第10話 恋愛恐怖症

ある日、その女子がわたしの自宅に来ることになった。

わたしの当時のクラスメイト、男女数人を含めて。

当時のクラスメイトだった親しい友達・Yがその女子を誘った...という話だった気がする。

だが、前述のこともあって、その女子が本当に来るのかどうか気がかりだった。

そもそも実在するかどうか怪しい。

とはいえ、これが嘘だと、そんなはずはないという気持ちを捨てきれなかった。

当日は、相当にそわそわしたのをよく覚えている...。

だが、その女子は結局来なかった。


後で分かった真実だが、そのメールの相手は...当時のクラスメイトだった親しい友達、Y本人だったのだ。

その女子のふりしてメールを送ってきたことに始まり、その女子としてメールをやり取りし、わたしをからかい、おとしめた...そのたくらみをくわだてたのだ。

他にも、自分が親しいと感じていたクラスメイトが何人かで、そのたくらみをくわだて、参加していたのだ。

後でネタばらしとして、これまでやり取りしたメールの文面をすべて印刷して、その紙束をわたしに渡して来たのだ。

それを見たことで、わたしは本当にハメられたのだと知り、同時にとてもショックだった。


しかも、タチが悪いことに、わたしの自宅に来た男女はみな、わたしがその女子とやり取りをしていたことを知っていた。

もちろん、そのメールの内容まで知っていたのだ。

あとで、そのうちの女子ひとりにメールで謝られたが...それが逆にショックだったのをよく覚えている。

ああ、あの連中はみな、この事実を知っていたし、知ってて加担したか、あるいは見過ごしていたんだ、と...。


そのことがあって以来、わたしは恋愛恐怖症になった。

他人からの、自分に対しての好意を、素直に信じられなくなったのだ。

すでに書いている通り、わたしは当時から自分に自信がなかった。

そんなわたしが、そんなふうに酷いハメられ方をしたのだ。

人の好意を素直に受け取れなくなったとしても、無理はない。

ちなみに、今でもときどき...女子と遊んだりする時、この子は本当にわたしに対し、本当に好意を持っているのだろうか?と疑ってしまう。

それくらい、悪い意味で鮮烈な出来事だった。


その後、その友人たちに対し、複雑な感情を抱くようになってしまった。

だが、別に絶交したわけではなかった。

絶交してもおかしくはないのに、なぜ絶交しなかったのだろうか...。

理由は思い出せない。

もしかしたら、大人ぶって許してしまったのかもしれない。

今でも、そのYやたくらみに参加していた面々とはときどき会うこともある。


だが、表面上でどんなに仲良くしても、この出来事のことは思い出してしまう。

心のどこかでは、今でもまだ許していないのかもしれない。


ちなみに余談だが、この2年くらい後で、そのYからこんな相談を受けた。

「知らない女の人からメールが来て、連絡取り合いたいって言ってきてるんだけど...どうしたらいいと思う?」

...言葉もないとはこのことである。

騙されてしまえばいいのに、と本気で考えたのは言うまでもない。


そんなふうに、中学・高校と傷を増やし続け、ますます自分に対する自信を失っていった。

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