第13話 海の民
「おにーちゃん、行ったよー」
激しく主張する太陽の光をビーチボールが反射する。
「おう‼︎」
それを両手で大空へ押しやる。
ボールがネットを飛び越え、ミサがさらにトスを渡す。待ちかねていたかのようにルピが
「うぉりゃあっ!」
と雄叫びを上げながらスパイクをかます。ネットに跳ね返り、顎に当たる。
「あうぅ!」
ルピが悶える
「大丈夫?怪我してなぁい?」
マキはあせあせとルピに駆け寄る
そこで俺は気付いた。
そういえばハナカさんがまだ来てないなぁ……。
「なぁコノミ、ハナカさんはどうした?」
コノミは辺りを見回し、
「そういえば、まだ来てないね。」
着替えにしては時間がかかり過ぎている。
「コノミ、俺ちょっと確認してくるから。」
「あ、ちょっと待って、私も行く。おにーちゃん、女子更衣室入れないでしょ?」
ごもっともだ。大きな声でミサに呼びかけた。
「おーい。ミサー。俺らちょっとハナカさんのこと探しに行ってくるから気をつけて待ってろよー!」
「はーい」
無謀と知りながら携帯にメッセージを送る。
〈今どこにいますか?迎えに行きます。〉
返事はさして待たなかった。
〈今行きます。更衣室の前で待っていてください。〉
そのことをコノミに伝え、2人で更衣室前で待つ。
「おまったせー♪」
上機嫌なハナカさんが更衣室から出てくる。
その豊満な胸は、いつもの制服姿に増して自己主張が激しい。
コノミはそれを見て、自分の胸を触ってため息をつく。
俺は好みの目を塞ぎ、小声で
「見ちゃダメだ。」
コノミは抵抗をしなかった。
戻る最中、ハナカさんがデジカメを持っていることに気付き、写真部であることを思い出す。
「ハナカさんってどんな写真撮るの?」
「え?ああ、ワタル君になら……。見せてもいい、かな?」
ハナカさんがデジカメを渡す。
撮った写真を確認する。画面に映ったのはミサの下着姿だった。
おう?
思考が停止した。これ以上は見るなと警告が脳内でエコーする。
ハナカさんは体を近づけ、
「あとはねー」
と操作する
「うおうおうおうお⁉︎⁉︎⁉︎」
メンバーの着替えがバッチリ収められている。
「今日のベストショットだよー♪」
「ちょっ!ハナカさん、これ盗撮なんじゃ」
ハナカさんは鼻にかけるように笑い、
「1枚五百円で売ってやってもいいよ〜」
「誰が買うか!ハナカさんの趣味は分かったから、とにかく消すよ?」
大きくかぶりを振るハナカさん
「ダメダメダメー‼︎家宝にするつもりなのに〜!」
ピッ……。
夕方にはもうみんなぐったりだった。そんな中1人スキップで廊下を進むルピ
「おっんせん♪おっんせん〜♪」
その横でミサが
「じゃあまた後で、先に上がったら部屋に入っててもいいから。」
「オッケー。温泉でしっかりと疲れとるんだぞ〜。」
その時暖簾をくぐったハナカさんがデジカメを持っていたところを見て、
「盗撮に気をつけてね」
「はい?」
髪、顔、身体を洗い風呂に浸かる。身体にしみる熱さというのはこのことか……。
壁の向こうからキャッキャとはしゃぐ声が聞こえる。その中にコノミの声が聞こえたことから女湯も他に人がいないことがわかる。
「コノミちゃんここに寝そべって〜。そんでマキちゃんがその上に覆いかぶさって〜」
そんなハナカさんの声が。
すかさず俺は
「ハナカさん!あんま変なことさせないで!!!!!!」
そんな声も儚く消えてパシャパシャと音が聞こえる。
「そんじゃ次にミサがー」
「え?ちょっ、私もー?」
温泉から上がり、定番のコーヒー牛乳を飲む。
しばらく待ち、女子御一行が暖簾をくぐる。
「はー、気持ちよかった〜。」
「楽しかったね!」
皆とても血色がいい
「ちょっとハナカさん?何してたの?」
「んー?見たい〜?でもな〜ワタル君すぐ消しちゃうし……。」
「別に見たかぁねぇーよ」
ハナカさんは目を丸くし
「あら、そーお?」
部屋に戻り小休憩していると呼び鈴が鳴った。ヨリエさんが顔を出し、
「お食事でございます。」
とお盆を持って来た。
料理を見るなり目を輝かせる。
一口食べただけでマキは
「んー♡ほっぺたが落ちちゃいそうです。」
ひと通り食事を済ませるとマキが
「ホテルの中を散策して見ません?」
「そうするか、まだほとんどここ知らないし。」
ある程度周り、売店に着く。
「トランプ買いません?」
「トランプなんていつ以来かなぁ?」
とコノミ
部屋に戻るとすでに布団が敷かれていた。
大富豪でボロ負けしたルピは
「オッケーっすよ!ポーカーなら負けないっすよー!」
そう言ってポーカーを進める。ルピは序盤からストレートをかましていく。
「よっしゃー!一人勝ちっすね!」
次にフラッシュ、フォアカード、フルハウスとハズレなしの結果に終わった。
「おやすみー」
そう言って電気を消す。すぐに眠りについた。
あれからどのくらい時間が経っただろう、下っ腹に圧がかかっていることに気付き目を覚ます。目を開けるとそこにはマキが座っていた。
「ワタル君、みんな寝てるから、ね?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます