第三戦 VS特権生徒会

 こんこん、と小屋の扉が軽くノックされ、音が室内に響き渡る。少しして、扉越しに声が聞こえた。


「まずは安心して聞いて欲しい。僕は君を仲間に勧誘かんゆうしにきた」

「……お前の能力は?」

「『生徒会に特権とっけんを持たせる能力』。これでいいかな? 君の能力なら、僕が本当のことを言っているとわかるんじゃないかな?」

「っ……!」


 警戒レベルを最大まで引き上げる。俺の能力が声の主にバレているだと? 能力によるものか?


「僕の能力はまだ発動できる段階じゃないよ。扉を開けるね」


 きい、と木のきしむ音と共に現れたのは、眼鏡をかけた細身の高校生だった。腕に生徒会長の腕章わんしょうを着けている。


「まずは君のあとをずっとつけていたことをびよう。僕の名前は長柄ながられい。君の名前は?」

「ナナシとでも呼べ」

「ナナシ君。君の〝相手に能力を説明させる能力〟は素晴らしい。僕の創る生徒会のメンバー集めには欠かせない能力になる」

「その生徒会ってのはなんなんだ」

「生徒会長、副会長、書記、会計、庶務しょむ。五人の仲間をそろえたとき『特権生徒会』としてバトルロワイアルのルールに介入できるのさ」

「例えば?」

「戦場の縮小。安全地帯の設定。勝利特典の明確化。チーム戦やトーナメント戦への変更。等々とうとう。ちなみに、チーム戦に変えた場合は優勝チームで手に入る能力を振り分ける形になるね。でも僕は、他の能力はいらないんだ。現実世界に持ち帰るのは、この『生徒会に特権を持たせる能力』だけで十分。僕の始めの仲間になった特典として、手に入る能力の半分を得る権利を君に与えよう」

「ルールの変更・追加能力……そして能力の半分が手に入る、か。俺のこの『相手が自分の能力をペラペラとしゃべりだす能力』だけじゃ、まず優勝は無理だからな。かなりのメリットになる」

「だろう? だからぜひ、僕の創る『特権生徒会』に入りたまえ!」

「でも断る」

「なっ、なぜだ……!? 僕のことが信用できないというのか!」

「信用できないんじゃない。誰も信用したくないんだ」


 そう伝えると、生徒会長は神妙しんみょうな顔付きで納得なっとくしたようで、きびすを返した。


「残念だけど、仕方ない。他を当たってみるよ」


 生徒会長が歩き出した所で、後ろから肩を叩いた。


「何だい? やっぱり特権生徒会に入る気に――」

「このまま逃がすわけないだろ」

「やっぱり?」

「ああ」

「降参」

「よし」


 生徒会長は突然現れた落とし穴に落ちて行った。代わりに穴から手紙が飛び出してくる。


『三勝目おめでとう。面白い能力だと思ったんだけどな。わりと早い退場だったね。あ、今回は特に怪我けがもないし、のどかわいただろうからジュースをあげるよ』


 閉じた穴の上には、いつの間にかドリンクセットが置いてあった。


「炭酸飲料は……あるな。よし」


 コーラを手に取ると、プルタブを開けて飲みながら森の中を歩いていった。


第三戦 勝利

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