第14話 虎視眈々

「ワタル君、みんな寝てるから、ね?」

「え? ナニヲサレテイルトデスカ?」

 し〜。と俺の唇に人差し指をくっつけるマキ

「 みんなが起きちゃうでしょ? この状況を見られたら、みんなどんな反応をするのかなぁ〜?」

「グッ……」

 マキが両手両足を床につけ、四つん這いの状態で俺の動きを止める。

「もう逃げられないよ? 私の愛おしいワ・タ・ル・君♡」

 背中にマキの細い左腕が滑り込み、右腕が寝巻きのシャツの中に入る。

「おい、やめろよ。」

 小さな声で抵抗するも、マキには聞く耳が無いようだった。

「もう! こんなに汗ばんじゃって。 これじゃあ温泉に入った意味ないでしょ?」

 片手で器用にシャツのボタンを外され、半裸になった俺の身体に顔を近づけ大きく息を吸い込む

「はぁぁ、ワタル君の汗の匂い。 身体がどんどん熱くなって、ワタル君の全部が欲しくなっちゃうよぉ」

「マキ、そろそろマジにやめようか。 これはヤバ」

 そこまで言いかけたが途中からマキが小さな舌をつかい、チロチロと身体を舐め始める。

「ひゃんとわたひがきれーにしてあげるはら」

 上から首、胸、腹を順に舐め終える。俺を抱きしめ2人でくるんと回り、俺がマキに覆い被さった。

「今度は私がきれーにしてもらう番」

「はい?」

 俺は即座にその言葉の意味を悟ったが、全くもって反応できなかった。そんな中、マキは1人寝巻きのボタンを最後まで外していく。

「私ねぇ。 いっつも上の下着つけない派なんだ〜。 だからね?この布を取ればもう、見えちゃうってこと」

 今すぐ逃げ出したかった。だが、逃げるとしても何処へ?音が立つのは仕方ないが、それによってハナカさんたちが起きたら完璧にやばい。

「ワタル君。 私のパジャマ、脱がして? ナマの私を見て?」

 ええい!ここはもう引けねえ!押して押して押しまくってやる!!!!!!

 一枚の布をヒラリと指先でめくる。そこから現れたのは、やたらと白い。白蠟めいた真っ白な肌だった。肌には全く問題ない。

 ただ、体の作りが妙なのだ。腹で何かが緑、黄色、青と交互に光っている。

「実はね? 内緒にしていたことがあるの。」

 ゴクリと唾を飲み込む。

「私ね? 実はアンドロイドなの。 それも超高性能の。 それを知らせるために、今晩のこの作戦を決行したんです。」

「でも、なんで俺にそれを知らせる必要があるって言うんだ?」

「それは、あなたが今回のターゲットだからです。」

「へ?」

「あなたは今、トランスしている状態だよね。それをサポートするために送り込まれたのが私、アンドロイド 入江マキなのです。」

「えっと、と言うことは推測するに君はマサヒコさんのところから来たのかい?」

「うん! そのとうり!」

 マキはニコッと笑った後、自分の布団に戻った。

「えっ? ちょちょちょ、ちょいまち。 もう寝るの?」

「うん。 そうだけど。 伝えたいことも伝えたし。 もういいかなぁって。 あ! それとももっと続きしたかった?」

「んなことねえよ‼︎」

「そんじゃあおやすみ〜」

「はいはい、おやすみなさい」

俺も布団に入って目をつぶった。

 身体をゆさゆさと揺さぶられる。

「んん……。 どうしたぁ?」

「どうしたじゃないわよ! あんたが避けないと私が起きられないのよ!」

「なんだミサか、俺まだ眠いし先に朝風呂行っちゃって……。」

「何寝ぼけてんのよ!」

 頭に大きな衝撃が走る。

「痛ってぇなあ! 分かった、起きるから。」

 目を開ける。何やら柔らかいものが鼻を押す。

「おぉ、柔らけぇ」

「ふざけないで、とっとと避けなさいよ!」

 ゴロンと身体を転がされ、ミサの上から落ちる。

「あー重かった。 あんた寝相悪すぎ! 今日は1人で寝なさい!」

「ごめんごめん」

 眠い目をこすり、ぷんすか怒るミサをなだめる。

「おにーちゃん。 今日は私と寝よ?」

 コノミが俺の腕を組み、まるでミサに見せつけるかのように言う。

「そうだな! 今日はコノミと寝よう」

 俺もコノミに便乗してミサに見せつけるが、ミサはクールに立ち上がり

「とにかく今から朝風呂に行くから。 ハナカとマキはルピを連れて先に行っちゃったわ。 あんたも早く準備を進めなさい。」

「分かりましたよ〜。 ミサも先に行ってどうぞ〜」

「分かったわ。 先に行ってるから。 朝食の時間に遅れないでよね? いこ。 コノミちゃん」

 ミサはとを閉め、大きなため息をつく。

「ミサさんって、おにーちゃんのこと好きですよね?」

 すぐ横から囁かれ思わず身体をビクッと身体を揺らす。

「な、何を急に?」

「いやぁ、前々から気に少しなってたんです。」

2人は歩みを進めながら話す。

「そんなこと言ったらコノミちゃんだってあいつの事スキってオーラ全開よ」

「ンフフ。 おにーちゃんは私の自慢ですから」

「えぇ? どんなところが?」

「優柔不断で情けなくて。 頼れない上に特技なんて影絵で鳩をいいバランスで作れる事ぐらいしかないけど。 だけど、すっごく優しくて。 心が広くてみんなを幸せにすることができる所。かな?」

「ふふ。 確かにそうね。 学校でも目立って何かできるわけでもないのになんかいい立場に立ってること多いし」

 そこでハナカは振り返り、

「私も。 ワタルのそんな所が昔っから好きだったなあ」

 そしてまた2人で歩き始めた。

 その頃ワタルは、

「誰のだよ! てか何で俺のに入ってんの?」

 自分のバッグから女性ものの下着が出て来たことに困惑しているのであった。





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