第二十四戦 VS回想シーン
「俺の能力は『
「過去を暴く、か。やってみな」
「いいだろう。望みどおりにしてやるよ」
▼▼▼
俺には、名前がなかった。「お前」などの
目的もなく、ただ生き続けてきた。暴力を振るわれることが仕事だった。
成長し、身体ができあがってきた十七歳の夏。鍛えてきた肉体と経験を
勝利と共に、俺は家を追い出された。行く当てもなく、やることもない俺は、やがて空腹で倒れ込んだ。
夢を見た。やることがないなら、バトルロワイアルに参加しろと。学校に所属していないが、学校の近くで倒れていたついでに連れていってやると。
こうして、俺の異能力バトルロワイアルが始まった。
▲▲▲
「……なかなか、悲しい過去じゃないか。だが、俺の過去ほどではない。次は俺の回想シーンだ。悲しい過去に
▼▼▼
あまりにも
しかし、人が人である限り、戦争というものはなくならない。次に争いの
過去の戦争から学んでいた国民は、表立って争うことはなかった。多少の
かといって、それが平和かといったら、国民は首を横に振るうだろう。
表面的な争いはなくとも、やはり、
俺はその中でも幸せな方だったのだろう。そば派でもなく、うどん派でもない
ただ、中学三年生の夏休み。そばとうどん作りに挑戦した俺に、とんでもない事実が判明することとなった。
俺には、うどん作りに対する
それからというもの、うどん派による訪問と電話がひっきりなしにうちにかかってくることになった。
君はうどん派の星になれる。
初めは耳ざわりのいい言葉だけを並べ立てていた。それでも俺が断り続けると、やがて
お前はうどんだけ作っていればいい。そばなんて作る必要はない。そばは害悪だ。そば派に
あることないこと吹き込んでくる大人たち。
俺に、うどん作りの才能があったために。才能が、俺を、両親を苦しめている。
「もう、うどん派になりましょう、あなた……」
「そうだな、うどんは、最高だ……そばは害悪だ……」
ついに両親がうどん派に洗脳された。俺もいつかは、こうなってしまうのかと思ったら、
「父さん。母さん。話があります」
俺は、日本一を誇るそば職人育成のための学園都市。
うどん作りの才能がある俺は、そば作りの才能も少し持っていた。入学試験をなんなくパスして、そば学園の
俺はこの学園では目立たない、一生徒として暮らし、ゆくゆくはこの学園の食堂でのんびり働いて
期待を胸に、学園生活が始まった。
◇◇◇
「うどんとかだっせー!」
「やーい、うどん県! 香川に帰れよ!」
油断していた。この学園でも中立でいられると思ったのが間違いだった。
この学園は日本一のそば職人養成学校。中立派は誰もいなかった。
中立派というだけで、クラスで俺は
それでも、俺はそばもうどんも好きであることをやめなかった。うどんの魅力もあるんだと、頑張ってそば派の生徒たちに伝えようとした。
ことごとく、ひどい扱いを受けた。先生もそば派だから、助けてはくれない。それどころか、白い目で見てきた。まるで空気のように、扱われていた。
「わたし……うどん、食べてみようかな」
学園のアイドル的存在の女の子。学園で一、二を争う
「うん、おいしい。わたし、うどんって食べたことなかったんだ。ほら、うちはそばの名門だから。家が厳しくてね」
そういって、はにかむ笑顔を見た瞬間。俺の心は彼女に奪われていた。初めて、恋をした瞬間だった。
それからというもの、彼女がうどんを食べたという事実で学園中がその話題で持ちきりとなり、やがて俺の
彼女のように、うどんを食べたことがないという生徒が多かったのだ。それもそうだ。そば派の両親が、子供にわざわざうどんを食べさせるはずがない。
「おいしい!」
「うどんもいけるじゃん!」
「でも、私はそばの方が好きかな?」
「あたしはうど――むぐむぐ」
「ばか! この学園でそれ言ったらだめでしょうが!」
「ふむ。これだけおいしいのは、君の才能でもあるんじゃないかな?」
そば派しかいなかった学園に、ちらほらと中立派の生徒が生まれるようになってきた。先生や大人たちは
それからの学校生活は楽しかった。友達ができ始めた。彼女とうどん作りとそば作りを教え合った。学園祭で隣り合った屋台を出し、うどん作りの才能とそば作りの才能で売り上げ人数を
平和。それは長く続かないことが歴史で証明されている。
学園にまぎれこんでいたうどん派のスパイが俺に接触してきた。この学園でなら、安全だったはず。そう、安全だったのはそば派だけしかこの学園にいなかったからなのに。
「中立派を……うどん派に仕立て上げる計画……?」
俺が、間違っていたというのか。俺はただ、うどんのおいしさをそば派の人たちにも知って欲しかっただけなのに。
人は、戦争をやめることができない。人が、人である限り……。
俺を利用し、日本一のそば職人養成学園都市を、うどんで染め上げる計画。
そう、この時はまだ、あの、きのこたけのこ戦争の悲劇が繰り返されるだなんて夢にも思わなかったんだ……。
▲▲▲
「
「ぐぱぁ!?」
第二十四戦 勝利
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