第1話 現世との別れは突然に
放課後の教室にて、
響く掛け声は部活動の団体からだろうか。
窓からはオレンジ色の日の光が差し込み、ま
ぶたをくすぐる。
そんな中、少年が2人。1人は小難しそうな小
説を片手に、もう1人はよくあるラブコメも
のの漫画を読んでいる。
「なーんかなー、やになっちゃうよな〜
視線は漫画に向けたままラブコメ好きの佐藤榊は呟いた。
「どうした?ササキらしくないじゃん。」
小説から顔を上げた秦大和が一言そういうと、
「だってさー。この 君のままで。 っていうラブコメの主人公はなんの取り柄もないくせしてハーレム作って、ルックスのいい俺は女子から見放されるんだ?いいよな〜。」
そうササキこと佐藤榊は根っからのナルシストである。
「まぁ、お前のルックスの良さだけは認めよう。だが問題はお前のその性格だ。下心丸出しのナルシスト。オマケに虫が苦手とか女子が引くのも間違いないだろ。」
秦大和が冷静な見解を述べると、その言葉にうな垂れるように机に顔を伏せる榊。
その後三泊ほど空き、大和のポケットの中から軽やかなメロディが流れてきた。旋律は、よく耳にする。携帯の着信音だ。それに応じた大和。です。ます。調のところを見るとどうやら話しているのは母親らしい。しばらくすると大和が
「ごめん、帰んなきゃ。」
せかせかと準備を進める大和とは正反対にのんきにあくびをこぼす榊。
コートを着終わり、教室の戸の前で
「じゃあね。 また明日。」
という大和の声を聞き、ようやく顔を上げる榊。
「んー。また明日ねー。」
と軽く挨拶を返す。大和はその返事を待たずして帰ってしまったようだ。
「さて、話し相手もいなくなったし。俺も帰りますかねー。」
独り言を言いつつ速急に帰り支度を終わらせる。
家までの駅にて
駅のホームに入ると、やはり初春の冷たい空
気が流れている。
ホームには三人しかいない。若いお母さんとベビーカーの中の赤子、それと自分だ。赤子が泣き出してしまっても母親は興味すらなさそうに冷たい色の液晶画面に縦線を描くように指を滑らせている。
『まったく。少しは子供の面倒見てくれりゃあいいのに。』
そうは思うもののその母親には思いも伝えることができずにいた。
そんな中、急に強い風が吹く。それまでベビーカーにかけられていた母親の手がフードへと伸びた。そんないろんな状況が重なり合い、ベビーカーがひとりでに動き出す。母親は気付かない。榊がそのベビーカーを見たのは動き始めてから2秒後。
『マズイ。』
というセリフよりも先に体が勝手に動き、すんでのところで止めた。と、同時に不可抗力により線路内へと落ちた。最初に衝撃が加わったのは眉間だった。
顔を上げるとそこは教室だった。
「へ?」
自分でもわかるほど間抜けな声を出してしまった。
「どうした?寝てたのか?」
と、目の前の見たことのない男子生徒にきかれた。そいつはずっとケタケタと笑っている。
少し見回して、そこが自分が通っている高校とは違うということがわかる。周りの生徒が制服やセーラー服ではなく、全員ブレザーだということ。教室の内装。周りの生徒。とどれもこれもが違った。
が、何処かで見たことがある。見覚えがある。そんな思考がぐるぐると頭の中で回る。ふと、さっきまで読んでいたラブコメのワンシーンが脳裏に浮かぶ。それによく似ているのだ。このブレザーも。教室も。目の前の生徒は確か和賀ショウマとかいったっけか。などと考えていると、
「エ⁉︎エえ⁉︎」
驚きを隠せずに思わず立ち上がってしまう。
周りの生徒がこちらを見る。そんなの気に留めずに自分の身体をなんども触り、確認する。
「お、おい。何寝ぼけてんだよ」
と、ショウマが驚いたようにツッコミを入れ
る。
『俺、頭うった拍子にショックでおかしくなったのか⁉︎』
焦りお抑えつつ、
「あ、ああ。大丈夫・・・・・・」
ヨロヨロと椅子に座り込む。
『一体どうなってるんだ??』
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