アパルトマンで見る夢は

作者 リエミ

199

73人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

 この作品の中に、いつも自分が、その場にいるような錯覚さえおこさせる。
そして、登場人物と同じように自分とは? と、考えてゆく。
描写が、とてもシンプルに頭の中に想像される。
自分は、50代で人生の半分以上を生きていますが、そんな自身でさえ
今、一度 自分とは? 何をなすべき存在であるのか、そんな大した事は
出来なくても何を成すべきだったのかを、考えるとてもいい内容でした。
今から、もう一度、夢を形にしようと考えていた時でしたから、
本当に、勇気と言うのか希望の後押しを、してくれる作品でしたので、
これを、描いた作家さんには、ありがとうと伝えたいです。

★★★ Excellent!!!

舞台女優と芸術家の一か月間の夢の中。

自分が演じるキャラクターを探しにとアパルトマンというアパートで一か月間生活する舞花。

個性的な格好で芸術家を演じる、大家の息子かける。

表現の分野で苦悩する二人は、どこか似ていると親近感を抱く。

最初から決められていた期間。限定の関係性の中で、二人は改めて自分の進みたい道筋を探す。

1人では見つからなかったものを、2人で、もしくはもっとたくさんで見つけた時。

それはある意味夢の終わり。

アパルトマンで見た、夢の終わり。

夢からはいずれ覚めないと。

2人が進んでいくのは、それぞれの待ち受けている現実の道

ううん。違う。

ずっと思い描いていた新しい夢にまた飛び出した。

夢は消えずに、続いていく。

★★★ Excellent!!!

まるで写真のように、そこにある世界を正確に写し取ったような作品。
けれどそれだけではなく、心に深く差し込んでくる何かがある。
彼が描いた絵の中の羽のように。

舞花がアパルトマンを去る時が迫るにつれ、かけるとの別れを惜しみ、そして読者としてこの物語を読み終えてしまうというセンチメンタルな気持ちになっていきました。
ただ、希望で満ちているであろう彼女たちの前途に、期待でいっぱいです。

素晴らしい作品をありがとうございました。

★★★ Excellent!!!

 すばらしい作品でした。

 話の中心は、女優である主人公と画家の青年の交流。
 とりとめもない話や、芸術の話、ありふれた日常の話……。
 恋愛のような雰囲気もある……が、そうならない。
 二人はともにアーティストではあるが、それぞれの芸術を追求する、近くて遠い存在なのだ。

 ネタばれは控えるが、ラストの伏線回収は見事。
 もっとも、ネタばらしのことなどあまり気にしなくていいのかもしれない。
 ある種の未熟な推理小説やショートショートのような、タネが割れてしまうと楽しめなくなる、伏線頼みの作品ではない。
 
 静かな日常は芸術家にとっての非日常。
 表現の舞台から離れた女優にとって、一か月という時間の流れは早くて遅い。

 本気で小説家を目指している、そんな読者におすすめしたい。

★★★ Excellent!!!

ネタバレせずにレビューすることは難しいですが、一言で言えば「違和感は正しい」ということ。
その違和感にはちゃんとした答えがあり、登場人物はあるべき場所へと収まります。
それがまたもの悲しく、美しい情景描写の旋律に誘われて、一期一会の醍醐味を味わえるような作品です。

★★★ Excellent!!!

スランプに陥った女優さんの何気ない小休止の日々。
近付きそうで近付かない心地良い距離の二人、舞花とかける。

お互いに目指すものを持ち、次のステップに羽ばたくために翼を休める期間を書いた作品です。

描写が心地よく、小さな場面の転換、切り替えがシンプルかつ切れがあります。
分けて読もうと思っていたが、最後まで読み切ってしまいました。

ラストのどんでん返しが、さりげなくてスマート。

★★ Very Good!!

 とても優しい文体で、登場人物が描かれている物語です。

 しかし登場人物の心情を丁寧に書いているというのであれば、珍しくはあっても希有ではありません。

 この物語が希有なのは、登場人物の心情だけでなく、登場人物を中心にした風景も描いている点にあると感じます。

 読み進めていけば物語に引き込まれ、私がそこで見る風景は現実宛らでした。

 音楽が聞こえ、適当なSEがあるドラマや映画の中に入ったのではなく、現実の街、山、サーカス小屋でした。

 生活音、人の声、またメインとなるアパルトマンでは部屋を通り抜けるであろう風まで感じ取る事ができたような気がします。

 だからこそ、この物語にある描写は、丁寧ではなく、優しいのだと私は思います。

 登場人物にも、根底にあるのは優しさ、誠実さであると強く感じます。

 仕事に行き詰まったという女優も、何らかの事情でフランスから帰ってきたという絵描きも、アパルトマンのオーナー…皆、人間らしい優しさを持ち、他者に対して誠実であろうとしています。

 人の善意よりも悪意が、幸せよりも不幸が目立ってしまう今だからこそ、読みたい、紹介したい物語です。

★★★ Excellent!!!

夢と芸術家の再生を描いたこの物語に、風が吹き抜けるような軽やかさで圧倒された。

ぽつぽつと紡がれる穏やかな日々のなかで、静かに沸き上がっていく情熱の兆し。ゆるやかな時間の流れが途切れそうな夢のカケラにゆっくりと、でも確実に希望の色を滲ませる。

シンプルでありながらも繊細な筆致は、暗い水底のような仄暗さと真昼のひだまりのようなあたたかさを交互に押し寄せさせて、優しく心を占める。

この物語からもらった言葉や感情を心の片隅に書き留めて、これから未来に向かって歩いていきたい。そう思わせてくれる良作だった。

★★★ Excellent!!!

与えられた役が上手く演じられない主人公。
それまでは、何なくこなせていたのだろうものが壁にぶち当たったことで、監督から言い渡された「キミカ」を探すための1ヶ月の休暇。
「当たり前にあったもの」を取り払い、「何もない」状況に置かれたことで、今まで見えていたもの以上のものが見えてくる事で得るものは多々ある。

「視野を広げる」と言う事はそう言う事なんだと、一度初心に返り自分を見つめ直すことで新たに得るものがあるとはこう言う事なんだと、非常にためになる物語。

他薦によって、この作品に巡り会えた事に感謝します。

一度今ある物を取り払い、一から出直してもう一度自分を見つめ直したいと思います。

夢を見る事に前向きになれる、そんな作品です。

★★★ Excellent!!!

 一人の女優である主人公が、キミカを探すために舞台監督から一か月の休暇を貰う。指定されたアパルトマンで、暮らし始めた主人公の周りには、才能あふれる人々が集まっていた。絵描きのかける。ギター弾きのオーナー。そして、主人公はスーパーの店員の男性に惹かれていく。女優の生活を続けていたら、きっと目に留まらなかった世界。

 そこで主人公が見つけたものとは――?
 そして、主人公は無事にキミカを舞台に連れてくることができるのか?
 
 私たちはまだ、夢を見ることを許されている。それがどれだけ尊く、恵まれていることなのかが、身にしみてわかる一作。そして何より、夢を向いて歩くことの大切さが詰まっている。夢を追う人に、是非読んでほしいと思った。
 大丈夫、一人の時間が芸術家にとって必要なものでも、私たちは繋がっている。何故なら、「吹く風は同じ」なのだから。

 カクヨムのカク人必読の作品。
 是非、ご一読ください。

★★★ Excellent!!!

舞台で演じるキミカを探すために閑静な街の丘の上のアパルトマンで一ケ月過ごすことになった舞花は絵描きを目指すアパルトマンのオーナーの息子、かけると交流するうちに芸術の奥深さにふれ、忘れていた大切なことを思い出し、人に感動を与えるための心の羽ばたきに気付いていく―。夢に向かうひたむきな思いを胸に歩き続けるふたりの純真さが清々しいタッチで伝わります。

★★ Very Good!!

読み終えたとき、骨のあるアーティスティックなインディーズ映画を一本見終えたような気分になりました。舞台は現代日本なのでしょうが、読者はどこか知らない場所に連れて行かれたかのような独特な空気感を味わいます。それはタイトルや丘の上のアパルトマンという舞台設定以上に、さり気ないようで実はおそらく考え抜かれている人物造形とストーリー構成によるものでしょう。

変わり者たちの偶然の遭遇にしか見えなかった、期間限定の緩い関係性。しかし、最後にはそれが何か大いなる力によって引き合わされた結果に思えてきます。何気ない一言やちょっとしたアイテムの全てが見事に一本の糸のようにつながっていく様、そして各人の日常がその先に見えてくるようなエンディングは見事と言うほかありません。

苦悩と内省。出会いと気付き。選択肢と迷い。「バカンス」という名の彼らの一ヶ月を目撃した私たちもまた、新たな一歩へといつの間にか背中を押されています。何者かになりたいあなたや、何かを生み出したい君に、きっと響く物語。

★★★ Excellent!!!

監督に「キミカ」の代わりをさせられる舞花は彼女を探しだすため、丘の上のアパルトマンへ。

かけるのちょっとぼけた一言で、舞花の心が解れていく様子は、繊細で状況がよく思い浮かべられます。
女優でありながら、スーパーで働いている要二に心惹かれてしまい、遠くから見つめる舞花は好感の持てる主人公でした!

サーカス小屋での描写には大変興味がひかれ、子供の頃に見た懐かしいステージを思い出しました。
そして、舞花が見つけたキミカとは……読み進めるたび輪郭を現していく、そんな心温まる作品です。