第30話 イタズラゴコロ

 学校に行くと、ミサが大股でルピに歩み寄る


「ちょっとルピ。あんた何、人の部屋勝手に

 物色してるわけ?それとワタル!あんたね、ルピと一緒に住んでんだからそういう一般常識ぐらいは教えなさいよね」


 思いの丈を思い切り吐き切り、スッキリした表情でさっと立ち去った。

 俺らは何も言えず、そこに立ちすくむことしかできずにいた。

 突如後ろから目を覆われ、


「だーれだ!」


 と、可愛らしい声が聞こえる。


 ーー声だけで分かるわ!マキだろ?まったくもう。かわいいな。


「簡単だな。お前はマk……」


 そこまで言って少々考える。


 ーーいや、待てよ?マキはやたらと小柄で俺の身長には届かないはず。アンドロイドだとしても、背を伸ばす機能もなさそうだし……


 思考を巡らせていると耳元でマキの声がする


「私だよー。いっつもワタル君の側にいる私だよー」


 その声が逆に俺を混乱させる

 我慢できずにバッと振り返り、視線の先にハナカに抱っこされているマキがいた。


「つまりはこういうトリックでしたー」


 マキの体からひょっこり顔を出したハナカが言う。

 こうしてみると、少しリアルな人形を抱いた少女に見えないこともない。


「あ〜っ。今マキちゃんのことお人形さんみ

 たいだと思ってたでしょ」


 忘れていた。ハナカには読唇術があることを。


「え?私お人形さんみたい?そんな、ひどいですぅっ」


 両手で顔を抑えてウワーン。ウワーン。と棒読みで泣くマキの頭を撫でるハナカがジトッとした目でコッチを見る


「ウワー。ワタルくんがマキちゃんのこと泣かせちゃったよー(棒)」

「いや、いい意味で、いい意味でだから。ほら、マキは可愛いし!」


 何を言ってもマキは聞いてくれない。


「なんなら、俺のお人形さんにしたいなぁ!なんちゃって……」


 先ほどから少し集まってくる野次馬の人たちが凍りつく。


「え?やっぱりワタルってそういう感じのヤバイ人なの?」

「聞いた話だとB組のルピちゃんにご主人様って呼ばせてるみたいだぜ」

「クソッ!女に囲まれやがってコロし

 てやr……」


 群衆の声が鋭く心に刺さる。

 むくっとマキが顔を上げ、


「ワタル君、流石にそれはヒキます」


 ブチッと俺の頭の中で何かがキレる音がした


「正解は。正解はなんなんだよー‼︎」

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