や治安悪化をイギリス人は懸念し、また怒っていたのだ。
——今週はこんな感じでかなり動くぞ、テツヤ
——そんなにその「国民投票」の結果って影響力あるの?
——そりゃそうだ、落ちぶれたといえども、大英帝国だ。それがユーロから抜けるとなるとどれだけの影響が及ぶか計り知れないからな
——日本も同じように?
——ああ、金融関係中心に結構な数の日系企業がイギリスに進出してるからな。なんたって今でも「シティー」は世界の金融の中心だし
——へぇー、アメリカのウォール街よりも?
——うん。歴史が違うよ。「ロンドン」「ニューヨーク」「東京」は世界の三大金融都市だ。そのなかでもロンドンの「シティー」は歴史も格も最上だからな
——モモコさぁ、そういうのどこで勉強したの?
——親父が教えてくれたよ。数学や理科よりも金融を叩き込まれたな
——なんか、すごい親子だな
——父親とは思うこと少ないけど、師匠としては尊敬してるな
モモコとモモコのお父上の関係は僕んちのような普通の家庭にはないものがあって、時々モモコが遠い人に見えたりするんだ。
——さて、そろそろ直近の安値を抜きそうだぞッ
「下げ」の「ローソク足」の先がそのポイントに近づいている。
——これ、抜けたら「売り」で入るんだね?
——いや、抜けたあと、次の「ローソク足」が確定するまで待つんだ。ダマシの可能性もあるからな
そして十分ほど後「ローソク足」の先はそのポイントを抜けた瞬間、凄い勢いで「売り」が進んだんだ
——早く入らないと「売り」のポイント逃すんじゃないの?
僕は「下げ」に動いている「ローソク足」の勢いに負けそうになってマウスを握る手も汗かいていた。
——まだだ。素人はココで入らされて、騙されるんだ
すると先ほどまでの「下げ」が嘘のように、そのポイントまで値が戻って来て、またそのポイントを上抜けようとしている
——あ、やっぱり、、、これダマシなの?
——いや、次、ポイントを下抜けたら全力で「売り」に行くぞ
そして、戻しが一服するとまた「下げ」に転じた。
——ココだッ!
僕は、モモコの声に反応してマウスを素早くクリックした。
「ポンド/円」を10枚、「売り」で入った———。
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