第5話 暴力

どうしてだったかよくわからないが、わたしは中学の時にクラスメイトに暴力を振られる対象になることが多かった。

暴力の対象と言っても、怪我をするような酷いもんじゃない。

ちょっと痛いくらいに蹴られるとか、そういう話。

だが、だからこそタチが悪いと思う。

跡や傷が残らないということは、周囲の大人たちは誰も気づかないということだ。


クラスメイトにはよく目撃されていた...どころか、教室でされることもあったので、間違いなく知っていたはずだ。

だが、あんまりよく覚えていないが、中学を卒業するまではそんな状況だった気がする。

すでに書いている通り、自信なさげであまり自己主張しなかったわたしは、そんな状況であることをわざわざ言うようなことをしなかったのだ。

そのことで特に後悔はないのだが...だが、そんな記憶は未だに残っている。


中学生は、その感情が時として狂気であり、凶器となる。

スクールカーストの最下層にいたわたしは、それをよく知っている。


他にも、そうやって刺された数多くの傷を抱えている。

当の本人たちはとっくの昔に忘れているだろう。

わたしも、いま彼らと親しいわけでもないけど、話すことになってもおそらく憎いとかそういう感情はわいてこないと思う。

けど、会ったら必ずそれらのことはフラッシュバックし、脳裏に浮かんでくるだろう...という自信はある。

憎いほどではないが、そうやっていつまでも残り続けるくらいの傷。

誰しもそういう傷はあるだろうけど、スクールカーストの最下位にいると、その傷の数は圧倒的に多くなるはずだ。


そういう傷以外にも、自分に自信がなく内気だったために、苦労した話は多い。

ある授業での発表時に、先生に指示された発表方法が自分が思っているものと合っているか分からず、発表できずに惨めな思いをした。

それは、自分に自信がなかったせいで、思い切って言えなかったこと。


先生に「これからどうしたらいいのか、考えて言いに来なさい」と言われても、答えはとっくに自分の中で出ていたのに、なかなか言い出すことができずに何時間もただ先生の横に立っていた。

それは、自分が内気だったせいで、なかなか言い出せなかったこと。


そんなエピソードには事欠かなかった。


同級生女子の言葉、クラスメイトからの暴力、その他の傷。

自分に自信がなく内気だったために苦労したエピソード。

スクールカースト最下層。

それらの要素により、自分への自信のなさと、他人と接することへの抵抗感はさらに加速した。

そんな中学時代を過ごした。

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