麒麟

高校時代の三年間、赤澤は同級生の青木に対して苛立ちを覚え、その感情は暴力として表れた。いじめっ子と、いじめられっ子。はたから見ればそうだった。青木は暴力に屈せず、暴力に訴える事はしなかった。理由は警察官になりたかったから。刑事として正義を貫きたかったから。その夢を赤澤は壊してやりたかった。しかしある事をきっかけに赤澤は転校する事になり、ふたりは離れる。時は経ち、ある繁華街の路地裏。赤澤は稼業を継ぎ、葉山組若頭の肩書を持っていた。そんな赤澤の目の前に青木が現れる。青木は刑事ではなく、チンピラヤクザに成り下がっていた。二人の再会は偶然か必然か。

ふたりの感情は、愛か憎悪か。学生時代、暴力を振るう者と、振るわれる者。極道者と正体不明な男との歪で破滅的な物語。