第10話 君と一緒にいたい!
「日向君は、その……もう亜理紗とエッチしたの~! 亜理紗との初体験、そろそろすましたのかしら!!!」
「……ぶふぁっ!?!?!?!?」
神妙な顔で柊木のお母さんが言った言葉に思わず吹き出してしまう。
いや、えっとおばさん……え、え? な、なして?
「も~、日向君吹き出しちゃって可愛いなぁ! はい、ティッシュ、それで拭いて。それで話戻るけど、日向君はもうそろ亜理紗ともうエッチはしたのって聞いてるの! 恥ずかしがらなくて大丈夫よ、ちょろっと! ちょろっとお義母さんに教えてくれればいいから! やっぱりお義母さんとして、そう言う事、やっぱり気になるし! だから、ね? 教えて日向君? 亜理紗とそろそろ、シたんでしょ? もう、やっちゃったんでしょ、高校生だもんね! ね? ね? 初孫期待していい?」
パンと勢いよく手を叩いて、柊木に似た期待に満ちた笑顔で俺の方に顔を近づけてくる。
「あ、ありがとうございます……えっと、えっと……えっとぉ?」
……えっと、一回整理しよう。
柊木のお母さんは、俺に柊木とえっちしたか、って聞いてるんだよね。
うんうん、俺と柊木がそう言う事……そう言う事……!!!
「そそそそんなことしてるわけないでしょうが!!! そそそそそんな事! してる! わけないです! そもそも亜理紗さんとは……ていうか、隣にいるんですよ、聞こえたらどうするんですか!!! あ、亜理紗に聞こえたらどうするんですか、こんな話してるところ!!!」
そもそも柊木とはまだ付き合ってないし!
そんな関係でもないんだから当然そんなこともしてるわけはなくて……て、ていうか今日はいきなりレベル高いですね、いつもはもっとマイルドなのに!
「大丈夫よ、この家あの人のおかげで昔から防音性能高いから! それに亜理紗に聞かれても大丈夫よ、亜理紗もきっと……こほん。本当にしてないの、日向君? エッチってSEXのことよ?」
「せせせ、せっく……そ、そんな具体的に言わないでいいです! そ、その柊木とはまだちゃんと付き合ってませんので、そう言う事は絶対に……」
「え~、そうなんだ残念! 亜理紗がずっと日向君の事話すし、日向君のおうち泊まりに行くし、それに……え~、まだエッチしないなんて信じられないなぁ! 関係進んでないとかは謙遜で、私てっきり二人は既にラブラブで……ってあれ? まだ? まだ、って言いましたか、日向君? まだ、ってことはそう言うご予定があるのですか? あるのですか、日向君!?」
「らぶらぶえっち……いやいや、そんなのないです! で、でも、その、それはその、えっと、あの、その……」
……この後告白しようとは思ってましたたけど!
なんか今言うのは違うって言うか、この流れでは嫌って言うか……ていうか今日のおばさんめんどくさいです、なんかいつもより怖いです! いつもより質問が鋭利でストレートで怖いです! 何かありましたか!?
「だってぇ、お義母さん結婚するもん! お義母さんも幸せになるから~、当然亜理紗にも日向君にも幸せになってほしいもん!」
「な、何ですかそれ……い、今の幸せは、おばさんに変な質問されないことです!」
「え~、何それ! 変な質問じゃないもん、将来への大事な質問だも~ん! 将来の、幸せへの大事な質問だよぉ?」
「……もう、わかりましたよ! そ、それじゃあ、俺と亜理紗さんは……」
「ふぅ、お待たせ……ってお母さん!? 何やってるのお母さん、ひな……さ、鮫島から離れてよ、イタズラしちゃダメ! 日向にイタズラダメだよ!」
もう覚悟を決めて言ってやろうかな、そう思った瞬間に柊木が戻ってくる。
な、ナイスタイミング……ナイスタイミング? わかんないけど、助かった!
「別にいいじゃない、亜理紗。日向君とちょっと話してただけだよ」
「ちょっとのテンションじゃないでしょ、絶対変な事してた! な、なんか日向の大声聞こえてきてたし! その、私を呼んで気持ちい……にゃーん! と、とにかく! な、何話してたの、鮫島もお母さんも!」
うにゃー、と頭を掻いて、その後キリッと目を絞って俺の方を睨んでくる……って聞こえてるじゃないですか、お母さん!
どうしよう、あんなえっちとかそう言う話……ご、誤魔化すしかない!
「いやいや、何でもないよ柊木! 虫がいたから叫んだだけだから! そ、それより柊木話あるんだよな! お母さんに話あるんだろ! それ言わないとだろ!」
「え、む、虫? だって、私の名前……え、本当に虫なの!?」
「う、うん! 虫だよ、虫!」
「む、虫……そ、それじゃあ、私の幻聴、日向が呼んでくれて……んにゃー! にゃー!!! にゃにゃにゃ、にゃー……にゃー、お母さん! ちょっとお話がありますにゃ!!!」
顔を真っ赤にしてあわあわ慌てていた亜理紗が、グルグル回った可愛いお目目のまま、ビシッとお母さんを指さす。良かった、取りあえず誤魔化せた……で、ここからが、今日の本番だな。
「ふふふっ、虫ねぇ⋯⋯ところで亜理紗お話って何かしら?」
「あ、その、えっと……すごく、真面目な話です。真面目で、今後の、その……大事な、話です」
「……そっか。大事な話か」
相変わらずホクホクニヤニヤした顔の柊木母の声に、隣の柊木の顔が一気にキュッと緊張したよに引き締まる。
大切な話だもんな、柊木にとって……それに俺にとっても。だから俺も同じように。
「あの、お母さん、えっと……私、鮫島の家に住みます! 鮫島と一緒に暮らします! 日向の家で鮫島の家族と一緒に暮らします! 過ごすんです、毎日を、一緒に、日向と! 日向と一緒に毎日朝起きて、夜寝るまでずっと日向と一緒に居るんです!!!」
「……ん~? ん~?」
顔を赤くして舌をクルクル回しながら、一世一代の告白のように声を張った柊木の言葉に、よくわからないといった感じで首を傾げる柊木のお母さん……ちょっと柊木説明不足かも、緊張しすぎかも!
「柊木、緊張しすぎ、説明不足。取りあえず深呼吸、深呼吸、ふーふー」
わちゃわちゃとなっていった柊木の背中をさすりながら一緒に大きく深呼吸。
緊張したときには深呼吸、これが一番大事。
「すーはー……う、え、う、うん、落ち着いたかも。えっとその……ちゃんと言えてなかったかな? 緊張してたけどでもちゃんと言えたような気がするけど……」
「うん、要点は完璧。でももうちょっと事の経緯とか詳しく説明しないとお母さんわかんないと思う。なんで俺の家に住みたいかとか、そう言うの」
雨降りの中転がり込んだ、みたいな話はいらないけど。
でもやっぱり理由を言わないと許してくれないというか、みんなと離れたくないからみたいな理由は絶対に必要って言うか。
「そ、それもそうだね……お母さん、よく聞いてね」
「うふふふっ、亜理紗? 良く聞くわ、亜里沙の事だもん。亜理紗の今後の事だもんね……やっぱりか、どうぞ。教えて、亜理紗の話。」
「私ね、学校で友達結構いるの。高校入るまで友達なんていなかったから信じられないかもしれないけど、でも鮫島以外にもたくさんいるんだ」
「ふふっ、わかってるわ。亜理紗学校行くの楽しそうだったし、日向君のこと以外にも、学校の事もいっぱい話してくれたし。亜理紗学校楽しいんだな、って、友達たくさんできたんだな、って。日向君の事、本当に……ふふっ、お母さん嬉しかったよ、亜理紗が楽しそうで」
そう言って笑う柊木のお母さんの笑みは聖母のようで。
さっきまでのイタズラな子供みたいな顔じゃなくて、母親の顔……子供の幸せを願って、嬉しく思う母親の顔。
「……うん、そうなんだ。本当にみんなと学校で話したり遊んだりするの楽しくて、本当にかけがえのない時間で……だからみんなと、日向と離れたくない。まだみんなと一緒に学校生活とか送りたい。だから引っ越ししたくない!」
「うん」
「お母さんが結婚するのは嬉しい、でも引っ越しなんてヤダ! みんなと、日向と一緒にいたいから!!! お願い、お母さん!!! 結婚しないで、とは言わない、結婚してほしい! あの人と、結婚してほしい! お母さんには幸せになってほしい、ずっと幸せでいて欲しい……でも、私も幸せになりたい。私も日向と一緒に過ごして、幸せになりたいから……だからお願い、お母さん。私は日向と一緒が良いです、日向のお家に、一緒に住みたいです。」
「ぼ、僕からもお願いします! 柊木は学校でもすごく楽しそうだし、それに僕とも仲いいですすから! 毎週のように遊んで、色々やって……俺も柊木と一緒にいたいんです! ちゃんとうちの両親には許可取ってます、だから、その……俺からもよろしくお願いします! この通りです、俺も亜理紗と離れたくないんです! 俺もずっと、柊木と一緒が良いんです、」
必死に言葉を紡いで頭を下げる柊木と一緒に俺も頭を下げる。
柊木と一緒にいたいし、それに……こんな事で離ればなれになるの俺もごめんだ!
大好きな亜理紗と、一緒に居たいもん、俺だってずっと一緒に居たいもん!
「……うふっ、二人とも頭上げて」
しばらくの沈黙の後、柊木のお母さんから聞いたことないような優しそうな声が聞こえたので、言われたとおりに柊木と一緒におそるおそると頭を上げる。
「ふふふっ、警戒しすぎ二人とも。なんでそんなに警戒してるの、二人とも」
「だって、その……まだ了承受けてないし」
「も~、亜理紗……ふふっ」
少し口をとがらせながらの柊木の声に嬉しそうに、お母さんは嬉しそうに笑う。
そしてどこか嬉しそうに話し始める。
「お母さんが拒否すると思う、亜理紗? お母さん嬉しいよ、亜理紗のわがままなんて久しぶりに聞いたから。好きにしていいんだよ、亜里沙の好きに。亜理紗の大好きを感じるままに、していいんだよ」
「お、おかぁさん⋯⋯え、そ、それって……」
「もちろん、OKよ。何となく、亜理紗がそう言う事は良そうできてたし。亜理紗がこの場所から、日向君から離れたくないこと何となくわかってたから。お母さんも何とかしてあげられないか考えてたんだよ。だからもし日向君の方さえよければ、亜理紗の事任せたい。亜理紗の将来、日向君に任せたい」
ニコッと笑って俺を見つめてくる……お、お母さん!
そんなのもう決まってます、一択です、返事は!
「も、もちろん、大丈夫です! お義母さん安心しててください、俺に亜理紗の事、任せてください! 亜理紗はちゃんと俺がずっと一緒にいます、亜理紗の事は絶対俺が俺が守ります! 亜理紗の事、絶対幸せにしますから!!!」
緊張して何を言っているかわからなったけど、でも何とか言い切って。
自分の思ってる気持ちを、お母さんに向かって言い切って。
「え、それ、私を幸せ……そ、それってその、あの、えっと……ひ、ひな、鮫、のむ、ひな、そそそそう言うのは、あの……」
「え、あ、えっと……なんか俺変なこと言ってました?」
「へへへ変な事というか、その、えっと……こんなの、だってぷろ……そそそそそそそうだよね! そ、それじゃあ同棲するって事で! あ、ありがと、お母さん! 日向との同棲、認めてくれてありがとう! そ、それじゃあ私、お買い物行ってくる! 日向に夜ご飯、作ってあげるから! 日向に、私の、夜ご飯……い、行ってきまぁす……はうぅ……」
頭からプシューと湯気を出した真っ赤な顔の柊木がよろよろとフラめくような足取りで買い物袋片手に歩き出す……だ、大丈夫かな、亜理紗!?
ちょ、俺が助けに行った方が……お、おっと!?
「大丈夫、亜理紗は大丈夫! 大丈夫だよ、日向君が心配しなくても……だからちょっとお話しよ? お義母さんと、続きのお話……」
一歩踏み出そうとした俺の手をお母さんがギュッと掴む。
え、お母さん……お、お話って何ですか?
☆
ねこを飼いませんか?
ただのねこでいいです、どんなねこちゃんでも可愛くて癒されるので
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