第3話 俺がご主人様だ
クローゼットの中の中から天使?でもなんで?これが【君のままで】の続きなのだろうか?
「んん、、、いってててて、、、、、」
うおっ!日本語喋ってる‼︎
「ど、どちら様ですか?」
質問がおかしいだろと自分にツッコミを入れつつ質問を続けた。
「大丈夫ですか?」
なんとかしなきゃいけないことは分かるが、オロオロするだけでどうすることもできない。そのうちドアをノックする音が聞こえ、ドアの向こうからは
「おにーちゃん、おっきい音したけど、どうかしたの?」
「大丈夫だ。お兄ちゃんには問題ない‼︎」
『って違うだろ‼︎なぜヘルプを求めない!』
人はテンパると何をしでかすかわからないとはこのことだ。
「そう?それなら戻るけど。」
ああ、もう助けは呼べない。そう絶望した時、倒れていた天使が突然、むくっと起き上がり、目が合った。
「あの、大丈夫ですか?」
二度目の質問。それに応えることはなく、天使は部屋の扉めがけて駆け出した。
ガチャ
「え?あ、え?」
扉の目の前にいたコノミは、大好きな兄の部屋から知らない女が出て来て反応に困る。それもしょうがないことだ。
「コノミ!その娘捕まえて!」
兄からの命令に忠実に従う妹。健気に抱きつき、天使の動きを止める。
「わかった!わかったから!もう逃げないから放して!」
と言って天使が必死に抵抗する。
腕を引っ張りやっとの思いで部屋の中へと連れ戻す。
俺とコノミと天使の三人出て部屋の真ん中に輪になって座った。最初に口を開いたのはコノミだった。
「おにーちゃん、このおねーさんは誰?」
「いやぁ、知らん!急にクローゼットの中から大きな音がして開けてみたら」
「私、天界から来たの。本当は三次元のとある人の使いになるために下界に下りるための
階段を下っている途中だったんだけど……」
俺の言葉を遮るようにして言葉を放った。
「もしかしてこの人、おにーちゃんの彼女?だとしらやめよーよ。相当危ない人だよ。」
「違う違う!俺に彼女はいない!」
涙を目に浮かばせたコノミを見て必死になって否定した。妹を泣かせるような兄は失格だ。
「で?どちら様ですか?」
と、質問をもう一度、確認するようにしっかり、ゆっくりと聞き返した。
「さっきも言いましたけどー、私は天使です。下界に下りる階段を下ら途中で落っこちちゃってこの世界に来たの!」
「それなら天使だよっていう証拠を見せてくださいよー!」
よくぞ言ってくれた。我が妹よ。
「それならこの腕輪に」
と言って腕輪の上で謎の紋章を描く。するとたちまち強い光に照らされた。
その後光がおさまり、天使が手にしていたものはアーチェリーの競技に使われる大きな白と青の弓、それに先端がハートで出来た可愛らしい矢がかかっていた。
「わわわ、危険物はよしてください〜‼︎」
弓を見るやいなや、焦った表情で懇願する。
「危険物じゃないよ〜」
と軽く受け流し、
「これはキューピッドの弓矢!好きな人を近付ける道具なのである!」
ドヤ顔で天使が説明する。そしてそれに目の色を変えるコノミ。
「じゃあ、天使さんで間違いないんだね!」
「そう!私の名前はルピ!あなたたちの名前は?」
「私は高橋コノミ。ささらぎヶ丘高校一年生です。よろしお願いします。そしてこちらが私の兄の。」
「さと、高橋ワタルです。」
やはりどうしても出て来てしまう佐藤榊という本名を明かしてしまいそうになる。
「私、本当は三次元のご主人様の元で暮らすことに決めていたんだけど、意味不明なとこに来ちゃったから住むとこないんだよねー
誰か私を住まわせてくれないかなー」
「やけにあからさまだな。どうする?コノミ?」
「おにーちゃんがいいなら私は反対しないけど。」
さっきのキューピッドの弓矢の一件でコノミの意見はあきらかに賛成派と傾いていた。
「しょうがない、困った時はお互い様だからな。」
「イェーイ! やったー!神様意外と二次元の人はちょろいみたいですよ!」
「ハー……」
そこで妹が質問して来た。
「おにーちゃん、ルピさんは何言ってるの?ここは三次元だよね?二次元じゃないよね?」
『はぅぅっ‼︎バレるこ、これはなんて言い訳を……』
「ルピ、ちょっと話がある。コノミ、一旦部屋から出てくれ。」
コノミが兄に対して忠実でよかった。俺が一言言っただけでしたがってくれた。
部屋には2人きり。俺はなるべく声をひそめて
「ルピ、ここは二次元だ。わかるな?」
「はい。わかりますとも!」
自信ありげに胸を張り、大きな声で喋る。
しっ。と人差し指を唇にあてる
「でもここの世界の人は自分達の生活している空間を三次元と錯覚しているんだ。」
「それならなんでワタルさんはここが二次元だって知ってるんですか?」
「話せば長くなるが要点だけ抜き取って話そう。」
と、俺は佐藤榊だった頃から話し、ここが三次元だという設定にしてくれないかとお願いした。ルピもどうやら納得してくれたようで、話が終わったと思われたが、話が一変した。
「ワタルさんが三次元でのご主人だったんだー。」
「え、ん?」
耳を疑った。急に三次元の俺すなわち佐藤榊がルピの辿り着くべきご主人様だったと言われ、驚きを隠す暇もなかった。
「よろしくーご主人♪まあ、奇跡的にご主人に出会えたから、おーるおっけーですね。」
と、1人勝手に話を進めるルピ。
「おい、俺は一切天使を使いに雇った覚えなんてないぞ⁉︎」
そう聞くと
「全ては神のみぞ知る♪まあ安心してくださいよ。ご主人の生活は私がフォローしますからね。」
と、それだけ話し、ルピはコノミを呼んだ。
コノミは、部屋に入るやいなやルピに詰め寄り、コソコソと何か言っている。
突然ルピが矢を俺めがけ打って来た。得意の反射神経を活かしてギリギリで止め、投げ返す。先端のハートがルピに刺さる。
すると少しずつ頬を赤らめていき、モジモジし始めた。
「んん……ご、ご主人様ぁ♡」
甘くとろけた声で俺を呼び、胸元に頬をすり寄せてくる。
「ご主人様の心臓、こんなにドクドクいってる♡緊張は身体に良くありませんよ。」
そんな密着度100%の2人をようやく引き離したのはコノミだった。
「やめてよ、おにーちゃん。私、さみしいよ……。」
と、言いつつコノミも半べそをかきながら俺の腹に腕を回してくる。
「お前ら一回落ち着けえええ‼︎」
その一言で、コノミもルピも定位置に戻った。しかし、先ほどよりも熱い視線が2人から放たれていることはよくよく分かった。
「ルピ、お前はどこで寝る?残ってんのはトイレと廊下と庭ぐらいだぞ?」
「私はご主人様と一つのベットを共有することを望みます。」
ルピがそういうとコノミは
「それなら私だってそうだよぅ。おにーちゃんと同じベッドに寝たいよ。」
「だあぁー!分かった。とにかくみんな一緒に寝よう!それでいいだろ?」
「「はい♡」」
そこで下から風呂の湧き上がったことを知らせるメロディーが、聞こえてくる。
「誰か先に入るか?」
2人はモジモジしている。
「それなら俺が入るかな?」
「おにーちゃんが入るなら私も入ろうかな。」
首を少し傾け上目遣いになり甘えてくる。
「あっ、コノミちゃんだけずるいよ私もご主人様の使いとしてお背中を流す必要がありますもの!」
2人の言い争いを止めるためにもバシッといってやった。
「風呂ぐらいゆっくりさせろぉ‼︎」
風呂場
ふぅっと、一つため息をつく。
「ようやく1日が終わったよ。いろんなことが1日でこんなに起こるとは、ラブコメの主人公の精神力ってどうなってるんだ?」
そこでドアの向こうから声が聞こえた。
「おにーちゃんの洋服、扉の前に置いとくからね。」
声の主はコノミだったらしい。
「オッケー。ありがと。」
少し間が空き、再びコノミが声を発した。
「ルピって人。おにーちゃんの彼女じゃなくて嬉しかったよ。」
それだけ言うと脱衣所から出ていってしまった。
風呂から上がると、既に布団が用意されていた。
「三人で寝るのには少し狭いかと思って、布団、しいちゃった。」
相変わらず視線が熱い。
「私、入って来ちゃいますね?」
と言っておもむろに服を脱ぎ始めた。
「ちょっ、ちょっと待って、服は脱衣所で脱ごうか。」
半ば強引に連れて行き、脱衣所のドアを開けると、
「ヒャッ」
コノミが脱衣の途中だった。ルピを力強く脱衣所に押し込み、いちもくさんに部屋へと向かう。
しばらくするとコノミとルピが仲良く部屋に入って来た。それと同時に美しい土下座のポーズを作り
「すみませんでしたあ‼︎」
渾身の力強い謝罪にコノミはイイヨイイヨとなだめてくれた。
コノミがウトウトし始めたのでそろそろ寝るかと誘いかけた。
一番端の布団に倒れこむと、
「ご主人様?どこでねてるんですか?ご主人様は真ん中の特等席じゃないですかぁ♡」
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