第二十三戦 VS飛ぶ斬撃

 直線状の傷跡が木や地面に見られるようになった。木のみきについた傷を指でなぞる。それは数センチほどの深さを持つ鋭利な傷跡で、きれいな切断面をしていた。


刀傷かたなきず……か」


 やがて、背後から足音が聞こえてくる。距離にして十メートルほど。やつは立ち止まると、ニヤニヤと笑いながら木刀の剣先を俺に向けた。


「よう。テメーの能力ってなに?」

「能力をペラペラとしゃべるわけないだろ」

「けちな野郎だ。ま、能力を披露ひろうする前にオレに斬られて終わりだろうけどな」


 奴はその場で膝を軽く曲げ、腰を落とすと、木刀を横凪よこなぎに振るった。


「――飛ぶ斬撃ざんげきを見たことあるか?」

「ちぃっ!?」


 木刀が振るわれる前に避けたが、高速で飛来ひらいする斬撃がわずかに肩にかすった。肩の部分の服がぱっくりと開き、軽く出血していた。


「『斬撃を飛ばす能力』だぜ。シンプルだけど、サイッコーの能力じゃねぇ!? ヒャッハー!!」


 その場で木刀を縦横無尽じゅうおうむじんに振るい続け、数多あまたの斬撃を飛ばす。避けきれないと判断した俺は、とっさに近くの木のかげに隠れる。木くずと砂煙すなけむりちゅうを舞い、身をひそめた木だけでなく周囲の木々も、地面も斬りきざまれていく。

 この木も長くは持たないだろう。だが、逆に言えば少しは持つということだ。

 剣道少女に比べて、奴は剣の素人しろうとだ。狙いがおおざっぱすぎる。幹のくぼみに指をかけると、俺は木を登り始めた。

 自重じじゅうに耐えられなくなった木が、刻まれた傷跡にそって倒れ始める。奴のいる方向へ、倒れ始める。


「ライダー……!」

「はっ……!?」


 バトルロワイアル会場全体を照らす、夜空で輝く偉大いだいな満月。そこへ、一人の影がさす。宙で一回転したあと右足を伸ばし、左足をたたんで伝家でんか宝刀ほうとうを抜いた。


「キィイイイイイイイイック!」


 落下の勢いに全体重を乗せた、必殺の飛び蹴りを胸にお見舞みまいした。

 奴が地面に倒れると、盛大せいだいな爆発が巻き起こった。


第二十三戦 勝利

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