第36話 長かった就職活動の終わり
8月。
就職活動が始まったのが12月だったから、9ヶ月目に突入しようとしていた。
この頃になると、思い当たるIT系の会社はかなり少なくなってきていた。
もちろん、選考に落ちた会社が増えてきたこともあったけど、さらに採用活動を終わらせる会社がじわじわと増えてきてたことが大きかった。
わたしはというと、まだ10月じゃないから大丈夫だ、という気持ちと、さすがにそろそろ抜本的な戦略の変更が必要だろうか、という気持ちと両方あった。
最初の会社の内定が出たのは、そんな気持ちで板挟みになっていたさなかの8月中旬だった。
理由はまったく分からななかったが、これまでの苦労が嘘だったかのようにトントン拍子で内定までたどり着いた。
内定が出た時は拍子抜けしたほどだ。
たまに選考プロセスを簡略化して、質より量をとる大量採用だろうか?と疑ったりもしたが...4次選考まであったので、考えすぎかなと思った。
余談だが、量をとる大量採用の会社はその分離職率が高い可能性があるので、選考が2次までしかないような会社はさすがに避けていた。
わたしは単に内定が欲しかったんじゃない、長く働ける会社の内定が欲しかったのだ。
とは言え、その会社1社の内定で満足だったか...と言われると、そうではなかった。
なぜなら、実はその会社はネット上では超有名な四大IT系ブラック企業のうちの1社だったのだ。
その会社の採用担当者はそれを知ってて、否定してたけど...。
やはり選択肢が他にないのはやはり不安だったので、就職活動は続けることにした。
そことは別に、もう1社選考が進んでる会社があった。
その会社こそが...自分が入社を決めた会社だった。
その会社も、なぜかトントン拍子で選考が進んだ。
これまでの就職活動の経験と、ここに来て就職活動カウンセリングが効いてきたのかもしれない。
2次、3次、4次と進むにつれ、あいだの日にちは1週間、3日間、2日間とどんどん狭まった。
そして最終面接まで進み...本社が地方にある会社であったため、最終面接は新幹線で行かなければならない場所だった。
そのため、最終面接の連絡があった瞬間、バイト先に休みの連絡を入れた。
ここまでくると、もしかしたら...という気持ちと、この会社で内定が出るまではなんとか頑張れるんじゃないかと、そんな気持ちだった。
10月まで続けるとは決めていたものの、実際には内定が出ない焦りと9ヶ月続けた就職活動でだいぶ参っていたのだ。
結果、その会社からも内定が出た。
実は、わたしの大学は卒業単位が満たされていれば半年ごとの卒業が認められる大学であり、8月末での卒業が決まっていた。
単位はかなりギリギリだったけど。
卒業式は8/31。
内定の連絡をもらったのは、その卒業式が終わった直後だった。
内定の連絡では、選考の結果と就職活動の状況を訊かれた。
「現在の就職活動の状況はどうですか?他の会社から内定は?」
「御社から内定が出たら、就職活動はやめるつもりでした。内定は1社出ていますが、断ろうと考えていました」
実際に内定が出て、それまで張り詰めていた気持ちが切れてしまった...ような感覚になってしまった。
予定ではあと2ヶ月残っていたが、ここで就職活動を終わらせることに決めた。
これが9ヶ月間、走り続けてきた就職活動が終わった瞬間だった。
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