ブレイクタイム

『まずはおめでとう。と言っておこうか』


 光と共に地面から現れた銀髪の女が、拍手をしながらろうをねぎらってきた。


「……能力取得までの道のり、長すぎるだろ」

『なるべく一つの能力で頑張って欲しいからね。さて、得られる能力について説明しようか。詳細はこうだ』


・私が気に入らない能力は駄目だめだよ。


「……それだけかよ。お前が気に入る能力ってなんだよ」

『よくある能力、だよ』


 そういって意味深いみしんに微笑んだ。くそ、可愛いなこいつ。


「『手からあふれんばかりのコーラを出す――」

『ん?』


 言い終える前に、笑顔で聞き返された。危ない。欲望に負けて自分が一番欲しい能力を宣言するところだった。


「だいぶ戦ってきたからな。〝よくある〟の意味はわかってる」


 そうして、俺は必要な能力を伝えた。すると目の前の女は、腹を抱えて笑い出した。


『あっはっはっはっは……! よくある! 確かによくある能力だ! で、でもまさか、そんなしょぼい能力で戦うつもりなのかい……!?』

「文句あるのか?」

『おっと、悪かった。馬鹿にするつもりはないんだ。ただ、本当に面白くてね。だから、その拳を降ろしておくれよ』

「……」


 能力を試してやろうかとも思ったが、笑いながらも両手を合わせて謝ってきたので、しぶしぶ拳を降ろした。


『あと、おまけで、君が遭遇そうぐうしたいあのチームがいる方角を示す方位磁石ほういじしゃくもあげるよ』


 感謝して方位磁石を受け取ると、主催者は手を振って地面に沈んでいった。赤く塗られた針の示す場所へ向けて歩きだす。


 これで俺は、あいつらと戦える……!



ブレイクタイム 終了

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