第26話 ボランティア

そのボランティアというのが、大学のある研究室が主催になってやっていたボランティアだった。

ボランティアの内容は、研究室メンバーが近隣住民のためにパソコン教室を開くというもの。

パソコン教室といっても、講習をするようなものではなく、身近なトラブルや疑問に答えるというのが実態だったので、相談室といった方が近い。

で、学内からそのサポートのメンバーを募集していて、参加すれば単位がもらえる...ということだ。


週1回参加するだけで単位がもらえる。

また、大学6年目までに養ったコミュニケーション能力を活かせる、あるいは試せる場所なんじゃないかな、と感じていたため、迷わず申し込んだ。

このボランティアへの参加が、結果としてはわたしにとてもプラスとなる経験となった。


週1回、確か14:30くらいに近所の公民館への集合し、30分ほどかけて会場設営をする。

机を並べ替えたり、パソコンをセッティングしたり。

パソコンの持ち込みをする方もいれば、そうでない方もいたので、パソコンがない方のために貸し出しをしていたのだ。

で、15:00から教室を開き、18:00に終了する。

18:00からは会場の後片付けと反省会で、終わるのが19:00くらい。

そんな内容だったと思う。


けっこう大変だったのが、ITを知らない人に対して、どのように説明したらわかってもらえるか...ということだった。

パソコン教室に来る方々というのは、大半がパソコンやITに詳しくない方だ。

そういった方々に、どのように説明したら理解してもらえるのか、とても悩んだし、試行錯誤もした。

それまで鍛えたコミュニケーション能力もとても役に立ったが、それだけでは賄えない部分も多く、とてもいい経験になった。

単純に解決してあげるだけでなく、どうやってその解決策に至るのか...というところを説明した。


教室に来るお客様相手にコミュニケーション能力を活かせたのはもちろんだったが、一緒に活動したメンバーに対しても活かせる場面が多かった。

特に、終了後の反省会でそんな場面は多かったかもしれない。

他のメンバーがあまり口を開かない中、毎回のように発言して反省会を意義あるものにしようと心がけた。

発言した内容が活かされていたかは...なんとも言えないが、言わないよりはマシだっただろう。

ともあれ、そういう場で積極的に発言しようとするなんて、昔の自分では考えられなかった。


そんなボランティアは半年ほどで終了したが、最後までやりきることができた。

コミュニケーション能力を存分に活かし、さらに不足分を補うことができた、いい経験となった。


またボランティアを通して新しく発見できたのは、情報化社会と言ってもまだまだそれに馴染めていない方々が多いのだということだ。

普段、ITに詳しい人間に囲まれて過ごしているわたしにとっては、少し驚きの事実だった。

実はこれが、あとあとで自分の将来を見つけるひとつのカギになったのだ。


そんな時期を経て、わたしの大学生活は7年目に突入した。

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