20.「人間の恐怖心理」
——テツヤ、ここ見てみろよッ
モモコが、画面の右上を指して言った。そこには口座名義【北川鉄也】:現在の純資産額【312,000円】——と、あった。
——へ? これが、どうかしたの? 僕がいまのデモトレードで12000円儲かって、元金が312000円になったってことでしょ?
——ああ、そうだよッ。ただ、これはデモ取引じゃない ガチ、ホンチャン取引だ
——げぇーっ!!! じゃ、リアル、僕は12000円儲けちゃったってこと?たった三十分ほどで? マジ、マジ?
——マジだッ。っていうか、もし最初っからこれがデモじゃないガチの取引って知ってたら、どうだった?
——ムリ、ムリっ!、ムリ! 2500円ほどマイナスなったときでも心臓バクバクだったし、んでもって、今度は一万円以上も利益出てるときになんか、きっとすぐに「決済」ボタン押してたと思うよ、早く利益を確定させたくて
——しかし、この先はこのガチの取引でやってもらうぞッ
——えーえっ、もう少しだけデモ取引でやらせてよ。怖くって、ガチなんかムリだってー
——怖いだろ? それでいいんだッ。ただ、デモなんかでいくらやっても実践の緊張感を感じることなんかできないから意味がないんだよッ。何故なら、トレードっていうのは人間の「恐怖心理」との戦いなんだからねッ
——恐怖心理……?
——負けてお金を損したり減らしたりすことの恐怖。それと、いまある利益を減らすことの恐怖。この二つの恐怖心理に打ち勝たなきゃ、FXでは勝てないんだッ。それはワタシが長年やってきて実践で学んだことだから間違いないよッ
——モモコだから打ち勝てたんであって、僕に勝てると思う?
——それに勝てなきゃ、このゲームでも勝ちは100%ないぞッ。それでいいのかよッ、テツヤッ!!
——そっか……、前にモモコが言ってた、「命を削る——」ってこのことだったのか……
——そうだよッ。この世界で飯食ってる奴らはみんな虎視眈々と他のトレーダーから金を奪い取ろうって狙ってるやつばっかりなんだよッ。甘ちゃんな根性でやってると、あっという間に食われてしまうぞッ
——それを克服しなきゃ、勝てないなら頑張るしかないな。僕はトレードでお金儲けをしたいわけじゃないんだ。このトレードでお父さんに勝つためだけにやってるんだ。そんなでも、いいのかな……
——勝負に勝とうとする心意気だけで、十分さッ。ありがとうな、テツヤ
モモコがまた半べそになってて、すんごく愛しくなって、僕は、ぎゅってモモコのこと抱きしめたんだ——。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます