第7話 夕焼けと決意

「わかりました。だったら私はワタル君に振り向いてもらえるまで諦めませんから‼︎」


 この瞬間に確信したのは、マキさんのいしはマジだということだった。


「私はアタックしてアタックしてアタックしまくります!」


 そう言って何か考えているかのようあごを手で撫でながらブツブツと呟いている。



 家路


 アタックしてアタックしてアタックしまくる、かぁ…頭の中で言葉がグルグルと巡る。

 愛してくれるのは嬉しいんだけど愛がいろんな人からいっぺんに来るもんだから…。


「おにーちゃん♡」


 急激に背中への圧力が


「一緒にかーえろ!」


「お、うん。そうだな」


 後ろを振り返ると、コノミがしっかりと連れて来ている。ルピを。


「はあぁ……。やっぱりルピと一緒か。」


「ワタ君、そんな言い方ないっすよー!」



 自宅


 コノミが料理をしている間、俺とルピは部屋で三次元に戻る計画を話し合っていた。


「まず、俺とルピ、それぞれにできることをあげていこう。」


「そうっすねー、、、まずはご主人にできることはありませんか?」


「え?俺はねー、うーん、」


 悩みに悩んだ末、出た答えは、


「ナイ。」


「知ってました。どーせご主人にできることなんて、部屋の隅にたまった塵を集めることぐらいだとしか考えてないっすから。」


「おい、ひどいな!だったらお前はなんか出来んのかよ!」


 そんな質問を投げかけると、ルピは待ってましたと言わんばかりに鼻でフッフッフッと笑ってみせた。


「私には最初に見せたとうり、腕輪の上で紋章を描くと…」


「その能力の中に三次元に戻れるものはあんのかよ。」


 ルピは目を閉じてフリーズした。


「おい、無視すんな。」


「ところでご主人、私は三次元に行く最中の階段から落っこちてここに来ました。それでは、ご主人はどうやってここに来たんですか?」


「え?んんと…。俺は電車のホームから頭っから落っこちて、顔をあげたら教室に…。」


 ふむふむとあごを撫でるルピ


「私とご主人がここに来るキッカケ。その共通点は落ちるという行為です。」


 それだけ言うと、ルピは立ち上がり、ルピと初めて会ったクローゼットへ向かった。


「ここですね、私がたどり着いた場所は。」


 そこでドアがコンコンと音を立て、ドアの向こう側から


「おにーちゃん、ルピ、ご飯だよー。」


 食事中、何一つ喋らない俺たちを心配して、


「おにーちゃんもルピさんも何かあったの?」


「ううん、大丈夫。心配いらないよ。」


 そこで俺らの会話は終わった。



 PM19:56


「おにーちゃん、お風呂先に入って来ちゃうね。」


 俺は人差し指と親指で丸を作る


「ルピー、一緒に入ろー!」


 コノミの元気そうな声が一階から聞こえて来る。



 PM21:14


「おにーちゃん上がったよー」


 その声が聞こえ、勉強を切りの着くまで進めて風呂場へ向かった。

 一通り洗い終えて、湯船に浸かろうとした時、滑って転倒した。その拍子に湯船に頭から入ってしまった。



 目を覚ますと、天井が目に入る。いつも見慣れている自宅の誕生でも、最近慣れて来たワタル宅の天井でもなかった。

 起き上がり、あたりを見回すと、病室だった。この状況から推測すると、自分の乗っているものはベットだとすぐにわかった。

 腕からは、ゴム製の管が液体のパックに伸びていた。

 動き出し、廊下に出ると看護婦さんが目を丸くして、


「佐藤さんですか?具合はどうですか?一旦ベットに戻って待っててください。」


 佐藤さん。その響きに懐かしさを覚える。


「え⁉︎待って⁉︎今佐藤さんって呼びました?」


 そんな俺の声も届かず、看護婦さんはどこかへ行ってしまった。


 指示されたとうりにベットに戻り、テレビにふと写る自分の顔を見て確信した。俺は高橋ワタルではない。

「佐藤サカキに戻ってる‼︎」

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