漫画原作ってどんなもの? どうやって書けばいい? プロに聞いてみた!【カドコミ漫画原作コンテスト】

「カドコミ漫画原作コンテスト」応募受付中!

7月1日(水)より、漫画原作脚本が対象の「カドコミ漫画原作コンテスト」の応募を受け付けています。
大賞作品は連載確約。オールジャンルの作品を歓迎しています。

kakuyomu.jp

漫画原作脚本というフォーマットに初めてチャレンジする方も多いはず。
どんな風に書けばいいのか、どんなことに気を付ければいいのか、悩んでしまう場面もあるかもしれません。

というわけで今回は、小説家であり漫画原作者でもある円居挽さん、「カドコミ」編集長の加藤浩嗣さんのお二人に漫画原作の作り方について聞いてみました。
すでに作品に取り組んでいる方も、これからチャレンジしようと思っている方も、必見です!

GUEST
円居挽

円居挽(まどい・ばん)

1983年生まれ。京都大学推理小説研究会に所属し、2009年に『丸太町ルヴォワール』で講談社BOXより単著デビュー。本格ミステリーで人気を博し、『京都なぞとき四季報』シリーズなど著書多数。「カクヨムネクスト」にて『京都市民限定で求人が出ているとあるバイトについて』連載中。

加藤浩嗣

加藤浩嗣(かとう・ひろつぐ)

株式会社KADOKAWAコミック第3局局長、「カドコミ」編集長。代表的な担当作品に『異世界居酒屋「のぶ」』『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』『長門有希ちゃんの消失』『Fate/Zero』『ブラッドラッド』『いなり、こんこん、恋いろは。』があり、2000年代のライトノベルのコミック化ではヒット書籍を多数輩出。現在も『文豪ストレイドッグス』をはじめ多数の作品を手がけている。

「漫画原作」とはどんなもの?

――本日はお時間をいただきありがとうございます。7月1日(水)から、「カドコミ漫画原作コンテスト」の応募が始まりました。今回は応募者に向けて「漫画原作とはどういうものか」「どのように作ればよいか」などの観点からプロのアドバイスをいただければと思い、小説家であり漫画原作者でもある円居挽さん、「カドコミ」編集長の加藤浩嗣さんにお越しいただきました。本日はよろしくお願いいたします。

円居:よろしくお願いします。

加藤:よろしくお願いします。

――まずは基本なのですが、漫画原作とはどのようなもので、漫画制作の工程のなかでどのような役割を持つのでしょうか。

加藤:漫画制作にも先に作画担当が決まっているパターン、作品ありきで企画が始動するパターンなどいろいろありますが、今回のコンテストでは「オリジナル漫画原作」を想定しています。この場合、漫画原作こそが企画の根本となります。原作があって、それを漫画にしていくという流れなので、非常に重要な存在ですね。ですから商業作品では、いきなり書き始めるのではなく、まず漫画編集者と原作者で「どういう作品にしようか」と打ち合わせをすることから始まります。そのあとプロットを書いていただき、展開をすり合わてから、脚本の形に進めてもらうという流れが多いです。円居さんはいかがでしょうか。

円居:そうですね。僕もだいたいいつも同じような形で、作品のコンセプトや展開を編集者と決めてから、脚本の形に落とし込んでいます。

――実際の制作工程では、原作担当と作画担当はどのくらいの頻度で打ち合わせをするのでしょうか。

円居:これはケースバイケースですが、基本的には編集者が間に入ってコミュニケーションをすることが多いと思います。直接やり取りをすることは、おそらくそんなに多くないでしょうね。

加藤:そうですね。編集者それぞれのやり方があるので一概には言えませんが、僕の場合は編集者・漫画原作・作画の3名で話すことはあっても、漫画原作と作画のお二人だけで直接やり取りしてもらうことはあまりありません。

小説と漫画原作の違い

――お二人は、漫画原作者と編集者としてともに作品を制作されてきました。最初にタッグを組まれたのは、『オーク探偵オーロック』(角川コミックス・エース)でしょうか。

加藤:その前に、読み切りがありました。『剋殺探偵オウカガミ』という。

円居:倒叙ミステリの読み切りでしたね。『剋殺探偵オウカガミ』が正真正銘、生まれて初めての漫画原作です。短編ミステリの感覚で書いてみたら、漫画1話分としてはとにかく情報量が多すぎたことを覚えています。

加藤:どれくらい書けばどれくらいのページ枚数になるのかという感覚は、慣れていないと難しいですよね。この感覚を掴んでいただくためにも、まずは実際に書いてもらうのが一番だと思って、読み切りをお願いしました。

円居:いい経験になりました。今でこそ「マストで残したい部分と最悪カットしてもいい部分を色分けして、作画担当が分量を調整できるようにする」とかいろいろテクニックを覚えたんですが、当時は大変でしたね。ただ、小説と違って「この作画担当の先生が得意そうな内容はなんだろう?」という観点からお話を考えられたのはとても刺激的でした。どうアウトプットされるかのイメージがすごく湧きやすかった。

加藤:わかります。僕が担当として立ち上げた『文豪ストレイドッグス』(角川コミックス・エース)も作画は未定で原作者との打ち合わせからスタートしたのですが、「少年漫画っぽい熱い絵を描ける方がいいな」というイメージはあったんです。このイメージが、企画を引っ張ってくれたところがあります。今回のコンテストでも「こういう作画っぽい」というイメージのある作品は、おもしろさを把握しやすいですね。もちろん実際の絵柄は編集者と相談して決めていくことになりますが、原作側でも自分なりに「こういう作画なんだ」というイメージを意識して書いていただけると、作品の具体性がグッと高まると思います。

――円居先生は小説と漫画原作、どちらでも活躍されています。小説を書くときと漫画原作を書くとき、どんな違いを感じますか。

円居:ちょっと身も蓋もない話なんですけど、小説だと情景描写って大事じゃないですか。描写する文章の上手さで読者の信用を得られるというか。漫画原作の場合、地の文が上手くなくても、事実を並べていけば成立するんです。地の文が持つ状況説明とか舞台解説とかの役割は、漫画においては作画担当の先生の領域なので、文章が下手でも全然いい(笑)。その違いは、小説を書いている人には大きいかもしれません。ただ、セリフが弱いのはよくない。セリフのキレにはこだわる必要があります。

――そのまま漫画の一部になるセリフは、徹底的にこだわる。逆に地の文は、作画のための資料として割り切るということですね。そのほか、たとえばアクションシーンの扱いはいかがでしょうか。小説と漫画では、意味合いが違ってくる要素だと思います。

円居:漫画のジャンルにもよりますが、絵としてのかっこよさを作るには重要ですね。ただ、アクションシーンや殺陣をノリノリで描きたいという漫画家さんって、意外と多くないんですよ(笑)。作画コストやカロリーが非常に高いので。その大変さが分かってからは、アクションについて細かい指定を原作で入れるのは、ちょっと遠慮する気持ちを持つようになりました。

加藤:「以後、かっこいいバトルが5ページ続く」とだけ書かれた原作が渡されて、作画担当が頭を抱える……というのは業界ネタとしてよく聞きますね(笑)。冗談のようですが、究極的にはそうなってしまう側面があるのも事実です。アクションシーンなどの絵的な強さは作画担当の領域として、原作担当は深入りしない場合もある。もちろんこれは人や体制によりけりなのですが、お互いの領域を明確に決めておいて、その領域をリスペクトするのは大事ですね。

円居:アクションシーンに限らずですが、詳細をつぶさに書くことより、いかに作画の先生にインスピレーションを与えられるかが重要です。漫画原作とはつまるところ、作画の先生をいかにワクワクさせられるか。そのためには、原作者が細部まで「こう描いてほしい」とこだわりすぎないほうがいいこともある。もう一歩踏み込んで言えば、信頼ゆえの無茶ぶりも場面によっては必要になることがあります。作画コストを度外視して、作品の質を高めるためのオーダーをするという。

――担当領域を割り切った上で、配慮はしつつも作品のクオリティを第一に考えるということですね。コンテスト参加者の中には「自分は絵を描かないので、作画の感覚がわからなくて不安だ」という人もいるかもしれませんが、あえて現時点で作画コストのことは気にしなくてよいのかもしれません。

加藤:ただ、絵を描いたことがない人でも、「試しにネームを切ってみる」というのはいいトレーニングになると思います。ちゃんとしたネームを描けるようになる必要はありませんが、見よう見まねでいいのでネームに起こしてみる。すると、作画のテンポ感や分量の感覚が把握できたり、「自分はこういうシーンを作りたかったんだな」というのがわかったりもします。

関連記事

kakuyomu.jp

序盤の重要性、「ヤマ」と「ヒキ」

――今回のコンテストは、冒頭5話を応募していただく形式です。小説においても立ち上がりは重要ですが、連載漫画ではこの重要性はさらに強いのでしょうか。

円居:立ち上がりはとにかく、勢いが一番大事ですね。小説を書き慣れている人ほど5話できちんと話をまとめようとしてしまうんじゃないかと思うのですが、そうではなく、乱暴なくらいの勢いをつけたほうがいいと思います。5話でまとまっていなくていい。いざ受賞して、6話目を書くときに未来の自分が頭を抱えるくらいぶん投げちゃえばいいと思います。

加藤:おっしゃる通りです。実際、連載漫画の現場ってかなりライブ感で動いているところもありますから(笑)。先々の展開は考えすぎずに、とにかく勢いがある作品を歓迎したいですね。6話目のことは、通ったら考えればいいと。

円居:加えて、「1つの話のなかに何がないといけないのか」は意識したほうがいいと思います。最重要なのはヒキですね。各話の終わりにヒキが用意されている。その直前に大きなヤマがあって、そのほかに1、2個小さなヤマがある。僕の場合はそんなふうに意識しています。

加藤:ヤマというのは、話の盛り上がりどころのことです。衝撃的な展開とか、かっこいいセリフとか。大事なのは、漫画におけるヤマは話だけでなく絵で作るものでもあるということ。なのでヤマとはつまるところ、「印象に残る絵&印象に残る展開・セリフ」の合わせ技であると言えると思います。ヒキは、いわゆるクリフハンガーですね。話の終わりで「ここからどうなるんだ?」とハラハラさせ、次話へ牽引していく機能を持ちます。

円居:小説を書いていると丁寧に展開を考えがちなんですが、漫画では無理やりにでもヤマとヒキを作るほうがいい。特に冒頭は、緩急で言うところの「緩」が1話でもあってはいけないんです。常に「急」で引っ張っていかなくては。そこで大事なことなんですが、ヤマやヒキになるのは「読者の関心を引くもの」「読者の心を動かすもの」です。ここが読者基準であることが重要で、たとえば「敵が主人公の父親だった!」と衝撃の展開っぽく打ち出しても、読者が主人公の素性に興味を持っていなければヤマにもヒキにもならないわけです。いま読者が、何を見たいのか。これを把握してヤマとヒキを用意することが、漫画原作のポイントです。

――小説でも重要なテクニックですが、漫画においては「やりすぎかも?」と思うくらいヤマとヒキを意識したほうがよさそうですね。

円居:もう一つ、コツをお話しします。ヤマとも関連するんですが、1話目で「この作品は読者に対して、こんな風に気持ち良い体験を提供します」という部分を一通り見せること。それが何より良質なプレゼンになります。そしてその気持ちの良い部分を規定の5話までに何度も反復できたら尚良いです。コンテストの話とは別かもしれませんが、そういうプレゼンがうまい作者は「この作品じゃなくても、こういうジャンルを書かせてもおもしろいかもな」と思ってもらいやすい印象です。

――そう考えると、序盤のうちにやらなくてはいけないことが多いですね。キャラクターを紹介して、お話のパターンを把握させて、そこにヤマとヒキも作っていく。舞台設定の説明を長々としている時間はなさそうです。

円居:そうですね。できるだけ、説明コストは省いた方がベターです。ほかにもっと伝えるべきことがあるので。説明コストを抑えるために、設定のほうをシンプルにしたり主人公と読者の情報量を一致させたりという工夫が必要になります。

主人公を苦境に立たせる

――円居先生の「カクヨムネクスト」掲載の小説『京都市民限定で求人が出ているとあるバイトについて』は、貧乏な大学生が10万円を抱えて夜道を歩くというシーンから始まりました。いま強盗に遭ったりお金を落としたりしたらどうしよう、という葛藤の心内描写がおもしろい第1話ですが、たとえば漫画だとまた違った立ち上げ方になるのでしょうか。

円居:あれはもともと、主人公の人間像を掴むために書いたスケッチみたいなシーンなんですよ。そのまま使えたから第1話にしたんですが、漫画だったらもう少しスピード感が必要かもしれませんね。いきなり事件が発生するところから始めてもいいと思います。ホラーなら、いきなりめちゃくちゃ怖い状況に主人公を放り込んでしまう。バトルなら、絶望的に強い敵と遭遇する。要するに、主人公を苦境に突っ込むということです。

加藤:冒頭で主人公を苦境に突っ込むのは非常にいい手です。主人公がどんなキャラクターであっても通用します。むしろ、尖ったキャラ造形の主人公ほど苦境に置くことで共感を得やすくなる。海外ドラマの例ですが、ストーカーの連続殺人鬼が主人公の作品があって。普通に考えれば絶対に共感できないキャラクターなんですが、部屋に忍び込んだ瞬間にとつぜん住人が帰ってきて、「やばい、見つかる……!」と大ピンチになるシーンがあるんです。このシーンがあるだけで、視聴者はハラハラして、いつの間にか主人公と同じ視線で話を見るようになる。苦境に置くことが、共感のトリガーになっているわけです。

円居:苦境は、ロケットスタートにもなるしキャラ説明もできるし読者の共感も獲得できるしで、すごくお得なんですよ。特に漫画は冒頭4ページがおもしろくなければもう読まれなくなる世界なので、冒頭4ページの重要性が非常に高い。先ほどおっしゃったように、やらなくてはいけないことも多い。いきなり大事件のさなかにあるというのは、この難題に対処するための非常に優れたやり方です。

応募者へのメッセージ

――ありがとうございます。今回のコンテストでは、多くの応募者が初めて漫画原作にトライすることになると思います。漫画原作者の先輩として、円居先生から一言いただけますでしょうか。

円居:小説家になる前から、「いつか漫画原作をやってみたい」と憧れていました。たまたま素晴らしいご縁に恵まれ、今こうして漫画原作者としても活動できていますが、本来であれば狭き門だと思います。なので今回のコンテストは、本当に大きなチャンスです。もちろん賞を獲得して一発でデビューが決まれば最高ですが、もし今回ダメだったとしても、ここで得た経験は次に必ず活きます。守りに入らず、気楽な気持ちで、自分の大好きなことや最高に楽しいと思う妄想をこれでもかと詰め込んで「どうだ、おもしろいだろう!」と編集部に叩きつけてほしいです。プロが作る作品は、どうしても商業的なリスクを避けて手堅くまとまってしまいがちです。そういう計算からは絶対に生まれてこない初期衝動のエネルギーこそが、コンテストに挑戦する皆さんの最大の武器であり勝機だと思います。無難に当てにいこうとせず、思いっきりバットを振り回してください!

――ありがとうございます。加藤さんは「カドコミ」編集長として直接、選考に参加されます。どのような作品を期待するかという点も含め、応募者へメッセージをお願いいたします。

加藤:本当に円居さんのおっしゃる通りだと思います。僕たち編集部も、最初からプロ顔負けの完成度を求めているわけではありません。それよりも「この人はなんて面白いことを思いつくんだ!」「めちゃくちゃキレのあるセリフだな!」「このキャラクター、一目見ただけで好きになっちゃうな!」という驚きを求めています。1個だけでいいんです。完成度の高さよりも、読者の心に深く刺さって引っかかるフックが1個あること。「この人は自分の好きなものに向かって、全力でバットを振っているな」というパッションが伝わってくる原稿ほど、僕ら編集者も胸が熱くなりますし、ぜひ一緒に面白い作品を作りたいです。皆さんの熱い作品に出会えるのを、楽しみに待っています!

――ありがとうございました!


「カドコミ漫画原作コンテスト」は、9月8日(火)まで応募受付中です。
何作品でも投稿可能なので、ぜひともパッションあふれる作品をお待ちしています!

kakuyomu.jp