第6話 ヒトメボレの少女

「いいか?皆んな!俺はそんな趣味持ってね ぇから‼︎それとルピ‼︎ちょっと来い‼︎」

 ルピの細い腕が折れそうなほどに強く引いた。


「痛ででで!」


 ルピが激しく抵抗し、少し手の力を弱めた。


「もう!急になんなんすか⁉︎超痛かったっすよ?あー折れた。これかんぺき折れてますねー。払ってくださいよ!慰謝料ってやつを!」


「イヤだよ!てかなんで俺がお前なんかに慰謝料払わなきゃならねんだよ⁉︎」


 2人でいがみ合っていると、ミサがルピの後ろからぜーぜー息を切らしながら


「ちょっと!探したわよ!」


「あぁ、ごめんごめん」

 とあたまをポリポリ掻いた。


「急に走り出すんだもん!いくら私でも追いつけないわよ!」


 ミサの話を一旦置いておき、俺はルピに向き直った。


「ルピ、お前なんで学校に来てんだよ!」


「だーかーらー!それはご主z…」


「まて!公共の場でご主人はやめろ!イロイロ怪しまれるから。」


「わかりましたよー。そんじゃなんて呼べばいいんすか?」


 そう言われると、なんだか小っ恥ずかしい。


「えっ…。えーとぉー……。」


「そんじゃワタ君で!はい決まり〜♪」

 まさかあだ名で来るとは思わなかったが、


「あぁ、もぉいいよ、それで。」


「ぃヤッター!んじゃ、ヨロシクね。ワ・タ・君」


 なんだその呼び方は…。


 そこでふと思い出し、


「あっ、ミサ。ルピの世話係は学校でも継続

 だからヨロシク〜」


「はっ、ハァ⁉︎そんなの私聞かされてないんだけど!」


「ミサがなにかしたいって言い出したんだろ?言ったことはちゃんと守りましょうね〜」


 と言ってミサに背を向け歩き出す。



 1時間目


 隣にマキさんがいること忘れてた…。てか何⁉︎チラチラこっち見て来るんだけど‼︎スキなの?俺のことスキなの?だったら言えっつーの!それよりも幸せな勘違いであってくれー‼︎心の中で叫び、懇願する。


「えっと、ワタル君でいいんだよね?」


 小さな声で話しかけられた。


「ん?うん。そ、そーだよ。」


 なんで日本生まれ日本育ちの俺の方がカタコトなんだよ!そう自分にツッコミをを入れた。


「あのね、私ぃ、ワタル君のこと好きだよ?」


「??????????」


 一瞬で頭の中がクエスチョンマークで埋め尽くされた。

 反射的に聞き返してしまう。


「エッ?今、なんて」


 ふふっ。と笑い、質問に答える。


「だからね、私、ワタル君のこと好きだよ。」


 うまく行きが吸えなかった。確かにスキならそう言えよと心の中で叫んだ。けど、叶うことであれば幸せな勘違いであったほうが好都合だったなぁ。冷静に感想論を述べる。

 落ち着いたところで俺から質問をする。


「マキさんはなぜ僕に惚れたんd…」


「ヒトメボレというやつです。」


 かなり食い気味に、そして興奮したように瞳孔を開いて返答された。そして俺は質問を連ねる。


「それでは次の質問をします。今の告白を受けて、俺はどうすれば良いのですか?」


「そんなに堅くならなくてもいいですよ。まぁ、その点においていうと、ワタル君とお付き合いして、ゆくゆくは結婚を…♡」


 待て待て待て!話が早すぎる!そんな声を必死に堪える。そこで


「コラコラ、ワタルぅ。いくらマキさんがカワイイからって、お話ばかりしてちゃいかんぞ?しつこい男は嫌われるからなぁ!」


 先生からだった。


 すると1人の生徒が、


「先生しつこいから元カノにフられましたもんね!」


「おまぇっ、なんでそれを!」


 そんなやりとりを横目に、マキから


『また後で、』


 というアイコンタクトがあったのを俺は見逃さなかった。



 食堂


「ハァ、あっという間にお昼だよ…」


 と、一人愚痴をこぼしていると、


「ワータールー君っ!さっきのお話の続きしよ?」


 と、授業中とは打って変わってやけにご機嫌

 なマキが現れ、正面に座った。


「で?決まりましたか?私と付き合っていただけるか。」


 目の前にいるのは超絶美人(見た目は小中学生)だ。しかし、だがしかし、ここでYESと答えてしまったら一体どうなるんだろうか。いろんな支障が出て来ることが懸念される。

 そして、出た答えは。


「結論から言おう。」


 ゴクリッ。自分もツバを飲み込むほど緊張した。


「答えはNOだ。」


「Oh NO〜‼︎」


 と、可愛らしく手で顔を覆い隠し、それらし

 いポーズをとり、質問してきた。


「なぜ、なぜですかぁ?」


 かわいいwwwが、ここで屈することはできない。


「理由はこうだ。まず、出会ってまだ数時間も立っていないこと。それと、僕に君は勿体無い。君ほどかわいい子はもっとふさわしい人がいるはずだよ!」


 キマッタァー‼︎心で強く確信する。

 しかし、次に発せられたのはとても想像し難い一言だった。


「わかりました。だったら私はワタル君に振り向いてもらえるまで諦めませんから‼︎」




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