二 白蛇の祠
それで私は馬渕さんと二人、明け方の御岳山に向かったのでありました。馬渕さんはさすがの
さて白蛇の祠と先生方が呼んでおりました場所は、小さな
「馬渕さん、ここから先こそあなたの領分ではございませんか」
「何を申すか。私は
「
「なればこそ、道中で私が足を滑らせ死ぬわけには参りますまい」
「よもや
「それは君の方であろう。早よう進まれよ」
この調子でございます。私は心の中にてこの男をただ「馬渕」と呼ぶことにいたしました。押し問答はいよいよ
ようやく白みはじめた空と別れて、私たちはまた暗闇へと歩み入ります。まるで岩のごとく硬い壁に片手をつきながら、足元をよく見てひとつまたひとつと進みました。
といいますのも、
いったいどれほどの距離を進んだのでありましょう。私たちの頭を押さえつけていた低い天井が急に上に広く
「暗い!」
着くなり馬渕はそう言い放ち、その不敬なる声は空洞全てに響き渡りました。あまりに大きな声に危うく私は驚いて
「当たり前でございましょう! 大きな声を出さないでください! それよりようやく馬渕さんの領分でございますから、ほら、お願い申し上げます」
「君もずいぶん声が大きいではないか」
馬渕の野郎は始終この調子でございます。しかしふんと一つ息をすると、ようやく私の前に出て
「何をしているのです!」
「声が大きい!」
私よりも大きな声が洞窟全体に響きました。
「な、なにをしているのです…」
「
「だからそれを何のためにやっているのかと問うているのです」
「中を見ねばこれが何かわからぬだろう」
「あなたには神への
「ない」
そう言うと再び石を振り上げて叩きつけます。いよいよその石の
「呪われても私は知りませんよ」
「すでにこの村は呪われておるではないか」
石の
「して
そう呼びかけられ、我関せずと控えていた私もいよいよその
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