第4話 愛にオーダーなんて要らない
『こっこここここんなコトになるとはぁ……』
三人の密着度は既に100%を振り切っていた。
「んんぅ…おにーちゃん♡」
「ご主人様ぁ♡」
2人は俺の両腕に抱きつき、細い身体をすり寄せてくる。
頭に血が上り、眠気が来る気配など一切なかった。
日が昇り
「一切眠れなかったよ。お前らのせいで
な。」
くまで暗くなった目の下を擦りながら眠り続けるコノミとルピに向けてつぶやく。その声で目を覚ましたのはルピだった。
「ご主人〜。どうかしたんすか?」
その口調は明らかに寝るまでのルピとは違い、クローゼットの中から出て来た時の口調と完全一致だった。
「ってウワッ‼︎なんで私がご主人と寝てんの⁉︎」
「なんでもなにも、お前が一緒に寝たいって言い出したんだろ!」
「ないないないない!ゼッタイないぃ‼︎」
ルピは驚きを隠せず両手を広げてワタワタする。
「昨日のこと覚えてないの?」
「覚えてないとかわけわかんない!私はただあんたの妹だかなんだかに指示されたとうりにキューピッドの矢を打って……」
と言ったところで言葉に詰まり下を向く。
「打って……。打って……。ぁああああ‼︎‼︎
もう!思い出させないでくださいよ‼︎」
ルピに投げ飛ばされた枕が俺の顔めがけて迫って来た。
「ってえ!なにすんだよいきなり‼︎」
強く俺を睨みつけて
「なにもしてないでしょうねぇ‼︎」
「なにもってなんだよ。」
再びうつむき
「例えばそのぉ…えっちな感じのこう、
その。とにかくそういことよ‼︎」
「俺はなんもしてねえよ‼︎てかそっちがして来たんだろ!身体をすり寄せてきたりとか!」
ルピの顔が真っ赤になり、
「ムリムリ!てか詳しく説明しないでください!きもっちわるいです!」
「一回落ち着け!廊下に出て頭冷やそうぜ。」
なだめるようにしてルピを廊下に連れだす。
「はい!しんこきゅー。吸ってー。吐いてー。」
それに従い呼吸を整えるルピ。様子を見計らい、言葉を連ねる。
「いい?今の話は一回やめにしよう。まずは俺がお前のご主人だということだ。お前は俺に使えるということだったよな?」
「ええ、そのとうり。だからと言って好き勝手やっていいってわけじゃ無ですから!」
「それはわかってる。そしてもう一つ。お前が使えるご主人である俺は三次元の普通の男子高校生だ。つまりだ。お前も本当は三次元に行くつもりだったんだよな?」
「だからそう言ったじゃない。最初。」
そこで一旦間を開けて
「それじゃあさ。一緒協力して三次元に戻ろうよ。」
少し顔色をうかがうとルピのめは輝いていた。
「おお!ご主人ナイスアイディアですねぇ。つってもどうやるんですか?」
「そこは2人の知恵を出し合ってだなぁ…」
「まあ、なんとかなりますよ!きっと!」
AM. 11:32
突如、来訪者を知らせるチャイムが鳴る。
「はいー。どちら様でしょうか?」
インターホンに向かって話す俺を見るやいなルピは
「とうとう独り言を言うようになったか…
末期だな。」
とボソボソ呟く。
「すいません。私です。ハナカです。」
ドアを開けると、薄手の長袖Tシャツにジーパンを履いた委員長が立っていた。
「予告してたとうり、お料理を作りに来たよ。」
これは弱った。コノミは問題ないと思うが、
ルピが見つかったらややこしいことになるぞ…
「少し待ってて、今ちょっと部屋片付けて来るから。」
「あら、それならかまわないよ。」
と言って家に帰って上がろうとする。
「とにかく待ってて。終わるまで家の中、覗かないでね。」
と念を押す。
猛ダッシュでリビングに戻り、ルピに事情説明を済ませた。急いで階段を登らせている時、人影が見えた。もしやと思い、振り向くと、ドアをすこしあけて、こちらの様子をうかがうハナカと目が合った。
「その羽触ってもいい?」
サワサワ、サワサワ
「かわいいー♡」
ハナカはルピに興味津々で触りまくる。
「ワタル君!この天使ちゃんはだあれ?」
「私はルピ。ご主人の使いとしてやって来たんだー。」
「おいルピ!人前でご主人って呼ぶな。気持ち悪いだろ?てか委員長はオカシイと思わないの?こんな天使とか自分で言っちゃってる人が同級生の家にいて!」
ハナカは少し深めに息を吸い、
「私はもっとビックリするような体験してるからなぁ〜。あんま驚かないや。」
と言うと、キッチンへ向かって歩き出す。
それに俺はついて行き、
「一応、昨日買い物に行って来たから大体のものは揃ってると思う。」
「私、ワタル君ならきっと買い物に行ってくれてるだろうなぁって思って、買い物してこなかったんだ。」
胸の前でピースサインを作る。そこで階段を急いで下って来る音が聞こえた。
「ハナカさんっ」
パジャマ姿でも目がギンギンに醒めているコノミが大興奮で現れる。
「今日は美味しいお料理お願いします。」
PM 12:47
「じゃーん♪」
食卓に出されたのはハンバーグだった。
「「おいしそー」」
2人は目を輝かせながら声を揃えて言う。
ナイフで切った瞬間に溢れ出る肉汁、噛むとほつれ会う肉の繊維、美味しい以外の言葉を選べと言われても不可能なほど美味しい。
「ごちそうさま。」
一同、満足そうな顔をしている。
「それじゃあ、またね。」
と言って別れを告げたハナカはそのあと、俺
に顔を近づけて
「何か隠してるでしょ?もしも不安なことがあったら教えてね?」
耳元でささやいた。
月曜日
「おいワタルぅ!てめえ何勝手にハナカさんのこと家にいれてんだよぉっ!」
教室に入るやいなや、とてつもない怒号が聞こえて来た。声の発信源はショウマからだった。
「お前は俺の恋心を踏みにじりやがったぁ!」
「あ、あぁそうなのね…」
なんと反応すれば良いか困り、拍子抜けな態度を取ってしまった。それにさらに興奮したショウマは
「よし!もうわかった!勝負しろ俺と!」
「はぁ?」
「どっちが先にハナカさんを振り向かせることができるかだ‼︎」
ショウマのあまりの熱意に俺は断ることができず承諾した。俺の勝ちは目に見えてるけど。
そんな一連の流れを教室の扉の影でミサが聞いているなんて知らずに、俺らは話し続ける。
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