第28話 trade experience

俺の居場所は二次元にしかないようです27話目


「それじゃあ帰るから。次帰ってくるのは正月、かな?」


サクラを見送りに、俺とコノミ、ルピは空港へ同行する。


「うん。またね。おねーちゃん……」


別れを惜しむコノミの両手を掴む。


「また帰ってくるから。そんなくらい顔すしない!笑顔で見送って、帰ってくるときに、笑顔で迎えてよ」


ーーこの人、たまにはまともなこと言うんだな。


サクラは俺の髪をワシャワシャっと掻き、


「ワタル君もおチ◯チン成長させて待ってなさいよ!」

「うっせえやめろ‼︎」


最後にルピの前に立つ。


「ルピちゃんにはー……。特に言うことはないわね」

「私は文句しかないっすけどね」


見るからに不機嫌なルピを完全無視し、


「よし。行くか」


サクラの背中に向かって。


「行ってらっしゃい」

「もう二度と帰ってくんなっすよ〜」


各々の気持ちを贈る。

家に帰ると、さっきまでとは打って変わって部屋は静寂に包まれていた。

ピンポーン


ーー誰だ?昼時に来る人なんていたっけか。


「はいー」


とドアを開けると、ミサが立っていた。


「サクラさん。帰った?」

「帰ったけど、どうかしたのか?なんか用が

あったらまだ携帯使えると思うけど……」


ミサは俺を少し押しながら、家に入る。


「そんなんじゃないわ」


二階へ上がり、俺の部屋で話す。


「んで?なんで来たの?」

「暇だったから来ただけよ。イヤとでも言いたいの?」


暇という単語にルピがヒットする。


「暇なんすか?ミサちゃん暇なんすか?」


ニヤニヤしながらンフフ〜と、手首を前に突き出す。


「そん時にゃ、この腕輪の出番っすよ」

「その腕輪がどうかしたの?」


ミサはその腕輪の持つ能力を知らないため、興味津々に尋ねる。


「説明しよう‼︎この腕輪には特別な魔力がかかっていて、この上で紋章を描くと魔法が使えるのだ‼︎」

「でもルピ、お前その腕輪の使い方しらねぇだろ」


俺は鋭いツッコミを入れるも、ルピの勢いが治ることはなく、


「そんなんテキトーに描けばいいんすよ。こうやって」


適当にグチャグチャっと紋章を描くと、あたりはたちまち光に包まれる。

俺はさっきまで確かにルピのことを右側から見ていた。だが、俺は今、ルピのことを後ろから見ている。

グルリと辺りを見回すと、ルピ、ミサを捉え、次に見えたのは俺、ワタルの姿だった。


ーーなんだ?なんで俺は俺の事を見てるんだ?


「え?なんで私がルピの姿になってんのよ!」


ルピが驚くが、その口調は明らかにミサのものである。


「うおーっ!私が私を見てるっすよ」


ミサが物珍しそうにルピを見る。


「何?何が起こったの?」


俺が俺に近づいて来る。


「なんだ?なんだなんだなんだ?」


俺が後ずさりすると、やけに細い脚が目に入る。

俺は部屋に置いてある姿見で全身をくまなく見る。


「コノミだ……。俺、コノミになってる……」



「「俺たち、入れ替わってるーっ⁉︎」」



※※※※※※



「一旦状況を把握しよう」


みんなを部屋の中心に集めて会議を始める。


「まずは人物把握から。コノミは誰だ?」


俺コノミが手をあげる。


「私、コノミです」

「それじゃあ次、ミサは?」


ルピ(ミサ)が手をあげる。


「私よ。私はルピになったわ」

「最後、ルピは?」


ミサ(ルピ)が手をあげる


「わたしー!」


一応全員分、メモを取る。


「OK!次は、どうやって元に戻るかだな」

「そうよ!ルピ、あんたがやったんだから責任とりなさいよ!」


ルピがペコペコと土下座をする


「この度はーっ!我が県のみならずーっ。

ははぁーん‼︎誰がねぇ、誰になったっておんなじやおんなじや思ってーっ!やっと議員になったんですーっ!」


軽く締められる


「最初、ルピがおにーちゃんにメロメロになった時、キューピットの矢の効果は一晩で治ったよね。それなら今回も一晩明ければ治るんじゃ……」


ーー冷静な見解をありがとう!我が妹よ!


「そうね、それを願って見るのも1つの手かもしれないわ」


ミサ(ルピ)を締めていたルピ(ミサ)の腕が緩む


「なんか、君◯名は。みたいっすね。」

緩んでいた腕が再び強く締め上げる


「ギブギブギブギブ‼︎」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る