第24話 センスある人間
続いて、そのお店にいたことで変われたのが、わたしのファッションセンスの向上だった。
大学生であれば、毎日のように私服のコーディネートを考える必要がある訳だ。
その上、以前に書いた通り、ファッションがまともじゃなければ大学に行くことはできないと思いこむほどだったことで、コーディネートを考える機会やパターンは膨大になっていた。
そこに、ファッションセンスがある他のスタッフのレビューが加わった。
コーディネートの良し悪しのレビューをしてもらう機会が多かったので、わたしのセンスも劇的に向上した。
さらに、わたしの働いていたお店というのは、スタンダードなアメリカンカジュアルを売りにしているお店だった。
ファッションと言うのは、シンプルなデザインの服だけでコーディネートを組もうとするほど難しいものなのだ。
自分の仕事着はもちろん、仕事仲間やお客様のコーディネート。
そんな、シンプルなデザインの服だけでコーディネートを考えなければならない機会が長く続いたのだ。
そんな状況下により、わたしのファッションセンスはこの数年で劇的に向上したのだった。
どれほどかといえば、職場の仲間から
「このお店で一番ファッションセンスがあるんなじゃないの?」
「新商品のレポートでこんなに細かく書いてきたのはキミだけだよ」
といったような言葉をかけられるほどだった。
確か大学6年目ぐらいの時期のことだったと思う。
大学入学当初はユニクロのみのオタクファッションで、ファッションのことなんて何も分からなかったことを考えれば、劇的すぎる変化だった。
コミュ症の克服と、ファッションセンスの向上は、わたしの自分に対する自信の向上に大きく影響を与えた。
特にファッションセンスというのは、生活にとても近く、誰にでも関係することである。
そんなことに対して、自分のスキルが人より勝っているということは、自分に対する自信に大きく繋がったのだった。
その結果、大学6年目以降は自分に自信を持って学生生活を送れたと思う。
自分の精神衛生上、とても救われたのだ。
こうしてわたしは、洋服屋の店員として一人前になることができた。
同時に、同時に自分のコンプレックスを着々と克服していったのだ。
そして、最後に残ったコンプレックスは...自分の将来が見えないことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます