二 神の足跡
神の足跡をはじめて見たとき、先生は短くこうつぶやかれました。
「奇なり」
朝の肌寒さもいくらか
いずれ紅葉と名のつくものはこのように進むと思っていた幼少期とは、私もさすがに見る目が変わっておりました。およそ
「あれが
「決して神が病を致すと認めたわけではありませんが、あれが本当に神の足跡なのだとしたら、私はそこにいる神にお会いしてペトリ皿に
私は先生の気の利いた冗談に笑わされました。神を顕微鏡で覗こうなどという大それたことを言い出すのは先生くらいのものでしょう。しかし先生にはそれをすることは許されておりませんでした。
「先生。残念ながら村の
「
先生は神の足跡を見上げたままそう問いました。まるでもうあそこに立ち入ることを決めたようなその口ぶりに、私は驚きと
「昔、山籠りした
そのような話をしていると、その日も同じ時間に喜一郎が姿を見せました。そして喜一郎は私たちに神の足跡についての思い出をひとつ語ってくれました。
「先生方、これは母をはじめ村の方には口外しないで欲しいのですが、僕は以前あの足跡の近くまで忍び込んだことがございます。そこでは
「白い蛇?」
思わず私と先生は声を揃えました。
「はい、真っ白な体に真っ赤な目を持った、蛇でございました。僕はその蛇にただならぬ宿命じみた
私と先生はそれを聞いたはじめには、少し顔を見合わせて考えを巡らせました。
「それは喜一郎、ただ君が蛇を前に小心だったという笑い話と受け取っていいのかな?」
少し考えて私がいうと喜一郎は
それにしても、神の足跡のもつ超越的な魅力と申しましょうか、それが神の名を
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