第33話 留年大学生の戦略・その3

最後に考えたのは、自分のマイナスポイントをどうカバーするか?だった。


自分のマイナスポイントは主に2つあると考えた。

ひとつは、学業の成果が目に見えて分かりづらかったこと。

もうひとつは、なぜ8年も大学に通うことになったのか?という理由だ。


まずはひとつめのマイナスポイント。

わたしはこれまで情報系の大学に7年通って来たわけだが、それを経てIT系の会社に入ろうとしているわけだ。

選考する側から見れば、こいつは適性大丈夫なのか?と思われても仕方がない。

だから、その対策を打つ必要があった。


対策としては簡単だ。

なんらかの成果を挙げて、ITに関して適性があると思わせればいい。

だが、大学の成績で成果をあげるのは難しい。

そこで考えたのは2つだった。

ひとつは「自力でなんらかの成果物を作り上げること」。

もうひとつは「大学以外の公的な期間で、成果を認定してもらうこと」。

だが、ひとつめの方は早々に諦めた。

当然ITに興味はあったが、すぐにITに関して何かを作り上げられるほど、スキルも時間もお金もなかった。

いや、本当に努力すればなんらか作れたかもしれないが...。

それよりは、もうひとつの方に尽力した方がいいと考えた。


というわけで、力を入れたのは「大学以外の公的な期間で、成果を認定してもらうこと」。

じゃあどうするんだ?という話だが...国家資格を受験することにしたのだ。

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が実施している、情報処理技術者のスキルを図るための試験、情報処理技術者試験というものがある。

毎年、春と秋に開催されているこれを受験することにした。

対象は「基本情報技術者」。

その名の通り、情報処理技術者として幅広く知識を問われる試験だ。

これを受験し、見事合格した。

...それまでに何度か受験をしていたが。

ともあれ、これでITへの適性はそれなりにあると認識してもらえるだろう。


ちなみにだが、就活対策で資格を取るというのはわたしは本当はオススメしない。

なぜかというと、その資格を持っていると履歴書に書くと「この資格、なんで取ったんですか?」と必ず聞かれるからだ。

まさか就活対策で、なんて答えることはできないだろう。

ちゃんと目的のもとに取得することをオススメしたい。

かくいうわたしは、これまでに書いた通り「大学7年も通っていたため、IT系の会社の選考を受けようとしている時に、スキルがないと思われるのは不本意だったので」と答えていた。

まぁ、これが適切な回答だったかは分からない。


続いて、ふたつめのマイナスポイント。

これは分かりやすい。

通常であれば4年で済むはずの大学生活を、倍の8年通うことが確定している人間に対し「なんでそんなに大学長く通ってんの?」という疑問は、選考者でなくとも気になることだ。


しかし、その対策は難しい。

素直に書けば、自分に自信が持てなくなって、何に対して頑張っていいのか分からなくなって、やる気がなくなって悩んでた時期が長かったからです、なのだが。

それをそのまま書くわけにはいかない。

なんとか取り繕って、それらしい理由を考えなきゃいけない。

先に書いておくが、この問題については内定獲得まで付きまとうこととなった。


はじめころは、「精神的に非常に参ってた時期があり、それが長く続いたため」と書いていた。

自分としては特に問題のある書き方とは思っていなかったのだが、親や兄弟から「精神的って書かれるととても重く感じないか?」と指摘された。

言われてみればそうだな、と感じ「精神的に」という言葉を外しそれでいて理由として伝わるような...そんな書き方に変えたと思う。


これで自分の戦略は組み上がった。

とりあえず、それらしい形にはなったので一安心したと思う。

だが、だからといって就活がうまくいくかどうかは別問題だったのだ。

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