第24話 お弁当
お弁当を二つ持った亜理紗と会話しながら校内を歩くこと数分。
「おー、これは良い場所! 風通しも良いし、人もいないし! お弁当食べるにはピッタリの場所だね!」
校舎裏の謎の芝生の空間で隣の亜理紗が歓声を上げる。
まあ俺もこの場所が何の場所か知らないけど、でもすごくロケーションが良いからここでお昼ご飯にしましょうや!
「うん、そうしよそうしよ! という事ではい! これが今日のひー君のお昼ご飯です! 味わってお食べ!」
そう言って渡されるのはいつも通りの青い入れ物に入ったお弁当。
一言お礼を言ってそれを受け取り、お弁当箱を開ける。
「それじゃあいただきまーす……ってわお! なんだか今日のおかず、いつもより豪華な気がする! それに色合いもいいし美味しそう!」
定番のお弁当の具材はもちろんのこと、手作り感溢れるおかずたちがお弁当箱に所狭しとぎっしり詰まっていて……なんだか今日のお弁当はボリューミー!
「えへへ、そう言ってもらえると嬉しいな! 実はね、今日のお弁当は私が作ったんだ!」
「え、亜理紗が!? 亜理紗が俺の弁当作ってくれたの?」
「うん、ちょっとだけおばさんに手伝ってもらったけどでもほとんど私が作ったよ! ひー君に私が作ったお弁当も食べてほしかったから……だから亜理紗特製弁当、召し上がれ。ひー君のために作ったから!」
嬉しそうに手を叩きながらそう言って天使の笑顔を俺に向けてくれて……その顔可愛すぎじゃん、亜理紗のお弁当とか絶対最高じゃん!
亜理紗のお弁当食べれるとか、もう本当に俺は幸せです!
「もう、どうしたのひー君、そんな顔して」
「いやー、亜理紗のお弁当食べるの嬉しくて! なんというか、その……夢みたいだな、って。嬉しくて、つい顔が」
「何それ、夢みたいって……そんな喜んでくれて私も嬉しいな! それじゃあ二人でいただきますしよ!」
「うん、そうだね! それじゃあ手を合わせましょう!」
「合わせました!」
『いっせーのーで! いただきます!』
少し懐かしい儀式をして箸を握る。
う~ん、色とりどりのおかずがいっぱい入ってて何から食べるか迷いますな!
「ひー君、迷い箸はマナー違反だよ」
「だってどれも美味しそうで迷っちゃうもん! それに亜理紗のお弁当の記念すべき一口目だし何から食べようか……あ、そうだ! 亜理紗のおすすめ聞いていい?」
「記念とかないよ、これからいっぱい作ってあげるし……そうだね、おすすめ、おすすめ……あ、このしぐれ煮がおすすめ! 牛肉とゴボウがメインなんだけどすっごいうまく行っておばさんにも褒められたし!」
「おー、これは確かに美味しそう! それじゃあこれからいただきまーす!」
「はーい、召し上がれ!」
その声と同時にしぐれ煮を頬張る。
ホロホロの牛肉にゴボウのシャキシャキ感、それに味もしっかり染みてて……すごい美味しい! 最高!
「亜理紗美味しい! これ凄い美味しい……うん、このポテサラも魚も最高! ホント亜理紗お料理上手だよね、めちゃくちゃ美味しいよ……う~ん、このピーマンの肉詰めも美味しい!」
「えへへ、そんなに褒めてもらえると……えへへ」
「本当に最高だよ、亜理紗! それにご飯にも合うからご飯も止まらないし……んっ!?」
「えへへ、えへ、ひー君……って大丈夫!? どどど、どうし……取りあえずお茶! ひー君お茶飲んで、これ飲んで!」
「ん、ありがと……ぷはっ! ふー、助かったぁ……いやぁ、ごめんごめん。美味しすぎてついかきこんじゃった!」
美味しくて嬉しくて、手が止まらなくてついつい食べ過ぎて喉に詰まらせてしまった。
そんな俺の様子を亜理紗は心配そうに見つめていて……ごめんね、美味しかったから本当に美味しいから!
「もう、褒め過ぎだよひー君……でもあんまり急いで食べちゃダメだよ! お弁当は逃げないし、それに……心配なっちゃうし。ひー君が病気なったり怪我したりしたら大変だし、私も嫌だし」
「亜理紗……ごめんね、亜理紗。もうちょっとゆっくり食べるよ、亜理紗のお弁当ゆっくリ味わって食べる!」
「うん、味わって食べて! そっちの方が絶対もっと美味しく食べれるから……あ、そうだ! 私のお弁当とおばさんのお弁当だったらどっちが美味しい? 私のかおばさんのか、どっちの方がひー君のお口に合ってる?」
「うわぁ、難しい質問! そうだなぁ……」
亜理紗のお弁当もものすごく美味しいけど、でも母さんの弁当も慣れ親しんだ、って感じで好きだし。
う~ん、どうしようかなぁ……ふふふっ。
「う~ん、やっぱり母さんのお弁当も……」
「……にゃー」
「美味しいけど亜理紗のお弁当の方が美味しいよ! 亜理紗のお弁当すごく美味しいよ、俺の口にピッタリ合ってる!」
「……えへへ」
……こんなん選択肢ないじゃん、亜理紗可愛すぎじゃん!
最初の鳴き声も可愛かったけど、その後の笑顔! あの笑顔が本当にもう可愛くて、もう……最高、亜理紗最高、お弁当も最高!
「本当に亜理紗ありがとね、こんな美味しいお弁当作ってくれて! それじゃあ続きもいただきまーす!」
「えへへ、嬉しいな、そんなに言ってくれて……にへへ、味わってお食べ」
そう亜理紗に今日何度目かの天使のほほえみをいただいたので、天にも昇る気分で今度はゆっくりと箸を進める。
「う~ん、めちゃくちゃ美味しい! 特にこの鶏の照り焼き! これ本当に美味しいなぁ、俺好みの味に仕上がってるって言うか、最高に美味しいって言うか!」
「えへへ、そっかそっか……ね、ねえねえ、ひー君そんなに美味しい?」
「うん、そんなに! 最高だよ、本当に! もっと食べたいくらい!」
「そ、そっか! そそそそれじゃあ……あーん」
そう言って鶏の照り焼きを掴んだお箸を俺の方に近づけてきて……あ、亜理紗さん?
「あ、えっと、その……美味しい、って言ってくれたから。美味しいくて、もっと食べたいって言ってくれたから、だから……あ、あーん」
「い、いいの? て、ていうかあーん、なんてそんな……関せ……」
「は、恥ずかしいからそう言う事は言わないで! その、せっかくひー君のために作ったんだし、だからひー君が好きなものいっぱい食べて欲しいから、だからほら……お口あけてください、あーん」
フルフルと震える手つきで。
恥ずかしそうに、俺の方はまっすぐと見れないように顔を少し逸らしながら……緊張してるみたいだけど、でもそうしてくれるの嬉し恥ずかしやっぱり嬉しいな。
「……わかった! それじゃあお言葉に甘えて。あーん」
「う、うん。そ、それじゃあ……な、何か凄くこれえっ……あーん!」
少しやけくそ気味にそう言って俺の口に放り込む。
甘じょっぱくて濃厚な鶏の照り焼きの味と甘酸っぱい亜理紗の……ダメダメ! と、とにかくすごく美味しい、やっぱりこの味俺大好き!!! 少し味ワカンナイ気もしたけどでもやっぱり好き!
「そ、そう? よ、良かった! あはは、よ、良かったなぁ!」
胸を撫でおろしながら安心した様にホッと息をつく。
良かったよ、亜理紗……でも俺もちょっと。
「うん、凄く美味しい……そ、そうだ! 亜理紗にもしてあげるよ、今日のお礼! ほら、口開けて、あーん」
「にゃ、私に!? そ、それは大丈夫だよ、私には大丈夫! 大丈夫だから!」
「遠慮しないで。亜理紗にだけしてもらうのもずるいし、それに俺も亜理紗にしたいし。だからほら、あーん」
「いやいやいやいや大丈夫! 大丈夫だって、ひー君のためのお弁当なんだから、ひー君が食べて! だから私にそう言う事しなくていいよ……は、恥ずかしいし」
「俺も亜理紗に貰ったんだからお相子さんだよ! それに俺だってちょっと恥ずかしかったんだから! だからほら、あーんして?」
「ううっ、そうかもだけど、でも……ひー君にしてもらうの……にゃーん」
恥ずかしそうに、でもパカっと大きく口を開いてくれて。
赤く染まったほっぺとか、大きく開いた口に見えるキレイな口内とか歯並びよく並んだ真っ白な歯とか赤い唇とか……な、何というかその……す、すごくえっちで可愛いです!
は、歯医者さんってすげーな!
「ひ、ひー君、やるなら早く……そ、それにそんなに見ないで……恥ずかしいよ……」
「……え、あ、ご、ごめん! じゃあほら、い、入れるよ!」
「にゃ、にゃん、うん。ちょ、ちょうだい、ひー君の……にゃーん」
「は、はい! ほ、ほら、あーん」
「にゃ、あーん……もぐもぐ」
亜理紗の可愛いお口の中に俺も同じようにおかずを放り込む。
もぐもぐと小さい口が小動物みたいに動いて。
「お、お味はどうですか、亜理紗さん?」
「……味なんてわかんにゃい……けど、嬉しかった、かも……うにゃー」
真っ赤な顔で目線を逸らしながら小さい声でそう呟く。
……よ、喜んでもらえたなら良かった!
それなら俺も続きのお弁当食べようかな……うん、卵焼きも美味しい!!!
「……ひ、ひー君ほっぺにご飯粒ついてるよ」
「え、ホント?」
「ふふっ、そっちじゃないよ。取ってあげるからじっとしてて」
「え、ちょ……ふえ」
そう言った亜理紗が俺に顔と手を近づける。
そのまま指でほっぺのご飯粒を拭きとって。
「ふふっ、おっちょこちょいだね、ひー君も……ふふっ」
そして指に残った拭き取ったご飯粒を口に運んで妖艶に……!!!
「えへへ、ひー君のほっぺぷにぷに……ひー君?」
「いや、何でもない! 亜理紗のお弁当美味しいな、って!」
なにさっきの可愛すぎるよ、ちょっとえっちだよ!
もしかして無意識でやって……ああ、やっぱり亜理紗はすごいなぁ、大好き!!!
★★★
感想や☆やフォローなどしていただけると嬉しいです!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます