機能追加のご報告です!

12月25日の投稿機能の一部公開以来、連日たくさんのご要望をいただき、本当にありがとうございます。 皆さまからいただいたご意見は、リアルタイムで運営・開発担当に届いております。 それを踏まえ、今後の開発や改良についても検討を重ねてまいりますので、宜しくお願い致します。

ということで、早速のご報告です!

投稿機能について、最もご要望の多かった「章立て」の機能については、 2016年1月中には実装を予定し、開発を進めさせていただくことになりました!!

また、他にもご要望の多い

  • 予約投稿機能
  • 自動バックアップ機能
  • 執筆中の文字数カウント機能
  • エピソードの位置入れ替え機能

なども、鋭意開発を進めてまいります。

今後も、いただいたご要望を精査し、より快適な執筆環境実現に向け、全力で取り組んでまいります。 引き続きのご意見、お待ちしております!

【カクヨム・作家インタビュー企画】 VS 鏡貴也先生

 

【カクヨム・作家インタビュー企画とは】

WEB小説投稿サイトという場所で小説を書いてみたいと思う人へと向けて、第一線で活躍する作家にインタビューを行い、どういうきっかけで小説を書き始めたのか、今現在はどのようなスタイルで執筆をしているのか、WEB小説というものに対してどのような思いを抱いているのか、などを語っていただきました。

 

今回お話を伺ったのは、ファンタジア文庫で『伝説の勇者の伝説』『いつか天魔の黒ウサギ』を執筆、またジャンプスクエア誌で『終わりのセラフ』(漫画原作)を手がけていらっしゃる鏡貴也先生です。小説、漫画原作、ゲームシナリオなど、多方面で活躍する鏡先生の原点、そしてWeb小説というジャンルをどのように見ていらっしゃるのか、たっぷりと話していただいてます。

 

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──まずは小説を書こうと思ったきっかけを教えてください。

 

鏡貴也(以下:鏡):地上げに巻き込まれて、自由に動けず家に閉じ込められてしまった時期があったんですよ。これは何か家に閉じこもってできる仕事を見つけないといけないぞ、ぐらいの状況で。

そんな環境でふとTVを見ていたら、シャ乱Qの歌が流れてきて。なんだこれ? って見ていたら始まったオープニングが凄い格好良くて驚いたんですよね。『魔術士オーフェン』のアニメだったわけですけど。

ただ、そのまま本編を見た記憶はなくて、あのオープニングテーマソング格好良かったな~ってだけで、原作を買って読んでみたんです。それで面白かった。巻末に富士見書房って書いてあるのを見て、作家という仕事に興味を持ったんですよね。

どうすれば作家になれるのか考えて、公募ガイドを買ったんですよ。

 

──当時は、新人賞をWebからメールで応募という時代ではなかったですよね。

 

鏡:確か1月だったと思うんですけど、ファミ通、電撃、スニーカー、富士見の新人賞が載っていたんですけど、締め切りが1月、3月、5月、8月だったかな。さすがに1月は無理だとファミ通は諦めたんですけど、まずは書いて、書いたら必ず送る。そういうルールを自分に課して1作書いてみたんですが、これがとんでもなく下手なものが出来上がっちゃった。まあでも選考する側はその道のプロじゃないですか。何かしらの煌きがあれば採用してくれるんじゃないかなって(笑)。だから送りました。それで2作目は、図書館なども利用して色々と調べながら書いてみようと思ったんですけど、やっぱり自分でみてひどいなって思うものが出来上がってしまった。それでも送りました。そして3作目も書き始めたわけですが、1作仕上げるごとに、見直して反省をするというのは必ず行っていて、もっと自分を出さなきゃ駄目だなって思ったんですよ。女の子が主人公の一人称という形を選んだのですが、自分の言葉で書くということをかなり意識したんですよね。それで公募ガイドに載っていた最後の締め切りだった富士見書房へと送って。そこで小説家になることを辞めました。

 

──活動終了ですか?

 

鏡:最後の作品を送った8月って、最初に作品を送った電撃の結果が出た時期でもあったんですよね。落ちてました。これは才能ないな、や~めたっと。何か違う仕事も探さないとなって感じで。と言いながら、僕の中で最初のきっかけが富士見書房だったというのがあったから、富士見書房に送ったやつは受かるんじゃないかなんて気持ちもあったんですよね、何故か。それでも小説を書くのは辞めてしまった。そうしたら、翌年の7月だったかな、富士見書房から受かりましたって電話がかかってきちゃって。初代担当になる方だったんですけど、もの凄い愛想の悪い電話で、この人が担当だけは嫌だなって思ったのをよく覚えてます(笑)。あとは、本当にまったく小説書いてなかったので、どうすればいいですかって聞いたら、「授賞式までだらだらしてていいよ」て言われて「え、そんなんでいいんですか?」って返したのもよく覚えてるなあ。

 

──鏡さん何歳の出来事だったのでしょうか。

 

鏡:20歳だったかな。いや、まだ19歳だったかも。

 

──『魔術士オーフェン』との出会いがきっかけだったということですが、それ以前にたくさん小説を読んだりはしていたのですか?

 

鏡:作家で、自分は他の作家と比べて読書家だったと胸を張って言える人はいないと思うので、言うほどは読んでなかったと答えていいですか?(笑) でも小学生のころは時代小説や戦記も好きで、『剣客商売』とか池波正太郎作品や藤沢周平作品とか。山岡荘八先生の織田信長とかも好きだったし、時代劇あるいは戦記ものをそれなりに読んでいたのは、ライトノベルを書く上で影響は受けてるのかなとも思います。

 

──自作に取り入れていた部分はあるという感じでしょうか。

 

鏡:『伝説の勇者の伝説(以下:伝勇伝)』はメインコンセプトに親子ものという部分もあるんですが、アイデンティティの作り方っていうのかな、伝勇伝を作る際において『剣客商売』の秋山小兵衛と大治郎の関係などに思うところはちょっとだけありましたね。(といっても父親が出てくるのは何巻も進んでからですが)ただ、自作に取り入れるというか、影響を受けるという意味では映画と漫画の存在が大きいですね。特に映画は中学・高校の時代だけでも4000本は観ているぐらい好きなので。ゴッドファーザーなんかは映画版・小説版のどちらも好きで、過去の企画で影響を受けた本を聞かれた時にも答えたりしていますね。

 

──ジャンルとしての好みはありましたか?

 

鏡:映画はオールジャンルです。とにかく大量に見たので。あとは本当に、幼稚園ぐらいのころから、戦隊ヒーローものとともに、時代劇は好きでした。『大岡越前』とかTVドラマもよく見ていました。刑事ドラマとかも好きでしたよ。後はホラー小説かな。漫画は面白ければなんでもだったかなあ。『美味しんぼ』とか60巻を60回は読み返したんじゃないかな(笑)。『シティーハンター』も何十回も読んだし、『ジョジョ』や『寄生獣』も、小学校の低学年の頃から読んで、何度も何度も読みました。そんな風に好きな漫画は何度も読み返すんですけど、一度読んだ小説って読み返したことはないかもしれない。何でだろう、不思議ですね。

 

──意外ですね。

 

鏡:あ、ごめんなさい嘘つきました。小学生の時好きだったと言った織田信長の本、4回ぐらい読み返してました。ゴッドファーザーも。全然うそついてるや(笑)

 

──小説の作り方についてお聞きします。新作や新シリーズをはじめる際に、プロットは作りますか?

 

鏡:まずやりたいことがあって、それに対してのプロトタイプのようなものを何回か書きます。やりたいことが一番映える主人公は誰だろうという風に書いていって、その主人公がどんな風に生まれ、何を感じ、どう生きようとしているのか。そういったものがメイン軸として出来上がってきます。そうしたら同じ世界観の中で、どのように生きるのかをしっかりと抱えているキャラクターを何人か主人公の周りに用意する。それで出来上がってくるものがプロット……なんでしょうけど、結果として無視することは多いですね。キャラクターたちが自然と盛り上がっていく方向、発するその言葉に嘘がないことを大事にしていると、キャラクターたちが本当の世界を作り始めるので。帰結点、最終的にこうなるだろうという部分や時代背景などは上手いこと器用に着地できたりもするのですが、最初に頭の中で出来上がったプロットって言ってしまえば、作者の自慰行為みたいなものなんですよね。そのプロット通りに書くことにこだわってしまうと、キャラクターの言葉が嘘くさくなったり、立ち居地そのものを変える必要が出来てしまったりする。そういう意味ではがっちりプロットを組んで書いた時ほど書くスピードが遅くなって難航したりしますね。これは自分の会社でも、それ以外の場所でもよく言っていることなんですけど「人が、人に届ける、人の物語」しか人は興味がないと思っているんですよね。人間が書ければ興味を持ってもらえないことはない、とも思っています。

 

──凄く深い、良い言葉ですね。

 

鏡:そういう意味では、媚びすぎる必要もないとも思っています。人間を書くということは、読み手が人間であるという気持ちにもつながっているので。受け手が許容範囲外なものを書いている時点で、それは人間が書けていないんですよね。人を書く。それを人が受け止める。そこに対して真摯に向き合っているだけで、それは読み手を意識してその好みに合わせるといったものとは違うものなんですよね。ただ、僕はライトノベル業界では異端だろうなあとも思ってるんですが。

 

──異端、ですか?

 

鏡:といいますか、人を人として書かないことに特化させたライトノベルが、実はけっこうたくさんあるという話ですね。僕はそれに対してあまり興味がなかった。僕自身が寂しがり屋だからだと思います。人を書くことで人とつながりたい思いがある。ガジェットでもジャンルでもなくて人を書きたい。人しか書きたくない。ガジェットよりも人しか書きたくないみたいなのって、ジャンル小説ではちょっとわがままというか、異端だった気がします。若かった!(笑)

 

──その人間を輝かせるための苦難であり設定であり装置なのであって、装置そのものを描きたいわけではないということでしょうか。

 

鏡:今回のテーマがWeb小説ということで思うのが『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』という作品ですね。タイトルの時点で受けているのがわかるわけですが、これっておそらく転生の部分は重要じゃないんですよね。無職が何とかして立ち上がる物語。これは利きますよ。上手いですよね。選んだ魅せ方としてファンタジー世界に転生というのはあるのでしょうけど、無職が立ち上がるという物語を読み手に届けたいという情熱が、著者にはあるんじゃないかと思う。それはマーケティングだけは届かない槍みたいなもので、そういうことなんだと思います。人が人に届ける想いみたいなものが繋がるというか。僕が書く小説も、結局は僕が欲しいものが書かれていると思うんです。世界にそうあって欲しいという想いみたいな。それは僕が読みたい小説という意味とは少し違っていて、だから僕の書く小説は、僕が望む人とのつながり方みたいなことが書いてあるんだと思います。

 

──小説を書いている時の孤独、という要素もありそうですね。

 

鏡:それはあるかもしれないですね。

 

──小説を離れたところでの趣味などはありますか。

 

鏡:それ、実はよく考えるんですよ。色々な趣味を持ってみるんですけど、どうも僕の中にある素質で比較してみて、物語を作るってことが一番上手いらしい。他人と比較してどうこうという意味ではなく、他のことではそこまで楽しめないんですよね。自転車や自動車を買って乗ってみるとか、飲み会で友達とわいわいやったりとか、そういった趣味が物語を作るよりも楽しいかと問われてしまうと、疑問に感じてしまう自分がいる。締め切りは辛い、仕事はしたくない、もう引退したい。そんなことを毎日のように言うんですけどね。でもそんな辛いのに締め切りたくさん入れてるのは自分で、好きだからそうしてるんじゃないかって。他にそんな風に頑張れている趣味って一つもないわけで、つまりこれは小説を書く、物語を作ることがもう趣味なんじゃないかって。趣味の最高峰ですよね。「好きこそ物の上手なれ」でないと生きていけない業界だとも思いますし。あ、でも映画は今でもたくさん観ているので、映画が趣味ってことでお願いします。

 

──でも、その映画鑑賞から自分の創作に取り入れてしまうことはある?

 

鏡:映画を観たら物語を作りたくなりますよね。すげーまじかよこれ、僕がやりたかったことだよ! みたいな(笑)。

 

──Web小説投稿サイトというものが、鏡さんのデビュー前に存在していたら書いていたと思いますか?

 

鏡:Web小説という意味では、僕がデビューした前後にもブームになったことはありましたよ。『いま、会いにゆきます』とか『Deep Love』とか。

 

──いわゆる携帯小説ブームですね。

 

鏡:携帯小説も流行りましたけど、それだけでなく個人が作ったホームページ上で発表する小説というのがかなりあって。それを僕たちはWeb小説と呼んでいたんですが、それらに対していい感情を持っていないライトノベル作家さんはけっこうな数いましたよ。それはもしかしたら一般文芸の作家さんが、ライトノベルブームの時にライトノベル作家さんに対して抱いていた感情と似てるかもしれないですね。僕なんかは、ドラゴンマガジンの存在を知らないままドラゴンマガジンでの連載が決定したような人間で、デビュー時のコメントも「漫画と戦える小説が書きたい」だったくらいですから、割と面白ければ何でもいいじゃん派で、Web小説受けてると聞いたときも、そういう人との繋がり方もあるんだーやってみたいなーと思ったんですが(笑)でもジャンルが確立されていたりすると、どうしても何というか、新しいものや形が違うものに対する悪印象というものは出てきてしまうんだと思います。

 

──現在のWeb小説に対する印象はどうですか。

 

鏡:そういった変遷から見るなら成熟してきているなと思います。個人のホームページで盛り上がっていた環境とは明らかに違いますよね。時代そのものがネット時代になったというのもあるのかな。YouTubeは見るけどTVは見ないなんて声がよく聞こえるようになってきて、それと同じ流れなんだと思います。成熟と言いましたけど、形としてはむしろこれからなんじゃないですかね。

 

──小説における新しい選択肢の一つという感じでしょうか。

 

鏡:そうなると思います。無料で始まって応援したい人が本を買うという仕組みも非常にクリーンですよね。僕は先ほど言ったように公募ガイド買って、順番に投稿してその結果を待ってという、応募をして受賞したらプロになれるんだ! というワクワク感の経験者ですから、その感覚が低くなってしまうのは少し寂しいという思いもありますけどね。とはいえ、賞からデビューしたプロ作家という立場として言えることとしては、受賞=プロでもないんですよね。その作品が読者から愛されて支持してもらえてはじめてプロなんですよね。僕は、龍皇杯という読者による人気投票企画で1位をもらえた。『終わりのセラフ』では読者アンケート1位発進をすることができた。僕が自分をプロとして活躍できていると言っていいのであれば、そういう結果があってであって、受賞=プロとしての活躍の約束ではなかった。だから、今のWeb小説の形を、誰でもエントリーできる龍皇杯がはじめから存在するようなものだと考えれば、これはなかなか敷居が低くて素晴らしいなと思います。僕もデビュー前だったらやっていたと思いますよ、WEB小説。

 

──昔は、小説を書いて読んでもらうこと自体のハードルの高さがあって、Web小説がそのハードルを下げてくれた側面もあると思うのですが、いかがでしょうか。

 

鏡:そうですね。凄い下手なのに、でも面白いじゃんって人気を獲得して出てきてしまうなんて良さもあると思うんですよ。少し前の時代だと、自費出版も同じ流れだったんじゃないかな。自費出版出身でベストセラー作家になった方もいますが、担当編集がいてプロの校正が入ってでデビューした作家と比較して、自費出版出身は下手だ。そういう声はあった。でも面白かったから売れた。そうして経験を積んでいくうちに上手い下手での差はなくなっていく。そういったことがよりイージーに起こりうるのがWeb小説なんじゃないでしょうか。

 

──上手いと面白いが別の軸になっていく流れという感じでしょうか。

 

鏡:ただ、選別されていないことでの不利もあると思います。人気のあるカラーが固定化してしまった時に、脱却しづらいんじゃないかなあ。どうしても人気が出るとジャンルとしてみんながそれを真似してしまうわけで、出版社の新人賞なんかは、そういったものを選別する役目を持っていたと思うんですよ。というのも、僕は富士見書房に送った女の子の一人称作品が受賞したわけですけど、実は僕の時代って女の子の一人称という時点で落とされる時代だったらしいんですよね。あまりにも偉大な、女の子一人称作品が大ヒットしていましたから。

 

──『スレイヤーズ』ですか。

 

鏡:当時の富士見書房には、『スレイヤーズ』にはなれない縮小再生産とでもいうような作品の応募が本当に多かったらしくて。僕が受賞できたのは、面白さや文章力などを評価してもらえたという部分もあるのかもしれないですけど、こいつ絶対スレイヤーズ読んだことねえなって即座に思われるほどに違うものだった、というのもあるみたいです(笑)。そういう選別というかフィルターですね、それがないことへの不安はあると思います。でも、読者の多様なコンテンツを見たいという欲求は変わらないだろうから、Web小説でもある日突然違うカラーが飛び出てきて……みたいにはなるのかな。それは凄い面白いことですよね。

 

──Web小説投稿サイトも数が増えてきて、サイトごとに個性が生まれる時代が来ているとも考えていますし、実はそれを目指している意図もあります。

 

鏡:それは非常に面白いですね。僕も書こうかな。バディもののホラーミステリーとか。Web小説、これからの未来がありそうですよね。楽しい時代にになりました。これはカクヨムという小説投稿サイトさんのインタビューということで、まずはカクヨムさん、期待しています!!

 

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[鏡貴也]

2000年に『武官弁護士エル・ウィン』で第12回ファンタジア長編小説大賞準入選を受賞しデビュー。その後『伝説の勇者の伝説』『いつか天魔の黒ウサギ』を執筆し、いずれもTVアニメ化を果たす。また、2012年からは漫画原作を手がける『終わりのセラフ』が連載開始。本作も2015年にTVアニメが放送された。

オフィシャルサイト「鏡貴也の健康生活」

【カクヨム・作家インタビュー企画】 VS 入江君人先生

 

【カクヨム・作家インタビュー企画とは】

Web小説投稿サイトという場所で小説を書いてみたいと思う人へと向けて、第一線で活躍する作家にインタビューを行い、どういうきっかけで小説を書き始めたのか、今現在はどのようなスタイルで執筆をしているのか、Web小説というものに対してどのような思いを抱いているのか、などを語っていただきました。

 

今回お話を伺ったのは、2009年の「第21回ファンタジア大賞」大賞受賞作『神様のいない日曜日』でデビューされた、入江君人先生です。ご自身の創作についての話はもちろん、かねてより関心が高かったというWeb小説について、ストレートにお話しいただきました。

 

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──まずは小説を書こうと思ったきっかけを教えてください。

 

入江君人(以下:入江):23歳くらいのころでしょうか。当時僕は相当ちゃらんぽらんな生活を送っておりまして、将来設計などなく、むしろいかに人生を破壊するかみたいな行為にはまっていたんです。そのときにふと「小説を書く最後のチャンスかもしれない」と思って書き始めました。

 

──特別な理由やきっかけがあったわけではなくですか?

 

入江:そうですね。人生のなかでなにかが熟成されていって、当時はじけたという感じです。その部分に関しては再現性はないと思われます。じゃあなんでそんな人間でも小説がかけたかというと、やっぱり近所にあった図書館でひたすら本を読んでいた経験があったからでしょうね。

 

──少年時代からかなりの本を読んでいたということですか。

 

入江:今思えばそうですね。その図書館は当時としては珍しくライトノベルや漫画をたくさんそろえていたところで、一人で買い揃えるのはちょっと無理だなというシリーズや普通だったら小学生の目に入らないような古い本も読むことが出来ました。

 

──印象に残っている作品などはありますか。

 

入江:これは図書館ではなく友人宅でのことですが、そこで読んだ『ベルセルク』はかなり衝撃的でした。友人がゲームしてる横で読み続けて、帰る頃にはフラフラになっていました。あれのおかげで僕は物語の『毒』を知ったように思います。それ以降ですね、青年誌やライトノベル以外の小説を読むようになったのは。

 

──ライトノベルで影響を受けた作品を一つ挙げるとしたらどうですか。

 

入江:やはり『スレイヤーズ』でしょう。

 

──『神さまのいない日曜日』も女の子が主人公の作品ですね。

 

入江:そうですね、そこは影響というか似た部分かもしれません。ただアイが女の子になったのは作中のギミック的に父子よりも母子の生き別れがやりにくかったからという単純な理由だったりもします。

 

──はじめて書いた小説だったのでしょうか。

 

入江:完成させた長編という意味では1作目ですね。実は最初に書こうとした物語が別にあるのですが、そちらは原稿用紙で500枚を超えてしまって破綻してしまったのです。なのでまずは1作、完結させるために短編を書いて、それから『神さまのいない日曜日』を書き上げました。そういう意味では3作目になりますね。

 

──結果としてファンタジア大賞に応募されたわけですが、どんな理由だったのでしょうか。

 

入江:図書館で読んだライトノベルはファンタジア文庫が一番多かったんですよね。『魔術士オーフェン』や『フルメタル・パニック』や『封仙娘娘追宝録』がとても好きでした。ただ、電撃もスニーカーも好きだったので、応募するならその3つのどれかだなとは思っていました。その中でファンタジア大賞が締め切りのタイミングが一番よかったので取りあえず送りました。当時は次の作品も書き始めていたので、書き上がったタイミングで締め切りが近い賞に送ればいいだろう、と思って順次送っていました。

 

──ということは、他の作品を他の賞に投稿したりもしていた?

 

入江:当時のファンタジア大賞は選考期間が長くて、後に送った作品の結果が先に出たりなどもありました。逆にファンタジア大賞での受賞が決まったので、選考途中で辞退を申し出た賞もあります。

 

──もしかしたらダブル受賞なんて可能性もあったわけですね。

 

入江:どうなんでしょうね。そちらの話はメタフィクションでして、主人公が自分が描かれてる小説の原稿を破るというシーンを表現するために、実際に原稿用紙を破った状態で出版社に送ったりとかもしていたんで。今思えばレギュレーション違反だったんじゃないでしょうか。

 

──『神さまのいない日曜日』の執筆において影響を受けた作品などはありますか。

 

入江:ある映画を見ていて、その主人公とまわりの状況を真逆の世界の話を作れるんじゃないかなって思ったんです。それでいろいろと設定をこねくりまわしていたら世界観が生まれて、合わせて登場人物を配置して物語を作りました。そういう意味では、『神さまのいない日曜日』の世界観はミステリーのプロット的なやり方だったかもしれません。

 

──プロットという言葉が出ましたが、新作を書く際にプロットは作りますか。

 

入江:うーん、場合によりますね。プロットって基本的に『自分用の物語設計書』と『他人に見せる企画書』の二つがあると思うんですけど、後者は最近つくらないことも増えました。

 

──最近作らなくなった理由はあるのでしょうか。

 

入江:担当さんとの意思疎通が進んで、一言で通じることも多くなったからですね。『王女コクランと願いの悪魔』も、口頭で「これこれこんな話を考えてます」と言っていたら「じゃあそれ行きましょう」という感じでした。実際のところ、そうやって一言でおもしろいと思わせる話を広げていく形が理想だと思います。ただ、『自分用の物語設計書』は今でもかならず作っています。

 

──まだ小説を書いたことがないという人に向けての、プロットに関するアドバイスなどはありますか。

 

入江:最初はプロットなんか書かずに初期衝動のままに書き殴っちゃってもいいと思うんですが、それでも強いて言えば『書きたいシーン』をメモしておくことですかね。小説って書いているうちにぶれてしまったり、迷いが生じる事が多いので、そういったときに優先順位を確認できるようにしておくといいですよ。

 

──なるほど。入江さんの場合、シーンは映像で浮かぶものですか。それとも文字で?

 

入江:いろいろです。映像だったり、キャラクターの顔もないままになにかが進行していくところだったり、自分でもわけのわからない忘れかけた昨日の夢みたいなあやふやなものだったりします。

 

──これは個人的な印象なのですが、入江さんの作風としてミクロとマクロが直結しているという部分があると思います。そういった制作過程から生まれる作風なのかもしれませんね。

 

入江:僕、人間というちっぽけなミクロと壮大な宇宙的マクロは、それでも絶対につながっていると思っているんです。ですが、それは確信というほど強い思いでは無くて、そうあって欲しいという祈りに近いものなんです。人間というミクロの視点からみたマクロはあまりに広大で、なにかを確信することはとてもできませんから。実のところ、その部分は入江君人という作家の強みでもあれば弱みでもあります。たとえば『王女コクランと願いの悪魔』は現代の女子高を舞台に、現代風足長おじさんというような形でも書けたかもしれない。でもそういう風にはできないしやりたくない。入江君人という名前で書き続けることで、この名前で書く小説は『こういう物語』であるというようになっていく部分がどうしてもあった、読者がそれを求めていることも伝わってくる。それを苦しく感じた時期もありましたが、最近は開き直っています。

 

──ビルの立ち並ぶ中で見上げる空と、人の建てたものが何もない草原で見上げる空は同じ空だけど、違う空に見える。そんなことをふと思いました。

 

入江:同じ物を見て違う事を感じたり、違うものを見て同じ事を感じるというのは、きっと物語の最小単位なのでしょうね。いまの話で思い出しましたけど、シリアに旅行した時に見た夜明けは、ちょっと意味が分からないくらい記憶の中に残ってますね。そういう特別な思い出を、子供時代に当たり前だと思って過ごしてきた風景で漉してみたときに、ちょっとなつかしかったり変な匂いのする物語になったりするのかもしれません。

 

──海外旅行の話が出ましたが、趣味はありますか。

 

入江:今は釣りですね。これは随分昔、それこそ高校時代に部活にまで入ってやっていた趣味だったんですが、成人してからぱたっとやめていたんですよ。それがひょんなことから再開したら、ああいいなあっと。海外旅行は趣味というほどではないですね。親戚にメキシコ人がいたり、旅行関係の仕事していたりするので、その縁で海外には何度か行きましたが、僕自身はあんまりです。あとはもちろん読書ですね。漫画、小説はもちろんですが、ここ数年はネットの創作にどっぷり浸かっています。

 

──入江さんはWeb小説にも造詣が深いことで知られていますが、Web小説との出会いはどういった形だったのでしょうか。

 

入江:これは明確に橙乃ままれさんの『ログ・ホライズン』でした。『まおゆう』の次作品ということですぐに読みに行った覚えがあります。

 

──Web小説という世界に対する印象はどうでしたか。

 

入江:Web小説というか、この場合は『なろう小説』ということになるのですが、確かその時に『ログ・ホライズン』はランキング10位以下だったんですよね、それで「あれより面白いのが10もあるのか!?」 と驚いて一通り読んでみたんです。そうしたら魔法科以外はあまり面白くなくて、というかそれ以前に意味が分からなかったんですよ。まあ、そのときはランキングの仕組みや、なろう小説という世界観も知りませんでしたから当然なんですが。それでも悶々としながら読んでいるうちに、なぜかだんだんと面白くなっていって、友人と語ったり同人誌つくったりしているうちに、あれよあれよと世間からも注目されるような状況になっていました。今現在の印象というのであれば、本とは似て非なる新しい創作の場、という感じでしょうか。

 

──これからのWeb小説はどうなっていくと思いますか。

 

入江:ひとまず今の段階で、Web小説はだいぶ良い発展をしたと思います。昔、それこそインターネットが本当に原っぱだったころは、たとえば砂遊びをしたいと思ったら岩を砕いて砂を作るところから始めなければならなかったですし、出来上がった創作物を見てもらうのにも相当な苦労が必要だった。それが『砂場作ったよ』とか『みんなが作品を見やすいようにしたよ』という人たちのおかげで、砂遊びの才能はあるけど岩を砕く力は無いという人や、単純にそこまでコストをさけなかった人たちが、巨大バケツを振り回して城を作ったり。思いも寄らない砂の使い方で傑作を作りだしている。これが現在のWeb小説界隈だと思います。これからしばらくの間Web小説はこういった『取りこぼされてきた創作』を拾い上げて大いに発展していくでしょう。ただ現状では、それらの発達を支える『場』に限界がきていて、次への成長が滞っているように感じます。これはクリエーター側でどうこうできることではないので、編集さんや企業にがんばって欲しいなと思っています。『なろう』が砂場だとして、たとえば野球場やレース場を作るのでも構わない。もっと言えばそれら全部がある総合テーマパークを作る。そういった『創作』が受け入れられる時期だと思います。

 

──エンターテインメントとしてのさらに先ということでしょうか。

 

入江:やってること自体は、それこそたき火囲んで神話を語ってた頃とあまり変わってないとおもいますよ。、語りがうまい人もいれば、集会場作る人やたき火あつめてくる人もいる。それでもジワジワと前へ進んでいって、ある日がらりとすべてが変わってしまったりする。それこそ印刷が発明されて小説が生まれたり、フィルムが出来て映画が撮られるようになったように、Webは新たな創作媒体になっていくのでしょう。願わくば、僕も僕自身とその新しい場所を融合させて新たな創作物を作り出せたらなと思います。

 

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[入江君人]

2009年、第21回ファンタジア大賞で大賞を受賞した『神さまのいない日曜日』でデビュー。同作はその後、TVアニメとなったほか、角川文庫でも刊行された。近刊は、『王女コクランと願いの悪魔』(富士見L文庫)。こちらも版を重ねながら2巻まで刊行中。

×堂ブログ(バッテンドウブログ)

 

【カクヨム・作家インタビュー企画】 VS 友麻碧先生

【カクヨム・作家インタビュー企画とは】

Web小説投稿サイトという場所で小説を書いてみたいと思う人へと向けて、第一線で活躍する作家にインタビューを行い、どういうきっかけで小説を書き始めたのか、今現在はどのようなスタイルで執筆をしているのか、Web小説というものに対してどのような思いを抱いているのか、などを語っていただきました。

 

今回お話を伺ったのは、Webでは”かっぱ同盟”名義で複数の小説を投稿したのち、ペンネームを変えて刊行した書き下ろし小説『かくりよの宿飯 あやかしお宿に嫁入りします。』がヒット作となっている友麻碧先生。ご自身のバックボーンから、Webで小説を投稿するようなきっかけ、二つあるペンネームの由来、創作に対する姿勢、現在のWebとの付き合い方などをお話しいただきました。


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──まずは小説を書こうと思ったきっかけを教えてください。


友麻碧(以下:友麻):漫画家になれなかったからです(笑)。


──もともとは漫画家志望だったということですか?


友麻:物語を考えるということ自体がずっと好きだったんです。小さな頃から妹に自分で作った話なんかを語って聞かせたり、周囲の友人たちと一緒にキャラクターや設定を考えたり……そうやって遊んでばかりいたので。ただ、私は小説家になれるほどの文章が書けるとは思っていなかったし、漫画の方がずっと好きだったので、高校生の時に素直に漫画家になりたいなと思って、美術大学(以下:美大)に進学しました。


──それで美大進学は凄いですね。


友麻:でも絵はあんまり上手くないんですよね(笑)。もちろん受験のために美大予備校でデッサンばかりしていた時もありましたが、周囲にはもっと凄い人たちが沢山いましたからね。我ながら自分は絵のセンスが無かったなと思います。で、美大では映像を勉強する学科に入って、映像作品を作っていました。映像的な面白さを想像して絵コンテをきったり、自分一人で作ることのできる尺で簡潔に物語をまとめたり、こういう映像制作の経験は今の小説の執筆にも役立っている気がします。大学にはものづくりに関して、凄いこだわりをもった人ばかりでしたから、そういう意味でも沢山影響を受けました。今も各業界で活躍している方が多いので、そういう同級生たちの活躍が、自分も頑張らねばという思いにさせてくれます。また_授業外では、同じ美大の絵が得意な友人と一緒に漫画を描いていて、それで大学の課題をこなしながら、漫画の制作や投稿をしていました。で、あっというまに就職活動の時期になるわけじゃないですか。漫画で結果を出すことができず、漫画家はやはり厳しいか……なんて思ってしまい、就活をすることにしたわけです。


──その段階で、漫画の代わりに小説を書いてみようと思った?


友麻:というか、就活をしつつ、時間がある時に小説ならできるかなと思って。自分の中にある物語を文章なら一人ですぐに形にできますし、漫画への未練タラタラな思いはありましたから、それを出し尽くす為に書き始めました。Web小説サイトは、もともと大学に入学する前に、友人たちの作品を読んだり、一緒に作ったりするために少し活用していたので。

 

──合作で小説を書いていた?


友麻:話は高校時代に遡るのですが、自分が考えた物語や、友人たちが考えた物語を、適当な文章にしたり絵を描いたりしてお互いに見せ合っていました。登下校中や部活中もずっと「こんなキャラクターがいいんじゃないか」とか話したりしていて。まあこの頃は全部アナログでしたし、純粋に創作を楽しみ遊んでいたわけですが、友人たちと離れた大学に入ってからもそういう活動は続いていました。Web小説サイトなら離れた場所にいても、常にお互いの物語をチェックできたし、メッセージも送れたので、最初はそういう活用の仕方をしていました。

 

──Web小説サイトに投稿した作品はどんな内容だったのですか。


友麻:遡れば色々あるんですけど、まともに書いた最初の作品が『メイデーア魔王転生記 ~俺たちの魔王はこれからだ。~(以下:メイデーア) 』ですね。その次に書いたのが、『僕の嫁の、物騒な嫁入り事情と大魔獣』でした。


──最初に書籍化した作品は『僕の嫁の、物騒な嫁入り事情と大魔獣(以下:僕嫁)』ですよね。


友麻:そうですね。僕嫁の書籍化の頃は「手元に残る形になって嬉しい」という思いの方が強く、その後も書籍を出せるなんて思っていなかったんですけれど、本当に運がいいというか、流れというか、まだなんとか商業で小説を書かせていただいています。今では小説を書ける限りは書いていきたいって気持ちも強いですね。あ、でも一度諦めた漫画の活動も再開しているんですよ。やはり商業での小説の出版がいい経験として影響してくれて、かつて一緒に活動してくれた友人にも、漫画ももう一度やってみようと言えました。小説との両立が難しく困難ばかりなのですが、早く漫画で何かしらの作品を出せるよう頑張っているところです。

 

──漫画が身近な存在だったとのことですが、好きな作品または影響を受けた作品はありますか。


友麻:漫画だと一番は『ぼくの地球を守って』ですね。とにかく「花とゆめ」作品が大好きでした。少年漫画も沢山読んでいましたが、今の自分につながっているという意味ではやっぱり少女漫画が多いと思います。

 

──漫画以外で影響を受けた作品はありますか。


友麻:小学生の頃は児童文学が大好きで、沢山読んでましたね。特に岡田淳先生の『こそあどの森の物語』シリーズ、わたりむつこ先生の『はなはなみんみ物語』シリーズ……それから宮沢賢治作品全般。わたりむつこ先生の『はなはなみんみ物語』シリーズは何度も何度も読んでいたので、メイデーアの執筆に深く影響を与えていただいた作品でもあります。

 

──多くの児童文学に触れていたことと、学生時代に友人たちと創作した経験が、小説を書く上での原点になっているのですね。


友麻:小説……というか、物語をつくることが好きになった_原点でしょうか。でも一番の原点という意味では、小学生の頃、妹にその場で考えたお話を語って聞かせていたことだろうなと思っています。妹とは夜に一緒の部屋で寝ていたんですけど、寝る前にぺちゃくちゃ話していて。目からビームが出る魔法とかあるレベルの(笑)、いかにも小学生らしい適当な物語だったんですけど、それでも妹は楽しんでくれていました。毎日「続きを聞かせて」と言われて、その場で一話、一生懸命考えて話していました。誰かと語りながらキャラクターや物語をつくる、最初の相手は妹だったわけですね。一人で何かを作ることも好きなんですけど、やっぱり時々限界にぶつかります。それは発想だったり、技術だったり……。なので、色々な特技や思想、好みを持った人と、一緒に話しながらキャラクターやストーリーを生み出していくという形は、自分一人では及ばない物語を作ってくれる時もありますし、共同制作は自分一人では作れないものを、誰かと一緒に作れたりします。もしかしたらweb小説で書き続けるというのは、これをとても数多くの人とやっていることなのかもしれません。私も多くの感想から、やる気と喜び、励ましをいただき、また沢山のインスピレーションを与えてもらいましたから。

 

──かっぱ同盟というペンネームの、同盟という部分は、チーム製作の経験から来ているのでしょうか。


友麻:そうですね。複数人で作っていた過去の作品を投稿することもあるかもと思っていたので。結局、一人で書いた作品ばかりでしたが(笑)。ちなみにかっぱの方の由来は、その当時に美大でかっぱの人形アニメーションの絵コンテをきっていて、すぐそばにその絵コンテがあって、たまたま目に入ったからですね。その当時、まさか書籍を発売することになるとは思っていなかったので、すごく適当にペンネームを作ってしまったわけです。今となっては「愚かだったな……」と思ってしまいますが、ネット上のやりとりで「かっぱさん」と呼んでいただけることもあるので、自分も愛着があったりもします。なので自分を表現するアイコンなんかは全部かっぱがモチーフだったりします。実際にお会いする機会のある方に、面と向かって「かっぱさん」と呼ばれると恥ずかしくて仕方がないんですけどね……

 

──『かくりよの宿飯 あやかしお宿に嫁入りします。(以下:かくりよ)』は友麻碧というペンネームで書かれています。


友麻:友麻碧=ゆーまみどり=緑のUMA=かっぱ、です(笑)。オシャレですよね!? 美大の友人たちからは「かっぱ同盟だったくせに今更人間になりたいのかよ」と総ツッコミをくらいましたが、一応かっぱから連想された名前です。まあ、女性向け一般文芸を出すのにかっぱ同盟はさすがに……となったので。

 

──かくりよは今までWeb小説で書かれていた作品とは異なる作風だと思いますが、どういった着想で生まれたのでしょうか。


友麻:書下ろしで何か1作書いてみないかというお話を頂いた時、なら富士見L文庫で書かせていただけないかと自分から言いました。そして、最初に思いついたのが異種婚姻譚ものか、料理ものにしよう、でした。当時漫画で異種婚姻譚ものの『魔法使いの嫁』を読んでいて、自分も結婚ものが好きだったので……今思うとデビュー作も結婚ものですね。あやかしものでお願いしますというのは編集さんからオーダーでした。女性向けの一般文芸であやかしものが流行っていることを実は知らなかったんですけど、でも知らなかったからこそ、あやかし×異種婚姻譚になったんだろうなと思います。ただ、それだけだと結構書くのが難しくて、もう一つなにか……で、もう一方で考えていた料理要素が、このあやかし婚姻譚に取り込まれました。

 

──Web小説と比較して、執筆面で苦労した点はありましたか。


友麻:苦労というか違いとして一番感じたのが、書下ろしの作品は、最後まで書いてみてから前半をガラッと作り直すことが出来ることでした。今までのWeb小説での投稿連載という形だと、後から前半の部分を大幅に直したいと思っても、それは既に投稿済だったりするので、なかなか難しかったりしますが、かくりよは最終ページまで書き上げてみてから、編集さんと何度もやり取りをしているうちに序盤のほとんどが最初と違う形になっていたということがあったので。それで全体的にかなり良くなった手応えがあったので、このやり方はいいなあと思いました。また、今までとは特徴の違うレーベルで書くと言うことで、キャラクター作り一つとってもWeb小説でやってきたやり方でいいのか、新しいことに挑戦した方がいいんじゃないか、自分の作風やキャラクターが受け入れてもらえるのか、とか、沢山悩みましたね。web小説のように多くの方の感想が聞けるわけでもないので、出版されるまでずっと、これでいいのかなと震えていました(笑)

 

──Web小説サイトについて思うことをお聞かせください。


友麻:うーん、なんだろう……Web小説を連載していた時も、自分の作品の執筆と、友人の作品やお気に入りの作品を数作追うくらいしか活用できていなかったので……。Web小説サイトはすっかりと定着した存在になって、私もブームの中で、書籍化や打ち切り……まあ色々な酸い甘い経験があったわけですけれども(笑)。色々と反省し、心機一転、そこから書下ろしでかくりよを書いてきた流れがあります。で、今になってなんとなく思っているのは、最後の最後に自分を助けてくれるのは、やっぱり自分が好きでたまらず書いた作品なんだなあ……ということでしょうか。自分にとってそれは、メイデーアでしたね。Webはあくまで自由な場所というのが私の意識で、書けなくなったら途中でも書くのを止めて良いと思ってますし、逆に自分の書きたいものをどこまででも書き続けることができる、凄い場所でもあります。商業だと、どうしても一巻一巻様子を見ながら書いてしまいますからね。Web上の読者の感想に後押しされつつも、自分の自由な判断のままに思い切り書き上げた作品は、やっぱり無駄が多くて、未熟で不安定なんですけれども、流行以外の部分での自分の強みや作風、また大きな弱点を教えてくれたりします。特に弱点を教えてくれたということが大きかったですし、それが今の私の執筆の支えです。またもう一つ……Web小説について聞かれているのに、こんな空気の読めないことを言うのもなんですが(笑)、今になってやっとWeb小説だけが全てじゃないと思うようになりました。Web小説を書いていた時は、その世界が全てのように思ってしまっていて、流行やらポイントやら書籍化やら、日々の更新やらに翻弄されがちだったのですが、今はもうそういうことに囚われるのはやめ、少し落ち着いて執筆してみようと思うようになりました。やっと色々なフィールドに目を向けることができるようになってきて、誰にでも自分に向いている場所がどこかにあって、それがWeb小説の人もいれば、そうじゃない人もいるのかな……と。私は後者だったのかもしれません。でも、Web小説時代の読者の方々で、今もかくりよを読んでくれている方も居ますし、ちょろっとWebに顔を出したら、声をかけてくれる優しい方も居ます。今はほとんどWebでの活動が出来ていないのに、それが本当に嬉しいです。いつかWeb小説時代を支えてくださった読者の方々にお返しできる作品を書けたらな……と思っています。

 

──最後に一言。


最初はダメダメでも、自分らしい作品を書き続けていれば、見てくれている人は見てくれているし、支えてくれる人は支えてくれる……自然と自分の居場所は見えてくるものかもしれないなあと思う、今日この頃です。我ながら訳わからないことばかり語ってしまいました……実は全部、自分に言い聞かせている言葉です(笑)。

 

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[友麻碧]

”かっぱ同盟”名義でのWebでの小説投稿活動を経て、『僕の嫁の、物騒な嫁入り事情と大魔獣』『メイデーア魔王転生記 ~俺たちの魔王はこれからだ。~』が書籍化となる。現在は”友麻碧”名義で書き下ろした『かくりよの宿飯 あやかしお宿に嫁入りします。』がヒットとなり、現在も版を重ねながら続刊中。2016年2月に最新第3巻が発売予定。

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カクヨム利用規約の「著作者人格権」規定について

カクヨム運営です。 25日の投稿受け付け開始以来、多数の方にアクセス・会員登録を行っていただいており、 誠にありがとうございます。皆様の熱気が伝わって参ります。

さて、カクヨムに会員登録いただく際にご承諾いただく、以下の規約に関して「意図を詳しく 説明して欲しい」というご要望を、何件かいただいております。 規約内に詳細な説明は、いたしかねますのでこの場を借りて、解説いたします。

規約第10条 3項 会員は、当社および当社から権利を承継しまたは許諾された者に対し て著作者人格権を行使しないことに同意するものとします。

著作者人格権は、全ての著作物に関して著者に存し、譲渡不可なものです。 その権利を、本サイト内においては行使を控えて欲しいという事に関して、著作者人格権を構成する権利には、「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」がありますので、それぞれに関してご説明いたします。

【公表権】 自己の著作物を、そもそも公衆に提供又は提示(公表)するかどうか自体を決定することを、時期・メディアを含めて決定する権利です。

投稿された小説は、会員の意向によって自由に公開・非公開が操作可能です。 しかしながら、カクヨム運営に対して、現状システム対応していないこと、例えば「Web掲載はよいが、スマホアプリでは見せたくないので、そちらからは落として欲しい」などといった要望も、権利としては可能であり、強く主張された場合に、円滑なサイト運営が困難になるため、行使を控えていただければと考えております。

【氏名表示権】 自己の著作物を公衆に提供又は提示(公表)する際に、氏名又はペンネームの表示の有無を決定する権利です。

広告・宣伝販促活動において投稿いただいている作品名やその内容の一部を、サイトの紹介などの目的で利用する場合、原則として氏名もしくはペンネーム(投稿者が公開を許可した方)を明記していく予定です。ただし、その「氏名・ペンネームの掲載可否」を個々に取っていると、迅速な宣伝・販促活動(例えば、ランキングを別メディアに掲載するなど)が難しいため、氏名表示権行使の有無を確認しなくとも運用できることを目的としております。

【同一性保持権】 著作物やそのタイトルについて、著者の意図に反して、変更、切除その他改変を受けない権利です。

投稿された作品に対して、運営側が手を加えることは一切ありません。 ガイドラインにも、あらためて記載させていただきました。 https://kakuyomu.jp/legal/guideline kakuyomu.jp

尚、カクヨム自体のサイト・サービスの宣伝・販促目的において、宣伝物上や提携先サイト上に作品内容の一部の抜粋または抄訳を利用することがあります。 また、今後サイトのリニュアル等で投稿時点とはフォーマットが変更になることがあり得ます。 その際に、事前に多数の作品に関して著者に変更の可否を確認することは、サイト運営上著しく難易度が高いため、設定させていただいております。

以上となります。

今後とも、ご意見・ご要望をお待ちしております。 尚、その他寄せられているご質問及び回答は、ヘルプの「よくある質問」にも追加して参りますので、そちらもご参照ください。

傍点がずれて表示される不具合の修正など細かな改善を行いました

12月25日の投稿受付開始より、たくさんのご意見・ご要望をお送りいただき大変ありがとうございます。本日、ご報告いただきました不具合の修正と、スマートフォンから編集する際の改善を行いました。

  • 傍点が行の折り返しにまたがった時に表示がずれることがあるという不具合を修正しました
  • スマートフォンからエピソード編集を行う時に、端末によって画面右端が切れてしまうことがある不具合を修正しました
  • スマートフォンからエピソード編集を行う時の文字サイズを小さくして、1画面により多くの文面が表示されるように改善しました

ご意見・ご要望からご指摘いただいた皆様、大変ありがとうございました。今後も新しい機能の追加や2月末のオープンに向けた開発と並行して、不具合の修正や細かな改善も行ってまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。