最近、ある主張を見かけた。内容は「書きたいものを書けば三流でいい」というもの。
普通に考えれば「三流」とは「作品の質」、すなわちそれを生み出す「作者の腕前」を指す言葉だ。
だとすれば、どうにも間違った認識と言わざるを得ない。書き手はアマチュアだろうとプロだろうと「より良い作品を作りたい」と願うもの。未熟さを誤魔化すため一時的に賛同する人はいても、本音では誰も三流のままでいいとは思わない。
ただ内容を吟味すると、主張者はかつて隆盛を誇った「なろう系テンプレ」を用いることを「三流」と表現しているらしい。まあ確かに、それらのほぼ全てが三流で終わったことは事実だ。
しかしながら、仮に使い古しの陳腐な題材を用いたからといって、本当に全てが三流になるだろうか?
例えば、同じものを凄腕のプロが書いたとする。具体的に言うと、なろう系によく見られたテンプレ設定のファンタジー小説を上橋菜穂子や小野不由美が本気で書いたらどうなるか?
結果は言うまでもない。おそらく出来上がるのは「なろう系」とさえ呼ばれない高品質な小説。詰まるところ、三流うんぬんというのは「腕前」によって決まるものだ。
よって、冒頭の主張は「書きたいものを書けば下手でいい」と言い換えられるわけで、まさになろう系作家やそれを持ち上げてきた出版関係者が拠り所としてきた考え方のひとつ。
そしてこれこそが、小説というメディアの表現力を著しく衰退させ、小説家の専門性を子供でもできる水準へと引き下げた主な原因と言えよう。
日々腕を磨き続けている書き手たちにとっては、まるで共感できない話である。
というわけで、この企画では「確かな腕前で紡がれた珠玉の小説」を募集する。物語を創造する力はもちろん、文章力や構成力などにも確たる自信を持つ書き手の参加を期待する。
読み合いではないので、読む読まないは各自の自由。エッセイや創作論の参加はご遠慮願う。
参加する小説の設定画面で、自主企画欄にある「確かな腕前で紡がれた珠玉の小説」を選択してください。
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